第212回国会(臨時会)
質問第六五号 我が国の排他的経済水域への中国による浮遊式障害物の設置に関する再質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和五年十一月二十四日 神谷 宗幣
参議院議長 尾辻 秀久 殿 我が国の排他的経済水域への中国による浮遊式障害物の設置に関する再質問主意書 我が国の排他的経済水域への中国による浮遊式障害物の設置に関する質問主意書(第二百十二回国会質問第一号)に対して、答弁書(内閣参質二一二第一号)が送付された。本件に関連して再質問する。 我が国の排他的経済水域への中国による浮遊式障害物の設置に関し、十一月一日の参議院予算委員会において、上川陽子外務大臣は、中国が我が国の排他的経済水域に設置した浮遊式障害物(審議においては「当該ブイ」と言っている)に関する質問に対し、「中国による当該ブイの設置は、一方的な現状変更の試みであり、全く受入れられず、日本側から中国側へ抗議をするとともに、ブイの即時撤去を改めて強く求めた」旨答弁し、続いて「当該ブイの撤去等については、国連の海洋法条約には明文の規定がない。個別具体的な状況に応じて検討することが必要であるため、撤去の可否については一概に答えることは困難である」旨の答弁を行った。 現状としては、政府は、中国に対し即時撤去を求めているものの、国連海洋法条約に明文の規定がないという点から、より積極的な措置を取ることを避けているように見受けられる。その結果、現在まで、浮遊式障害物の撤去は行われていない。 さらに、同月十六日に日中首脳会談が実施されたが、ここでも、岸田文雄内閣総理大臣は、中国の習近平国家主席に即時撤去を要求するに留まったとのことである。 一方、報道によれば、政府関係者からの情報として、中国が我が国の排他的経済水域に設置した浮遊式障害物は海底に重りを下ろして固定しているとみられ、当該浮遊式障害物で収集したデータを人工衛星で送信しているという。これは、海の荒れ具合などを調べ、海警船を派遣するために役立てていると見られている。ネット上で見られる写真によれば、当該浮遊式障害物にはアンテナなどの送信機材等が複雑に装着されており、日本や外国の潜水艦の動きを探っている可能性が指摘されている。以前には、中国が設置した後に漂流した浮遊式障害物を海上保安庁が回収し、装置を詳しく調べた後、中国側に引き渡したとの報道もある。 このような中国による浮遊式障害物の設置は、単なる海洋調査を超えた行動と見ることができ、特にその技術的な側面は、我が国の防衛や安全に直接的な影響を及ぼす可能性がある。政府は、浮遊式障害物を設置国任せで放置するのではなく、より積極的かつ具体的な対策を講じるべきと言える。 他方、林芳正前外務大臣は、同月十九日のフジテレビ番組で、「日本側が撤去することも含めて検討したらよい」旨の発言をし、中国側に通知せず、日本側の判断で撤去する措置についても、国際法で明記されていないことから、そのような姿勢で臨むことが大切だとしており、上川外務大臣とは異なる認識を示した。 以上を踏まえて、以下質問する。 一 これまで中国が我が国の排他的経済水域に設置した浮遊式障害物はいかなる機能を備えていると判断しているか。過去の事例を含めて明らかにされたい。 二 浮遊式障害物の「撤去等について、海洋法条約に明文の規定はない」のであれば、少なくとも沿岸国による撤去は禁じられていないと考えてよいか。また、同様の事例について、諸外国ではどのような処置が採られてきたのか、具体的に示されたい。 三 中国が我が国の排他的経済水域に浮遊式障害物を設置することは、上川外務大臣によると「中国による一方的な現状変更の試み」とされており、しかも現在までに繰返し設置され、重ねて抗議と撤去要請を行っているにもかかわらず、未だに撤去されていない。「個別具体的な状況に応じて検討をする」というが、どのような場合に我が国自らが撤去することになるのか。または、撤去しないまま経過するなら、当該浮遊式障害物は相手国が撤去しない限り、ずっと存続することになるのではないか。政府の認識を示されたい。 右質問する。 |