第212回国会(臨時会)
質問第一三七号 介護が家族に与える負担の影響に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和五年十二月十三日 牧山 ひろえ
参議院議長 尾辻 秀久 殿 介護が家族に与える負担の影響に関する質問主意書 一 家族等介護者支援について 経済的な負担を始め、介護にかかる様々な負担を抱えながらも、要介護者を日々懸命に支えているのが、家族介護者、ケアラーの皆様である。これまで、介護を行う家族に対する政府の支援は十分であったとは言えない。家族の介護を原因とする退職、転職、それに伴う収入の減少、健康状態の悪化、周囲からの孤立などの様々な要因で支援を必要としているケアラーがいる。非常に深刻なケースでは、ケアラーの自殺、老老介護の末の介護殺人などの報道もなされている。 厚労省は、令和三年度の介護報酬改定における訪問介護に係る引上げ措置、地域包括支援センターを中心とした取組等を進めてきたと承知している。しかし、例えばケアラーの自殺といった悲惨な事件が周囲からの孤立などを背景にして起こっていることを考えると、支援を必要とするケアラーを医療機関等につなげる仕組みを創設するなど、今までの受け身型の支援にとどまらず、一歩踏み込んだ検討が必要と考える。 1 厚労省は、来年度から始まる介護保険事業の基本指針案においても、自治体の支援対策等の方策を打ち出しているが、従来の取組にとどまらない、一歩踏み込んだ取組は行われるのか。 2 また、特に家族の介護に追われる「ヤングケアラー」について、すでに文部科学省も学校現場における相談体制の整備を進めているとのことだが、こうした学校における相談体制と、地域包括支援センターとの連携はどのように図られるのか。 二 ダブルケア対策について また、核家族化や晩婚化等を背景に、家族の介護を抱える一方で、育児にも追われるといういわゆる「ダブルケアラー」の方が増えている。 政府は平成二十八年にダブルケアの実態に関する調査結果を公表し、その中でダブルケアを行う方の人数を約二十五万人としている。この調査では、ダブルケアに直面することで「業務量や労働時間を変えなくて済んだ」と回答した方というのは、家族の支援が得られたという以外に、「病院・老人福祉施設等が利用できた」「育児サービスを利用できた」方が多いことが分かっている。つまり、制度の充実により、ダブルケアの負担を減らし得ることがうかがえる。しかし、育児と介護という二つの領域にまたがる問題を抱えるダブルケアラーの方が、そうした問題を一元的に相談できる場所はあるのか、明らかにされたい。 三 老老介護拡大の実態と対策について ケアラーへの支援を考えるに当たって、忘れてはならないのは老老介護の問題である。厚労省の昨年度の調査によれば、六十五歳以上の人を介護する人の六割超が同じ六十五歳以上の高齢者であったとされている。老老介護は、高齢者人口の増加によってこれからもっと当たり前になっていく。また、それぞれのご家族の立場になれば、最後まで自宅で共に暮らしたいとの思いを抱くことはもっともであり、老老介護に携わる家族介護者の支援体制を整えることは急務である。 現在、介護を必要とする高齢者だけでなく家族介護者を地域全体で支えていくという観点から、地域包括支援センターで家族介護者に対する総合相談支援を行うほか、家族介護者を対象とした介護知識や技術の研修、介護者同士の交流会を開催するなどの取組が各地で行われていると承知している。 一方、老老介護が深刻化した形として、認知症患者の介護を認知症である高齢の家族が行ういわゆる認認介護などの場合には、当事者がこうした自治体の支援につながることができないとの問題も指摘されている。そこで、支援を必要とする老老介護、認認介護について、行政側がその存在を把握し、支援につなげるため、どのような取組を行っているのか、明らかにされたい。 四 加重類型に応じた特別な支援について 上記のヤングケアラー、ダブルケア、老老介護、認認介護等は、ただでさえ重い家族介護者の介護負担がより加重された介護類型である。これらについては、今までの(通常の)介護サービスの延長線上のサービスにとどまらず、加重類型に対応した介護メニューの拡充や負担の軽減を検討する必要があると考えるが、政府の見解を伺う。 右質問する。 |