質問主意書

第211回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一一第一四五号
  令和五年七月四日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員小西洋之君提出岸田内閣による議会制民主主義の否定に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小西洋之君提出岸田内閣による議会制民主主義の否定に関する質問に対する答弁書

一について

 内閣法(昭和二十二年法律第五号)第一条は、先の答弁書(令和四年八月十五日内閣参質二〇九第二四号)二についてで述べたとおり、内閣の職権及び国会に対する内閣の責任について定めることを趣旨としており、同条は内閣法の一部を改正する法律(平成十一年法律第八十八号)により、中央省庁等改革の一環として、内閣が国民主権の理念にのっとりその職権を行うべき旨を明らかにするため、同条第一項に「国民主権の理念にのつとり」との文言が追加されるとともに、同条第二項において、内閣が行政権の行使について連帯して責任を負うのは、「全国民を代表する議員からなる国会」であると明記されたものと承知している。その上で、御指摘の同条における「国民主権の理念にのつとり、・・・職権を行う」等の趣旨は、政府としても御指摘のとおりであると認識している。

二について

 お尋ねの意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の施政方針演説における「政治」及び「決断」の趣旨については、当該演説において、岸田内閣総理大臣が「政治とは、慎重な議論と検討を積み重ね、その上に決断をし、その決断について、国会の場に集まった国民の代表が議論をし、最終的に実行に移す、そうした営みです」と述べた上で、「私は、多くの皆様の御協力の下、様々な議論を通じて、慎重の上にも慎重を期して検討をし、それに基づいて決断した政府の方針や、決断を形にした予算案・法律案について、この国会の場において、国民の前で正々堂々議論をし、実行に移してまいります」と述べたとおりである。

三から六までについて

 お尋ねの意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、内閣の重要政策に関する基本的な方針を閣議にかけて決定すること及び内閣提出の法律案、予算その他の議案を国会に提出することを含め、内閣が職務を行うに当たっては、憲法及び内閣法等の法令の規定に従っているところであり、また、先の答弁書(平成二十六年十一月二十八日内閣参質一八七第一〇五号)一についてで述べたとおり、国会での審議の場における国会議員による内閣に対する質問は、憲法が採用している議院内閣制の下での国会による内閣監督の機能の表れであると考えており、国会における審議の在り方については、国会において御判断いただく事柄であると考えているが、政府としては、引き続き国会に対し誠実に対応してまいりたい。

七について

 お尋ねの意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の施政方針演説における発言については、令和五年一月二十六日の参議院本会議において、岸田内閣総理大臣が「施政方針演説の中でも申し上げたとおり、多くの皆様の御協力の下、様々な議論を通じて、慎重の上にも慎重を期して検討をし、それに基づいて決断をした政府の方針や決断を形にした予算案、法律案について、この国会の場において、国民の前で正々堂々議論することは大変重要なことであると考えており、国会での議論をないがしろにするつもりは毛頭ありません。言うまでもなく、こうした考えは、内閣は行政権の行使について全国民を代表する議員から成る国会に対して連帯して責任を負う旨の憲法や内閣法の規定の趣旨に沿ったものであると考えております」と述べたとおりであり、また、「国家安全保障戦略」(令和四年十二月十六日閣議決定)、「国家防衛戦略」(令和四年十二月十六日閣議決定)及び「防衛力整備計画」(令和四年十二月十六日閣議決定)については、令和五年四月七日の参議院本会議において、同内閣総理大臣が「議院内閣制の下では政権与党が国政を預かっており、三文書については、政府・与党において、一年以上にわたるプロセスを経て方針を決定いたしました。この決定は、行政府としての安全保障に関する政策意図を表明するためのものであり、行政権に属する行為です」と述べたとおりであって、御指摘の施政方針演説等における「見解」が「憲法の定める国民主権及び議院内閣制の趣旨に反し、その具体化である内閣法第一条に反する見解であ」るとの御指摘は当たらないと考えており、「岸田総理は民主制を理解する能力も無い歴史的ないわば暗君である」の意味するところが明らかではないが、いずれにせよ、「発言を撤回」することは考えていない。

八について

 反撃能力については、「国家安全保障戦略」及び「国家防衛戦略」(以下「戦略文書」という。)において、「千九百五十六年二月二十九日に政府見解として、憲法上、「誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能である」としたものの、これまで政策判断として保有することとしてこなかった能力に当たるものである」としているところであり、反撃能力の保有は、憲法第九条の解釈を変更したものではなく、我が国を取り巻く安全保障環境の変化等を踏まえた政策判断として戦略文書において決定したものである。

九について

 御指摘の「防衛力整備計画に係る当該計画期間の事業費の総額約四十三・五兆円の内容」については、「防衛力整備計画」の「自衛隊の能力等に関する主要事業」等について、それぞれ整備の方向性や、主な事業の所要経費等を示した説明資料を防衛省のホームページで公表するとともに、国会における審議等を通じて、当該経費等の更に詳細な内訳について説明を行ってきたところである。加えて、同計画の初年度に当たる令和五年度予算については、防衛関係費(契約ベース)約九・〇兆円の積み上げの内容及びその経費の詳細を同省のホームページで公表しており、「計百四十六の事業名とそれぞれの数千億円から数兆円規模の予算の数字しか国会に提出していない」との御指摘は当たらない。

 その上で、同計画の 所要経費は、令和六年度以降の予算についても、令和五年度予算と同様、国会審議を経て決定されることを前提としており、国防組織たる自衛隊の予算等については、国会の民主的コントロールの下に置かれていることから、御指摘の「財政民主主義」及び文民統制は確保されているものと考えている。

十について

 お尋ねの「国民主権及び議院内閣制の趣旨に反する」の意味するところが必ずしも明らかではないが、反撃能力の保有や防衛力整備の内容等について記載した戦略文書及び「防衛力整備計画」については、令和五年四月七日の参議院本会議において、岸田内閣総理大臣が「議院内閣制の下では政権与党が国政を預かっており、三文書については、政府・与党において、一年以上にわたるプロセスを経て方針を決定いたしました。この決定は、行政府としての安全保障に関する政策意図を表明するためのものであり、行政権に属する行為ですが、その過程でも、国会での質疑にお答えする形で随時説明を行ってきました。(中略)国会の場で様々な御指摘をいただいて議論することは、国民の皆様に課題を理解していただく上でも重要であると認識をしています。国民の皆さんの御理解を得るべく、努力をしてまいる所存であります」と述べたとおりである。