質問主意書

第211回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一一第一二六号
  令和五年六月三十日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員神谷宗幣君提出若年層に広がる「オーバードーズ」の対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員神谷宗幣君提出若年層に広がる「オーバードーズ」の対策に関する質問に対する答弁書

一及び四について

 お尋ねの「若者の市販薬や向精神薬の過剰摂取の問題について、何が要因であると分析しているか」については、「市販薬」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、一般用医薬品(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第四条第五項第四号に規定する一般用医薬品をいう。以下同じ。)の乱用については、令和元年度厚生労働行政推進調査事業費補助金による「一般用医薬品の適正使用の一層の推進に向けた依存性の実態把握と適切な販売のための研究」の報告書において、「「友人・知人の勧め」が乱用開始の契機となっていることが複数の症例で報告されている」と示されていると承知している。一方、向精神薬については、令和三年度厚生労働行政推進調査事業費補助金による「薬物乱用・依存状況の実態把握と薬物依存症者の社会復帰に向けた支援に関する研究」の報告書において、当該研究における分析対象者三千四百七十六名のうち、過去一年間に乱用目的で精神安定薬又は睡眠薬を使用した割合は、それぞれ〇・四三パーセント及び〇・〇九パーセントであったと示されているが、その要因については、当該研究において調査が行われておらず、政府として把握していない。

 また、御指摘の「規制されていない医薬品においてもオーバードーズするケースが増加していること、そのような医薬品の乱用は発見されにくいこと」については、令和二年度厚生労働行政推進調査事業費補助金による「薬物乱用・依存状況の実態把握と薬物依存症者の社会復帰に向けた支援に関する研究」の報告書において、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(昭和三十六年厚生省令第一号)第十五条の二に規定する濫用等のおそれのある医薬品(以下「濫用等のおそれのある医薬品」という。)の指定の有無によらず、精神科で薬物依存症の治療を受けた患者における一般用医薬品を原因とする薬物依存の割合が増加していることが示されていると承知しており、当該研究等を踏まえ、一般用医薬品の適正な販売のための方策について、医薬品の販売制度に関する検討会(以下「検討会」という。)において議論が行われているところ、政府としては、一般用医薬品や向精神薬を含む薬物の乱用防止に関する啓発に努めるとともに、検討会の議論等を踏まえ、医薬品の適正使用を推進するための取組を行ってまいりたい。また、御指摘の「規制がされている医薬品でも、薬局・店舗販売業において販売ルールが徹底されていない場合」については、厚生労働省において、濫用等のおそれのある医薬品の販売の実態について、「医薬品販売制度実態把握調査」により把握に努めており、当該調査の結果を踏まえ、各地方公共団体、関係団体等と連携し、濫用等のおそれのある医薬品が適正に販売されるよう薬局及び店舗販売業者に対して法令遵守の徹底を求めているところであり、引き続き、薬局及び店舗販売業者において法令遵守の徹底が図られるよう必要な取組を進めてまいりたい。

二について

 政府としては、御指摘の「フィルタリングサービス」の利用については、申込みの一層の促進や継続利用のための取組等が必要であると分析しており、インターネット上の最新のトラブル等の事例に関する予防方法等をまとめた「インターネットトラブル事例集」により必要な周知・啓発を実施することや、事業者に対して「フィルタリングサービス」の使いやすさの向上や分かりやすい形での情報提供を促すこと等の対策を講じている。

三について

 小学校、中学校及び高等学校においては、学習指導要領に基づき、全ての児童生徒に対し、体育科や保健体育科等において、薬物乱用防止に関する指導を行うこととしていることに加え、御指摘の「問題となっている市販薬や向精神薬の過剰摂取」に関しては、文部科学省において、医薬品の乱用について記載した「喫煙、飲酒、薬物乱用防止に関する指導参考資料―令和元年度改訂―(小学校編)」(令和二年三月公益財団法人日本学校保健会作成)、「喫煙、飲酒、薬物乱用防止に関する指導参考資料―令和二年度改訂―(中学校編)」(令和三年三月公益財団法人日本学校保健会作成)及び「喫煙、飲酒、薬物乱用防止に関する指導参考資料―令和三年度改訂―(高等学校編)」(令和四年三月公益財団法人日本学校保健会作成)を、都道府県及び指定都市の教育委員会の指導主事等を対象とした会議において周知しているところである。政府としては、今後とも、医薬品の適正使用の重要性も含め、児童生徒に対する薬物乱用防止に関する指導の充実に努めてまいりたい。