第212回国会(臨時会)
質問第一四〇号 財政法、財政民主主義等の財政原則に基づいた予算編成を求めることに関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和五年十二月十三日 牧山 ひろえ
参議院議長 尾辻 秀久 殿 財政法、財政民主主義等の財政原則に基づいた予算編成を求めることに関する質問主意書 一 巨額の基金の造成・積増しの是非について 岸田内閣は、単年度予算の弊害是正のためとして、基金への多額の予算措置を繰り返している。令和五年度補正予算においても、次世代半導体に関する基金に六千四百五十六億円や宇宙戦略基金に三千億円など、基金の造成・積増しに対して総額四・三兆円もの予算が計上されている。 基金は、一度造成されてしまうと監視の目が行き届きにくく、無駄な支出や非効率な執行を招くおそれがある。令和四年度末時点における基金残高は十六・六兆円に上っているほか、令和五年十一月に実施された行政事業レビューでは、各省庁が設置した百八十六基金のうち、三割を超える六十五基金について終了予定時期が設定されていないことなども明らかになった。 こうした基金の実態が明らかとなった以上、早急に基金の見直しを進め、令和五年度補正予算の財源とすべきであったと考える。しかし、河野大臣は「レビューでの指摘は令和六年度予算案で反映できるようにしたい」と述べるなど、政府の対応は後手に回っていると言わざるを得ない。なぜ令和五年度補正予算から基金の改革に取り組まなかったのか、政府の見解を伺う。 二 財政民主主義の趣旨に反する予備費の使途変更について 政府は、令和五年度当初予算で四兆円を計上した「新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費」について、令和五年度補正予算において、物価高対策に加え賃上げ促進の環境整備のための経費にも使用できるよう使途を変更し、名称も「原油価格・物価高騰対策及び賃上げ促進環境整備対応予備費」に変更することとしている。 しかし、予備費は憲法第八十七条第一項において、「予見し難い予算の不足に充てるため」として認められた、予算の事前議決原則の例外的制度であり、政府の都合に合わせ使途を変更する手法は、財政民主主義の趣旨を没却するものにほかならない。 そもそも、賃上げの促進は、中長期的に取り組むべき我が国経済の構造的問題であり、年度途中に予備費を充てて対応できるようにするのではなく、当初予算において具体的な施策の経費を計上すべきである。 また、令和四年度決算検査報告によれば、一部の事業で予備費使用相当額の全額を翌年度に繰り越していたことなどが報告されており、これまで以上に予備費の使われ方には厳しい目が向けられている。 予備費は緊急を要する経費以外には使用しないという本来の趣旨に立ち戻り、財政規律回復の道筋を示すべきだと考えるが、政府の見解を伺う。 三 緊要性に乏しい経費の補正予算への計上について 財政法第二十九条では、補正予算は予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出のために作成できると規定されている。しかし、令和五年度補正予算には、この要件を満たすか疑念が拭えない経費が数多く含まれている。 例えば、防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策に係る経費は、令和五年度補正予算で一兆五千百八十八億円が計上されている。こうした対策の必要性自体は私も否定しないが、この対策は、令和三年度から五年間という長期的計画に基づいて実施するものであり、予算作成後に生じた事由に基づくものではない以上、当初予算に経費を計上すべきことは明らかである。にもかかわらず、これまで当初予算における関連経費の計上はゼロであり、政府は毎年度補正予算によって事業を実施している。 コロナ禍が深刻化した令和二年度以降、十兆円を超える補正予算の編成が常態化しているが、政府は財政法の趣旨に今一度立ち帰り、真に緊要な対策に限定して補正予算を編成すべきと考える。この点につき政府の見解を伺う。 右質問する。 |