質問主意書

第211回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一一第一一一号
  令和五年六月二十七日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員辻元清美君提出原子力発電所の劣化状況の点検・評価・審査に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員辻元清美君提出原子力発電所の劣化状況の点検・評価・審査に関する再質問に対する答弁書

一について

 原子力規制委員会(以下「委員会」という。)が「実用発電用原子炉及びその附属施設の技術基準に関する規則の解釈」(平成二十五年六月十九日原子力規制委員会決定)等において民間規格を引用する際に行う技術評価については、委員会において、当該引用を行った部分の民間規格の内容を含め、当該評価の内容を説明する責任を有しているものと考えている。

二について

 御指摘の資料において御指摘の記載があることは承知している。

三について

 お尋ねの「その概要」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、委員会において、「原子力規制委員会指示文書等発出要領」(平成二十四年九月十九日原子力規制委員会委員長決定)に基づきこれまで発出したお尋ねの「特定指導文書」について、①当該文書の発出日及び②当該文書の名称を委員会において現時点で把握している範囲でお示しすると、それぞれ次のとおりである。

 ①平成二十四年九月二十六日 ②「福島第一原子力発電所第三号機使用済燃料プールへの鉄骨落下事象について(指示)」

 ①平成二十四年十月十七日 ②「東京電力株式会社福島第一原子力発電所第三号機タービン建屋内における放射性物質を含む水の漏えいについて(指示)」

 ①平成二十四年十月十九日 ②「東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所第五号機の燃料集合体ウォータ・ロッドの曲がりについて(指示)」

 ①平成二十四年十一月十五日 ②「原燃輸送株式会社の核燃料輸送物設計承認申請に係るクロスチェック解析について」

 ①平成二十四年十一月十五日 ②「使用済燃料貯蔵施設に係る溶接の方法の認可申請の審査における技術協力依頼について」

 ①平成二十四年十一月二十二日 ②「高速増殖原型炉もんじゅ原子炉施設に対する平成二十四年度第三回保安検査への協力について(依頼)」

 ①平成二十五年一月十六日 ②「「九州電力株式会社玄海原子力発電所第三号機で確認された充てんポンプ主軸の折損事象を踏まえた確認等について(指示)」に基づく原子力事業者からの報告書に対する妥当性確認の協力について(依頼)」

 ①平成二十五年一月二十八日 ②「核燃料輸送物設計変更承認申請の審査における技術協力の実施について」

 ①平成二十五年一月三十一日 ②「高速増殖原型炉もんじゅ原子炉施設における保守管理不備に係る報告書の評価に関する協力について(依頼)」

 ①平成二十五年二月十五日 ②「発電用軽水型原子炉の地震及び津波に係る新安全設計基準の作成支援の実施について」

 ①平成二十五年三月一日 ②「高速増殖原型炉もんじゅ原子炉施設における保守管理不備に係る報告書の評価に関する協力の期間延長について(依頼)」

 ①平成二十五年三月二十七日 ②「核燃料輸送物設計変更承認申請の審査における技術協力依頼の変更(作業期間の延長)について」

 ①平成二十五年三月二十七日 ②「使用済燃料貯蔵施設に係る溶接の方法の認可申請の審査における技術協力依頼の変更(作業期間の延長)について」

 ①平成二十五年四月十日 ②「核燃料施設等の新規制基準の策定支援の実施について」

 ①平成二十五年四月二十五日 ②「研究開発段階にある発電の用に供する原子炉に係る規則等の改正及び制定に関する協力について(依頼)」

 ①平成二十五年四月三十日 ②「核燃料輸送物設計変更承認申請の審査における技術協力依頼の変更(作業期間の延長)について」

 ①平成二十五年五月二十九日 ②「大飯発電所三・四号機の現状に関する評価に係る評価書作成支援の実施について」

 ①平成二十五年六月十四日 ②「高速増殖原型炉もんじゅ原子炉施設における保全計画等に係る確認作業への立会協力について(依頼)」

 ①平成二十五年六月十四日 ②「東京電力株式会社福島第一原子力発電所一号機原子炉建屋四階での出水事象に係る検討支援の実施について」

 ①平成二十五年六月十九日 ②「浜岡原子力発電所において用いて資材等に含まれる放射性物質の放射能濃度の測定及び評価方法の認可申請の審査における技術協力の実施について」

