質問主意書

第212回国会(臨時会)

質問主意書

質問第一三号

電動キックボードの歩道通行・安全教育に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年十月二十日

石垣 のりこ


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   電動キックボードの歩道通行・安全教育に関する質問主意書

 令和五年七月一日より改正道路交通法(令和四年法律第三十二号)の一部の規定が施行され、最高速度が時速二十キロメートル以下に制御されており、車体が長さ百九十センチメートル以下、幅六十センチメートル以下であるなどの条件を満たす電動キックボード等を特定小型原動機付自転車、その中で歩道等を通行する間、最高速度表示灯を点滅させていること、最高速度表示灯を点滅させている間は、時速六キロメートルを超える速度を出すことができないものであること等の条件を満たすものを特例特定小型原動機付自転車と区分けがされ、道路標識等により歩道を通行できることとされている歩道において特例特定小型原動機付自転車の歩道通行が解禁された。

 この改正によって電動キックボードのシェアリングサービスが普及し、町中で電動キックボードが走行することを頻繁に目にするようになってきている。

 その一方で、警察庁によると、電動キックボードに関連した交通違反・事故の発生状況については、七月の一箇月間で七件の事故があり、七人が軽傷を負ったほか、交通違反の検挙数が四百六件に上っており、最も多かったのが信号無視で、全体のおよそ半数を占めていたとされる。

 「多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会」(以下「有識者検討会」という。)において電動キックボードを運転したことがない者を対象として走行実験を実施しており、運転免許を受けている者とそうでない者との比較を行ったところ、多くの違反では、免許の有無によって大きな差が見られなかったものの、指定場所不停止や信号無視で、差が大きく開いた。

 指定場所不停止や信号無視は、自転車の法令違反による事故の原因としても多く見られる項目であるが、七月一箇月間の交通違反の半数が信号無視であったことを考えると、有識者検討会において指摘されていた免許不要とすることへの不安が的中した結果だと言わざるを得ない。

 また、有識者検討会では歩道通行について慎重な意見が多かったにもかかわらず、その意見は考慮されず、特例特定小型原動機付自転車という類型を作ることにより、一定の場合において時速六キロメートル以下なら歩道も通行できるように改正がなされた。

 有識者検討会において安全教育に対する不安も指摘されていたが、実際にシェアリングサービスを利用してみると十分な安全教育がなされているとは言えない状況にある。特定小型原動機付自転車のシェアリング事業者は交通ルールの理解度を測るテスト(以下「交通ルールテスト」という。)に全問・連続で合格することを利用者に義務付けていると言うが、ネット上でのテストでは回答を調べて答えることも可能であり、実効性のあるものにはなっていないと考える。

 右を踏まえて、以下質問する。

一 改正道路交通法が施行された令和五年七月一日以降三箇月間における電動キックボードに関する事故件数、そのうち車道、歩道別の事故件数、違反類型別の検挙件数を示されたい。

二 令和五年七月一日以降、特定小型原動機付自転車運転者講習の開催数及び参加者数を示されたい。

三 前記一及び二に関連して、改正道路交通法施行から三箇月経過した時点における政府の現状認識を伺いたい。

四 シェアリング事業者が行っている交通ルールテスト等を始めとする利用者に対する交通ルール等の周知が安全教育として機能していると考えているか、所見を伺いたい。

五 交通違反や事故の件数を鑑みると、特例特定小型原動機付自転車の歩道通行を可能にする規定を設けることや特定小型原動機付自転車に係る運転免許を不要とすることは拙速であったと考えられる。今後の交通違反や事故の件数の動向を見て、一旦、歩道通行や免許不要とすることを停止することも検討すべきだと考えるが、所見を伺いたい。

  右質問する。