質問主意書

第211回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一一第一二一号
  令和五年六月三十日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員紙智子君提出酪農・畜産の危機の打開に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員紙智子君提出酪農・畜産の危機の打開に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の「歴史的な酪農経営の危機」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、現在の飼料の価格高騰、生乳の需給緩和等により例年と比較して離農をする農家が多い状況を踏まえ、配合飼料の価格高騰に関する対策等の実施により酪農経営の安定を図るとともに、生産コストの上昇を乳価に適切に反映できるような環境を整備するため、牛乳及び乳製品の消費の増進に関する対策等を実施しているところである。その上で、令和四年及び令和五年に行われた生乳の生産者団体と乳業メーカーとの交渉において、生乳の取引価格の引上げが決定されており、また、令和四年に大きく下落した、乳用牛が出産した子牛の取引価格が、その後上昇傾向にあるなど、酪農経営をめぐる状況には改善傾向が見られていると認識している。

二の1について

 お尋ねの「粗飼料、濃厚飼料の作付け面積が増えない理由」としては、例えば、飼料作物の生産に適した作付地やその増産のために必要となる労働力を確保することが困難な畜産農家が多いことが考えられ、こうしたことから、粗飼料の生産量が大きく増加していないことが、お尋ねの「粗飼料」の「利用が拡大しない理由」であると考えられる。また、お尋ねの「濃厚飼料」の「利用が拡大しない理由」としては、先に述べた「「粗飼料」の「利用が拡大しない理由」」と同様の理由に加え、例えば、配合飼料の原料となる飼料作物の生産に要する費用が輸入飼料の購入に要する費用よりも高額であることが考えられる。なお、農林水産省の「作物統計調査」によると、飼料作物の「作付(栽培)面積」は、平成二十八年の九十八万八千四百ヘクタールから令和四年の百二万六千ヘクタールに増加している。

二の2について

 お尋ねの「国産粗飼料に置き換えるまでの支援策」の意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、「食料・農業・農村基本計画」(令和二年三月三十一日閣議決定。以下「基本計画」という。)において、粗飼料は、国内消費仕向量の百パーセントに相当する生産努力目標を示しているため、例えば、輸入粗飼料の価格高騰に対する支援を行うことは現時点では考えていない。なお、輸入粗飼料の価格の上昇等の影響を受けにくい畜産経営を確保することは重要と認識しており、草地の整備への支援、飼料の収穫をするために必要な機械の導入支援、飼料生産を行う農家等と畜産農家との連携の強化等により、今後とも国産粗飼料の生産及び利用拡大を推進していく考えである。

三について

 お尋ねの「経営を維持するための要件緩和」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「酪農経営改善緊急支援事業」は、生乳の需給緩和の状況の改善を目的としており、令和五年度及び令和六年度における生乳の生産を抑制する計画を策定し、これを実施すること等を要件としているところであるが、当該要件を緩和した場合、当該事業の目的が十分に達成されなくなるおそれがあるため、現時点で、当該要件を緩和することは考えていない。また、お尋ねの「経営を維持するための」「支援策」については、配合飼料の価格高騰など生産コストの上昇等の影響を受けている畜産・酪農経営を緊急的に支援するための対策として、農林水産省において令和五年三月に「畜産・酪農緊急対策パッケージ」を取りまとめ、配合飼料の価格高騰に関する対策、牛乳及び乳製品の消費の増進に関する対策、金融支援等を実施しているところである。

四の1について

 御指摘の「輸入乳製品」のうち、国家貿易により輸入を行っているものについては、国内需給に悪影響を与えないよう、輸入の時期、数量等を管理しているところである。

四の2について

 政府としては、国内におけるチーズの需要に応じて、国産チーズの生産を行うことが重要であると考えており、その生産性や品質の向上等を図るため、必要な施設整備、生産技術に係る研修会の開催等に対する支援を行っているところである。

五について

 お尋ねについては、基本計画において設定している飼料自給率を令和十二年度に三十四パーセントに引き上げるという目標の達成のため、輸入穀物からの切替えが可能である国産粗飼料の生産拡大の取組及び飼料生産を行う農家等と畜産農家との連携の強化等による国産飼料の利用拡大の取組を推進していく考えである。