質問主意書

第212回国会(臨時会)

質問主意書

質問第四五号

福島第一原子力発電所の多核種除去設備(ALPS)で作業員が洗浄廃液を浴びた事故現場の仮設ホース、仮設タンクに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年十一月十三日

石垣 のりこ


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   福島第一原子力発電所の多核種除去設備(ALPS)で作業員が洗浄廃液を浴びた事故現場の仮設ホース、仮設タンクに関する質問主意書

 令和五年十月二十五日、福島第一原子力発電所の放射性物質を除去する多核種除去設備(ALPS)の配管を洗浄する作業中に作業員が飛散した洗浄廃液を浴びて入院した事故が発生した。

 今回の事故の発生原因について東京電力は、増設ALPSのフィルタ出口配管に溜まる「炭酸塩」を有毒な洗浄薬液「硝酸」で洗浄した際に発生する「洗浄廃液」をタンクへ送る仮設ホースが、炭酸塩と硝酸の化学反応により発生したガスの勢いで外れ洗浄廃液が飛散したことだと説明している。

 現場の写真を確認したところ簡易なホースを使って簡易なタンクに送るようになっているが、ホースが洗浄廃液を送る水圧等で動き回らないよう途中で固縛する必要があり、硝酸という有害な物質を扱うには余りに簡易過ぎる設備であると見受けられる。

 年に三回限りの点検作業であるとしても硝酸のような劇物を使用する上に放射性物質除去前の水を取り扱う設備が仮設のままであるのは安全管理上問題であると考える。

 今回の事故を受け、東京電力が打ち出した対策も飛散させない対策として「勢いよくガスが排出された場合でもホースが飛び出さない適切な固縛位置を計画する。」「工事監理員および工事担当者は、計画通りの固縛位置になっていることを作業開始前に確認することとする。」、汚染させない対策として「作業に適した装備の徹底を図る。水を扱わない作業者であっても、水の飛散により汚染する恐れがある場合は、アノラックを着用する。」というものであり、仮設のまま作業を行うことを前提としたものになっている。

 劇物である硝酸を扱うような作業では、硝酸に直接触れない、漏れない設備設計がまずは必要で、アノラックを着るのは最後の策でしかない。

 東京電力は事故の原因を作業員がアノラックを着用していなかったことに矮小化しようとしているように思えるが、そもそもは仮設設備で危険な硝酸を用いて、放射性物質を含むスラリーという危険なものを取り除く作業を行っていることが最大の問題である。

 今後三十年間、ALPS処理水の海洋放出を継続する限り当該作業が必要になるが、三十年先までずっと仮設設備のままで作業を継続するのではなく、洗浄廃液が飛散することのない設計の仮設ではない設備を設置するべきだと考える。

 以上踏まえて、以下質問する。

一 今回の事故は増設ALPSで発生したものであるが、福島第一原子力発電所の敷地内に設置された設備において仮設の設備で作業が行われている箇所があるのか伺う。ある場合、当該設備の名称、設置場所、設置期間及び機能、役割について示されたい。

二 原子力規制委員会の山中伸介委員長は令和五年十一月一日の記者会見において、今回の事故は「東京電力の実施計画違反であるというふうに認識しております。」と述べている。違反であるとされる実施計画の項目について示されたい。

三 硝酸を取り扱う作業に従事する場合は労働安全衛生法上、保護具の着用が必須である。今回の事故は労働安全衛生法違反の疑いもあると考えるが、政府の見解を伺う。

四 今後、安全に作業を行う為には仮設ホース、仮設タンクではなく常設設備を設けるべきと考えるが、政府の見解を伺う。

五 上記、常設設備が完成するまでALPSの稼働を停止すべきだと考えるが見解を伺う。

  右質問する。