質問主意書

第212回国会(臨時会)

質問主意書

質問第一二九号

労働法保護の潜脱対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年十二月十三日

牧山 ひろえ


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   労働法保護の潜脱対策に関する質問主意書

一 いわゆる「名ばかり管理職」について

 労働基準法第四十一条では、「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者」(いわゆる管理監督者)に対しては、労働時間や休憩・休日に関する制限を適用しないこととしている。

 この管理監督者については、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」をいい、「店長」や「課長」という役職名を持つからといって、全員がこの規定の対象になるわけではない。

 厚生労働省では、その職務内容、責任と権限、勤務態様等の実態によって判断するとしており、たとえ企業内で管理職とされていても、労働基準法上の管理監督者に該当しない場合には、労働基準法で定める労働時間等の規制を受け、時間外割増賃金等の支払いが必要になると説明している。

 特に、チェーン店の店長が、実際は本社からの詳細な指示を受けて業務を行っており、管理監督者としての権限をほとんど持っていないにもかかわらず、適切な労働時間管理や超過勤務手当の支払いが行われていなかったという「名ばかり店長」の問題は、これまで多くの報道が行われ、問題視されている。

 また、働き方改革関連法の施行以降は、労働時間の上限規制の適用を逃れるため「名ばかり管理職」の増加を懸念する声があり、適切な運用には使用者側の十分な理解が必要と考える。

1 そこで、こうした「名ばかり管理職」の問題について、直近数年間に労働基準監督署がどの程度の件数の指導・勧告を行ったのか、状況を示されたい。

2 また、管理監督者であるか否かについては、肩書きではなく実態を見て判断するということだが、より具体的に、どのようなポイントに着目して管理監督者性が判断されることになるのか、明らかにされたい。

二 所謂「名ばかり個人事業主」について

 政府においては、令和三年三月に「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」を策定したものと承知している。

 このガイドラインの中では、「「雇用」に該当する場合の判断基準」という項目が設けられており、何らかの業務を受託している方が「労働者」に当たるかどうかの判断基準が示されている。

1 就業実態上、本来は「労働者」に当たり、本来であれば各種社会保険や労働保険に加入させなければならないにもかかわらず、「業務委託契約」といった名称で、保険料負担逃れをしているような悪質な事業者があれば徹底的な取締りが必要である。

 また、事業者からの指揮監督の下、同じ勤務時間・勤務場所での業務に従事する方など労働者性が認められる可能性のある方から、「自分は労働者ではないのか」等の問合せがあった場合には、労働基準監督署において契約内容や就業実態の確認を行うなど積極的に対応する必要もあると考える。

 これらの問題に対する政府の見解を伺う。

2 さらに、昨年十二月に全世代型社会保障構築会議が取りまとめた報告書においては、「現行の労働基準法上の「労働者」に該当する方々については、「被用者性」も認められる」とされており、「被用者保険の適用が確実なものとなるよう、必要な対応を早急に講ずるべきである」ことが示されている。

 フリーランスの方は、社会保険による保護が極めて脆弱であることから、労働基準監督署において労働者性があると認めた場合は、地方厚生局や年金事務所とも連携しながら、事業者に対して、労働保険や社会保険を早急に適用するよう厳しく指導していくべきと考えるが、政府の見解を伺う。

  右質問する。