質問主意書

第212回国会(臨時会)

質問主意書

質問第一二二号

裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年十二月十三日

川田 龍平


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律に関する質問主意書

 証券取引法を改正して、これまで金融商品ごとに別々の法律を定めていた販売・勧誘ルールを一本化して金融商品取引法(以下「金商法」という。)に統合し、行為規制として、①広告の規制、②契約前書面の交付義務、③断定的判断の提供の禁止、④適合性の原則などの行為規制を定めて、投資に伴うリスクの減弱を図るとともに、同時に制定された金融商品販売法では、金融商品取引法の対象外であった一般の預金・保険等を対象として、これを損害賠償の対象とすることを図った。

 その後、金融商品販売法は、金融サービスの提供に関する法律となり、それが、この度、政府が「貯蓄から投資へ」という方針を掲げることに合わせて、「金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律」(以下「金サ法」という。)に改称され、「金融経済教育推進機構」が金融リテラシーの向上のために、創設されることになったものの、あくまでも自己責任を基調とするものであるから、投資の拡大により、投資をめぐる紛争は増加することが懸念される。

 その場合、行為規制に合わせて紛争解決機関の存在が重要である。また、外資系の証券会社には、広くインターネットで金融商品と商品先物取引を同様の投資対象として呼び掛けている企業が存在する。ただし、商品先物取引に関しては、金商法、金サ法の適用対象外である。

 裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成十六年法律第百五十一号、以下「本法」という。)の第一条には、同法の目的として、「内外の社会経済情勢の変化に伴い、裁判外紛争解決手続(訴訟手続によらずに民事上の紛争の解決をしようとする紛争の当事者のため、公正な第三者が関与して、その解決を図る手続をいう。以下同じ。)が、第三者の専門的な知見を反映して紛争の実情に即した迅速な解決を図る手続として重要なものとなっていることに鑑み、裁判外紛争解決手続についての基本理念及び国等の責務を定めるとともに、民間紛争解決手続の業務に関し、認証の制度を設け、併せて時効の完成猶予等に係る特例を定めてその利便の向上を図ること等により、紛争の当事者がその解決を図るのにふさわしい手続を選択することを容易にし、もって国民の権利利益の適切な実現に資することを目的とする」と定めている。

 そこで、これらに関連し、金融商品及びこれと関連する商品先物取引に関する裁判外紛争解決制度の利用の実態について、質問する。

一 証券取引については、旧証券取引法では、証券取引についての紛争の解決を図るため、第七章に、財務大臣へ仲介を求める制度が設けられていたが、当該制度が平成十九年に廃止されるまでの過去五年間の活用の実態について、利用件数、仲介を求められた事件の内容、仲介による解決の件数及び解決に至るまでの期間を明らかにされたい。

二 金融商品取引法では、第五章の五、第百五十六条の三十八以下に指定紛争解決機関に関する規定があるが、上記証券取引法の財務大臣への仲介を求める制度と、どう違うのか。

 取り扱い対象案件の業種、内容、紛争解決機関の権限、運営などの差異はあるか。また、それはどのようなものか。

三 金融商品取引法に規定する金融商品には該当しない商品先物取引については、商品先物取引法に第五章第五節「紛争の解決」の第二百六十条には、紛争解決のためのあっせん・調停委員会を設置することが記載されているが、金融商品取引法の定める指定紛争解決制度とは、組織形態、紛争解決のためのあっせん・調停委員会の権限、運営などではどのように異なっているのか。

四 前記二及び三の制度利用について、過去五年間のそれぞれの利用件数(申し出件数、紛争の種別、申し出の紛争解決件数、終了までの調停回数)について示されたい。

五 金融庁、経産省に寄せられた金融商品などの販売や融資に関する苦情は、それぞれ各省のどの部署が担当しているのか。証券会社、金融機関、先物商品会社への各苦情の件数と苦情の主たる内容について、過去五年間の集計を示されたい。

六 金融庁、経産省に寄せられた苦情のうち、同庁、同省が、それぞれ指定紛争解決機関に紹介する件数は、一年間で何件になるか。過去五年間の件数を示されたい。

七 前記六で紹介した案件が、紛争解決に至ったかどうかについて、各指定紛争解決機関に紹介した案件が、紛争解決に至ったかどうかの結果について報告を受けるシステムになっているのか。

八 指定紛争解決機関に斡旋調整を申し立てた事例について、業態ごとに過去五年間の件数について明らかにされたい。

九 裁判外紛争解決制度において、外資系企業が金融商品と商品先物取引を区別せず、広く広告を行っている場合、これらを統合した裁判外紛争解決手続きが必要と考えるがどうか。また、諸外国の裁判外紛争解決制度についての調査は行ったのか。

  右質問する。