質問主意書

第212回国会(臨時会)

質問主意書

質問第一二〇号

北朝鮮向けラジオ放送「しおかぜ」使用送信機老朽化問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年十二月十三日

川田 龍平


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   北朝鮮向けラジオ放送「しおかぜ」使用送信機老朽化問題に関する質問主意書

 政府は、拉致問題を政権の最重要課題として掲げているが、拉致被害者の救出に向けた北朝鮮外交は事実上膠着状態にある。こうした中、北朝鮮向けラジオ放送「しおかぜ」は、拉致被害者と日本をつなぐ唯一の手段である。他方、NHK予算削減計画の中で、二〇二四年度以降、老朽化した百キロワット送信機二機が廃棄されることとなっており、その工事期間中の約十か月間、北朝鮮による妨害電波対策の二重放送が弱体化又は停止される。

 また、百キロワット送信機二機が廃棄され、三百キロワット送信に移行した場合の影響は甚大であり、NHKの放送スケジュールを変更しない限り、北朝鮮有事勃発時に開始(総務省、NHK、KDDIで合意)する緊急二十四時間放送が実施できなくなる。これにとどまらず、「しおかぜ」送信の予備機がなくなるため、通信障害が発生した際の代替送信は不可能となる。このほか、廃棄工事開始以降は、「しおかぜ」の放送時間編成も自由に行えない。

 以上のような状況を踏まえ、「しおかぜ」を始めとした北朝鮮向けラジオ放送について、質問する。

一 日本政府から北朝鮮にいる拉致被害者への情報伝達手段の一つとしてインターネットを用いることも考えられるが、情報統制社会である北朝鮮に対してはその有効性に疑義がある。また、ロシアによるウクライナ侵略に際して、真っ先にインターネット環境が遮断されたという例もある。このような情勢に鑑み、北朝鮮向け短波放送「しおかぜ」を含め、アナログによる短波送信は、我が国の安全保障環境においても、極めて重要で効果的な情報伝達手段であると思われるが、この点について政府の認識を示されたい。

二 松野拉致問題担当大臣は、「しおかぜ」に関して、二〇二三年十二月四日の参議院北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会において「送信機の廃棄に伴う移行工事期間中は一時的に一波での送信となると聞いています」と答弁し、廃棄工事による影響を認識していることを明示した。また「今後の「しおかぜ」の安定的な二波送信のため」とも答弁しているが、高齢化が進み、一秒でも早く救出の時を待つ拉致被害者に、そんな猶予は全くない事は明白であり、一波での送信が北朝鮮に妨害された場合、拉致被害者に情報が伝達できなくなるが、この懸念点を踏まえた政府の対応策を具体的に説明されたい。

三 同日、松野拉致問題担当大臣は「「しおかぜ」の送信機については、短波放送施設を所有、管理しているKDDI、「しおかぜ」の免許人であり設備を賃借している特定失踪者問題調査会、同様に設備を賃借しているNHKとの三者間での取決めに基づいて運用されており、現在、これら関係の三者間で設備移行に向けた協議が行われていると伺っています」と答弁した。しかしながら、調査会から送信機廃棄について、NHK会長に対して面会要請をしたが、現時点ではNHK側から何の回答も来ていないと聞いている。このような状況下で、政府は国家の最重要課題と公言しているにも関わらず、他人事であるかのように見受けられる答弁だが、百キロワット送信機の廃棄に係る協議について、政府はこれまでどのように関わり、今後どのような方針の下で臨もうと考えているのか。

四 現状の北朝鮮における通信インフラ環境や百キロワット送信機の廃棄に伴う様々な影響を踏まえても、短波送信の需要、優位性が非常に高いことは明白である。「しおかぜ」を通した拉致被害者への情報伝達を絶やさず、国民の意思である拉致被害者救出を北朝鮮当局に対して毅然と示すためにも、日本政府の予算で百キロワット送信機二機を新規更新することが当然であると考えるが、政府の見解を伺う。

  右質問する。