質問主意書

第211回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一一第一四三号
  令和五年七月四日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員牧山ひろえ君提出被収容者の処遇改善に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員牧山ひろえ君提出被収容者の処遇改善に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねについては、出入国在留管理庁が令和三年八月十日に取りまとめた「令和三年三月六日の名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案に関する調査報告書」において、「名古屋局では、被収容者から診療の申出があった場合でも、事前に看守勤務者や看護師等が診療の必要性を判断して言わば事前のスクリーニングが行われており、そこで診療の必要があると判断されなければ、診療申出書が作成されず、局幹部への報告や決裁が行われない運用となっていた。このように、名古屋局では、局幹部による診療申出事実の把握や医師の診療の必要性等の判断が行われていなかった」、「A氏が消化器内科や整形外科を受診したものの器質的な疾患が認められなかったことや、A氏が繰り返しバイタルチェックを求めるようになったものの、その結果として、特に異常な数値が検出されないことが少なくなかったことなどから、看守勤務者の多くは、A氏による体調不良の訴えについて、仮放免許可に向けたアピールとして実際よりも誇張して主張しているのではないかと疑っていた。また、二月十九日には、三月四日にA氏を外部病院の精神科で受診させることが決まっており、A氏本人には受診実施直前に伝達する予定となっていた。そのため、看守勤務者は、既にA氏からの申出を受けた結果として、外部病院の精神科での受診が決定され、対応済みであると認識していた」などと記載しているとおりである。

二について

 出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律(令和五年法律第五十六号)による改正後の出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「改正後入管法」という。)第五章の二においては、改正後入管法第二条第十六号に規定する入国者収容所等に収容されている者(以下「被収容者」という。)の処遇を一層適正化するため、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(平成十七年法律第五十号)も参考にしつつ、被収容者の権利、義務に関わるものなど法律で定めることが適切と考えられる事項を新たに規定したところであり、「入管収容施設における被収容者の処遇が改善するとは考えられない」との御指摘は当たらない。

三について

 改正後入管法は、改正後入管法第五十五条の三十七において、入国者収容所等においては、被収容者の心身の状況を把握することに努め、被収容者の健康等を保持するため、社会一般の医療等の水準に照らし適切な医療上の措置等を講ずるものと規定した上で、改正後入管法第五十五条の四十二において、負傷し又は疾病にかかっているとき等、法律の定める場合には、速やかに、医師等による診療を行い、その他必要な医療上の措置をとるものとしており、そのような場合に入国者収容所長等に医療上の措置をとるか否かに裁量はなく、改正後入管法を適切に運用することは、御指摘の「ウィシュマさんのような事案」の再発防止に資することから、出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案を第二百十一回国会に提出したものである。

四について

 お尋ねの「今回の事実関係」の意味するところが必ずしも明らかではないが、入国者収容所等視察委員会は、入国者収容所等の運営に関し、入国者収容所長等に対して意見を述べるものであるところ、出入国管理及び難民認定法第六十一条の七の二から第六十一条の七の六までの規定に基づき、現行制度においても、独立した立場で運営されており、その役割を適切に果たしていると認識している。