質問主意書

第212回国会(臨時会)

質問主意書

質問第九九号

ALPS処理水の海洋放出に伴う漁業への影響並びに北海道の赤潮被害対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年十二月十二日

紙 智子


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   ALPS処理水の海洋放出に伴う漁業への影響並びに北海道の赤潮被害対策に関する質問主意書

 東京電力は、漁業者との約束を反故にし、二〇二三年八月二十四日から福島第一原発の汚染水(いわゆるALPS処理水)の海洋放出を開始した。すでに三ヶ月が経過したが、漁業に大きな影響が出ている。

 中国へのホタテ貝の輸出は二ヶ月連続でゼロで、十月の水産物の輸出額は十四億円(前年比八十三・八%減少)と農林水産省が公表している。北海道をはじめホタテ貝やナマコなどは、中国に輸出されており、輸出の停止による在庫の滞留、産地価格の下落によって生産者や流通業者、地域経済への影響が出ている。

 親から漁業を継承した宮城県の青年は、「職業選択を間違えたかもしれない」と述べるなど将来への不安をつのらせている。ALPS処理水が原発からの排水と大きく違うのは、核燃料が溶け落ちたデブリに接触し、汚染された水という点である。市民団体や専門家からは汚染水の発生を防止する対策や提案が出されている。聞く力があるのなら、海洋放出を続けるのではなく、中止すべきである。

 また、二〇二一年九月に発生した北海道太平洋沿岸での赤潮被害から二年経過したが、資源を回復するための支援は引き続き必要となっている。

 よって、漁業、水産業の経営の安定化を図るため、以下質問する。

一 八月二十四日に海洋放出を開始して以降、放出したALSP処理水は何トンになるか。放出した期間と放出量、放出したタンクの数を明らかにされたい。

二 海洋放出は三十年以上、続くと見込まれる。今後、海洋放出が繰り返されることから、漁師人生そのものが放出のなかでの生活になる。漁師の夢や希望を奪うことにならないか、政府の見解を示されたい。

三 八月二十四日以降、岸田文雄内閣総理大臣、西村康稔経済産業大臣が、直接説明した漁業協働組合や経済団体等の団体名を明らかにされたい。

四 政府は九月に「水産業を守る政策パッケージ」(総額千七億円)を決定し、十一月には補正予算として「ALPS処理水関連の輸入規制強化を踏まえた水産業の特定国・地域依存を分散するための緊急支援事業」(八十九億円)を決定した。

1 「輸出先の転換対策」は輸出減が顕著な品目(ホタテ貝、ナマコ等)の一時買取・保管支援や海外も含めた新規の販路開拓を支援するものであるが、採択件数と予算の執行額を明らかにされたい。

2 「国内加工体制の強化対策」は、輸出先国のニーズに応じて、国内加工ができる体制整備を行うものであるが、「既存の加工場のフル活用に向けた人材活用等の支援」と「国内の加工能力強化に向けた、加工/流通業者が行う機器の導入等の支援」の採択件数と予算の執行額を明らかにされたい。

3 ホタテ貝の輸出の減少によって産地価格は低下し、ホッキ貝やツブ貝など、その他の水産物の価格にも影響を与えている。消費を拡大するため、ホタテ等を学校給食などで活用すべきと考えるが、利用状況、支援策を明らかにされたい。

4 政府が海洋放出を決めた以上、責任を持つのは当然だが、漁業、水産関係者からはスピード感が足りないとの意見が出ているが政府の見解を示されたい。

5 二〇一一年三月十一日の東日本大震災、福島第一原発事故以降、福島県では十二年間で、仲買人が半減し、買取能力が低下している。これを回復するための仲買人などの流通業者への対策を強化する必要があるが、支援策を明らかにされたい。

6 政府は、「一部の国・地域の措置を受け輸出に係る被害が生じた国内事業者には、東京電力が丁寧に賠償を実行」すると説明しているが、賠償方針、基準及び相談件数を明らかにされたい。

五 二〇二一年九月に北海道の道東の太平洋沿岸で毒性プランクトンによる赤潮漁業被害が発生した。被害総額及び赤潮発生メカニズムと継続的な海底環境の調査及び今後の発生予防対策を明らかにされたい。

  右質問する。