質問主意書

第212回国会(臨時会)

質問主意書

質問第一三〇号

従業員代表制の形骸化を抑止することに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年十二月十三日

牧山 ひろえ


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   従業員代表制の形骸化を抑止することに関する質問主意書

一 労働法制における過半数代表者の選出に係る運用状況及び指導・監督状況

 労働基準法では、使用者が三六(サブロク)協定などの労使協定を締結しようとする場合、事業場内に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合には「労働者の過半数を代表する者」(以下「過半数代表者」という。)との間で労使協定を結ぶこととされている。

 労使協定の締結に当たり、使用者との間で対等な交渉を行うためには、全ての事業場において労働組合が組織されていることが望ましいとは思うが、残念ながら近年は労働組合の組織率の低下が続いており、直近の「令和四年労働組合基礎調査」では、雇用者数全体の約十六・五%にまで低下している。特に、従業員数が百人未満の企業における組織率は、約〇・八%と著しく低い状況となっている。このような状況を踏まえれば、使用者との交渉当事者となる「過半数代表者」の役割は近年ますます重くなってきている。

1 従業員代表が締結の主体となる協議事項は、三六協定の他、裁量労働制導入、企業年金の条件変更、就業規則の作成・変更(意見聴取が必要)など百を超える。

 働き方改革においても、各種の協議事項への参画が規定されており、従業員代表の在り方は改革推進の要ともいうべき重要性を持つと考えるが、従業員代表の重要性に関する政府の認識を伺う。

2 従業員代表制が適正に機能しないと、高度プロフェッショナル制や裁量労働など過酷労働を招く懸念のある制度も社員が知らない間に導入される事態が増えかねない。

 従業員代表制の存在や機能、そして意義についての周知が重要であると考えるが、政府の認識を伺う。

二 一方、この「過半数代表者」の選出が適切に行われているかどうかについては疑問が残る。

 中小企業が集まる東京中小企業家同友会が平成三十一年四月に行ったアンケートでは、三百四十五社の五十・一%が「正しい選び方を知らない」と回答した。また、労働政策研究・研修機構の平成二十九年の調べでは少なくとも二十七・六%が、「会社による指名」など不正な手法で選んでいた。

 以上のような従業員代表制の形骸化を思わせる状況に関し、政府はどのような現状認識と問題意識をお持ちか。

三 この点に関し、私は二年前に提出した質問主意書(第二百七回国会質問第五〇号)において、過半数代表者の選出において民主的手続を担保する必要性や、過半数代表者による従業員の意思の反映状況等について、政府の見解をただした。

 しかし、政府の回答は「過半数代表者が適切に選出され、かつ、…協定等に関する事務を円滑に遂行できるよう、…労働基準関係法令の遵守について適切に指導を行うなど、必要な対応を行ってまいりたい」という通り一遍なものに終始しており、政府が労働現場の実情をどこまで把握できているのか不安を抱かざるを得ないものであった。

 この過半数代表者の選出については、働き方改革関連法案の審議の際に参議院厚生労働委員会で行われた附帯決議において、「使用者の意向による過半数代表者の選出が手続違反に当たることを省令に具体的に規定する」ことなどを求めており、その後の働き方改革関連法の施行にあわせて、労働基準法施行規則に「使用者の意向に基づき選出された者でないこと」などが明記された。

 このように、過半数代表者を適正に選出できる仕組みの整備や、過半数代表者の業務の円滑化は、国会からの要請でもあり、政府においては真摯に対応する必要があると考える。

 働き方改革関連法の施行後、過半数代表者をめぐる問題に政府がこれまでどのような対応を行ってきたのか示されたい。

  右質問する。