質問主意書

第212回国会(臨時会)

質問主意書

質問第九三号

国立公文書館所蔵の閣議決定文書・判決文の記載を踏まえた関東大震災時の朝鮮人虐殺に係る事実関係等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年十二月十二日

石垣 のりこ


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   国立公文書館所蔵の閣議決定文書・判決文の記載を踏まえた関東大震災時の朝鮮人虐殺に係る事実関係等に関する質問主意書

 関東大震災の発災後に発生した朝鮮人虐殺に関して、平成二十七年二月の神本美恵子参議院議員の「関東大震災時に起こった朝鮮人等虐殺事件に関する質問主意書」(第百八十九回国会質問第三四号)に対する答弁書(内閣参質一八九第三四号)(以下「平成二十七年答弁書」という。)において、政府は「政府内にこれらの事実関係を把握することができる記録が見当たらない」と答弁している。

 その後の質問主意書、国会質疑においても同様の質問に対して、この答弁を継承し続けている。しかしながら、国会の質疑の中で朝鮮人虐殺にかかわる資料がいくつも提示されている。私も令和五年十二月七日の内閣委員会において、国立公文書館や国立国会図書館が保有する朝鮮人虐殺について記載されている文書を提示して質問している。

 このような状況を考えると、平成二十七年の答弁時とは状況が変わり、事実関係を把握することのできる記録が見当たらないとは言えない事態になっていると考える。

 また、国会における審議にかかわる文書等は十年間の保存期間のある行政文書である。

 令和五年十二月七日の参議院内閣委員会の質疑において群馬県藤岡市で発生した朝鮮人が殺人や放火などの犯行をしているという風説を信じた民衆が警察署に保護されている朝鮮人を殺害した藤岡事件の判決文を提示して、そこに書かれている事実について確認したが、従来の答弁を繰り返すのみであった。

 風説を信じた民衆が朝鮮人を殺害したことを理由に有罪となっている判決文を見ても朝鮮人が殺害された事実を認めないことは歴史修正主義と言わざるを得ない。

 我が国が公文書を適切に管理、保存している文書主義を否定することにも繋がる非常に問題ある答弁である。

 以上踏まえて、以下質問する。

一 平成二十七年答弁書を作成する際には見当たらなかったと思われる資料がそれ以降の国会審議の中で提示され、政府にも配付されている。国会審議等で取得した文書は行政文書に当たると考えるが政府の見解を伺う。また、特に内閣官房、内閣府、警察庁など、十二月七日の私の質疑において答弁に対応した関係府省庁は、同質疑において委員会配付資料として取得した文書を行政文書として扱っているのか。

二 藤岡事件の判決文に有罪の根拠として記載されている事実については、同判決文を取得した経緯にかかわらず、記載内容及び事実関係に変わりはない。この事実を認定しない場合、原本以外の文書の写しに記載されていることは事実かどうか分からないということになってしまう。国の司法機関である裁判所が有罪の根拠として事実認定したことは内閣も事実として認めることが当然のことだと考えるが政府の見解を伺う。また、国立公文書館に保存されている同資料が原本と同一の内容ではない可能性があるのであれば、判決文の正確な内容を政府として調査する考えはないか。

三 平成二十七年答弁書を作成した時から現在までの間に風説を信じて朝鮮人を殺害する事件が発生していることを示す資料が示されていることを踏まえて、これまでの答弁を改めて、「関東大震災後、朝鮮人が殺人放火などの犯行を行っているという風説を信じ、自衛の意をもって朝鮮人を殺害した者が複数いた」と認めるべきだと考えるが政府の見解を伺う。

  右質問する。