質問主意書

第212回国会(臨時会)

質問主意書

質問第八一号

緊急時の救命措置における、いわゆる「善きサマリア人の法」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年十二月六日

浜田 聡


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   緊急時の救命措置における、いわゆる「善きサマリア人の法」に関する質問主意書

 国民が緊急時に救命措置が必要な現場に遭遇した際に、救急蘇生法を行う事は容体が急変した人の命を守るために非常に重要だとされ、特に迅速に始めることが大切であり、臆せず躊躇せず、わずかでも実施する事が肝要である。一九九四年三月に総務庁長官官房交通安全対策室が公表した「交通事故現場における市民による応急手当促進方策委員会報告書」(以下「総務庁報告書」という。)によると「一般人が行う救命手当は、一般的に社会的相当行為として違法性が阻却されると思われるが、一般人の救命手当に過失が認められる場合には、(中略)過失の有無は個々の具体的事例に応じて判断されるところ、救命手当実施者に要求される注意義務が尽くされていれば、過失犯は成立しない。(中略)なお、過失が認められても、事案によっては、諸般の情状が考慮され、起訴されないこともあり、その行為が救命手当として善意に出たものであったことは、有利な情状の一つとして考慮され得るであろう。」とされ、「救命手当が実施される殆どの場合は緊急事務管理と理解されるため、民事上免責される範囲はかなり広く、実施者がその結果について、万一様態が重篤化した場合であっても、法的責任を問われることはまずないと考えられる。」と記載されており、交通事故現場において救急蘇生法を行う者に対する法的責任についての見解が示されているものの、緊急で救命措置が必要な現場は交通事故に限らず、災害等様々な場面が想定される。他方、二〇一九年五月三十一日のNHKの報道によると「スポーツ大会で突然倒れた女性に、AEDが使われなかった理由について大会の主催者は「倒れていたのが女性で、駆けつけたのが男性だったから使われなかった」と説明した」とされ、AEDが使用されなかったことで当該女性は重い意識障害が残ったとされており、実際に救急蘇生法を躊躇い行えなかったことで救命手当が必要な人に障害が残る等という事例も起きている。これらを踏まえて、以下質問する。

一 交通事故現場における、一般人が行う救急蘇生法において、救急蘇生法を実施した人が法的責任を問われるかについて、現在においても総務庁報告書の記載を政府見解として良いか。

二 前記一に関連して、交通事故現場以外の緊急時における、一般人が行う救急蘇生法において、救急蘇生法を実施した人が法的責任を問われるかについて政府見解を示されたい。

 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。

  右質問する。