 ①平成二十五年六月二十五日 ②「核燃料輸送物設計変更承認申請の審査における技術協力依頼の変更(作業期間の延長)について」

 ①平成二十五年六月二十五日 ②「放射線管理等報告等に関するWebシステムの運用及び年度報告の作成支援について」

 ①平成二十五年六月二十六日 ②「使用済燃料貯蔵施設に係る溶接の方法の認可申請の審査における技術協力依頼の変更(作業期間の延長)について」

 ①平成二十五年六月二十八日 ②「東京電力株式会社福島第二原子力発電所における原子炉格納容器内コンクリート構造物の温度影響による健全性影響評価に対する検討依頼」

 ①平成二十五年七月八日 ②「実用発電用原子炉施設に係る使用前検査、燃料体検査及び施設定期検査の運用について」

 ①平成二十五年七月八日 ②「新規制基準施行後の設置変更許可申請等に対する審査に係る支援の実施について」

 ①平成二十五年八月九日 ②「東京電力株式会社福島第二原子力発電所二号炉高経年化対策技術評価書及び長期保守管理方針の技術的妥当性の確認について(依頼)」

 ①平成二十五年八月二十二日 ②「東京電力株式会社福島第一原子力発電所三号機原子炉建屋水素爆発と使用済燃料プール内熱源に係る検討支援の実施について」

 ①平成二十五年九月十日 ②「高速増殖原型炉もんじゅ原子炉施設における保全計画等に係る確認作業への協力について(依頼)」

 ①平成二十五年九月二十五日 ②「高速増殖原型炉もんじゅ敷地内破砕帯の追加調査計画の策定について」

 ①平成二十五年九月三十日 ②「使用済燃料貯蔵施設に係る溶接の方法の認可申請の審査における技術協力依頼の変更(作業期間の延長)について」

 ①平成二十五年十月十五日 ②「中国電力株式会社島根原子力発電所一号炉高経年化技術評価書及び長期保守管理方針の技術的妥当性の確認について(依頼)」

 ①平成二十五年十一月六日 ②「核物質防護規定の遵守について(厳重注意)」

 ①平成二十五年十一月二十二日 ②「東北電力株式会社女川原子力発電所第一号機高経年化対策技術評価書及び長期保守管理方針の技術的妥当性の確認について(依頼)」

 ①平成二十五年十二月十一日 ②「ウラン燃料加工施設における六ふっ化ウランの取扱いが一般公衆に及ぼす化学的影響に関する報告の提出について(指示)」

 ①平成二十五年十二月十三日 ②「東京電力株式会社福島第二原子力発電所二号炉高経年化対策技術評価書及び長期保守管理方針の技術的妥当性の確認の実施期間延長について」

 ①平成二十五年十二月十八日 ②「新規制基準施行後の事業変更許可申請等に対する審査に係る支援の実施について」

 ①平成二十六年一月十五日 ②「九州電力株式会社川内原子力発電所一号炉の高経年化技術評価書及び長期保守管理方針の審査に係る支援の実施について」

 ①平成二十六年二月四日 ②「関西電力株式会社高浜発電所三号炉の高経年化技術評価書及び長期保守管理方針の審査に係る支援の実施について」

 ①平成二十六年二月十二日 ②「中国電力株式会社島根原子力発電所一号炉高経年化技術評価書及び長期保守管理方針の技術的妥当性の確認の実施期間延長について」

 ①平成二十六年九月十二日 ②「核物質防護規定の遵守について(注意)」

 ①平成二十六年九月十七日 ②「原子力規制委員会が是認し活用している日本機械学会規格の規定内容の確認について」

 ①平成二十六年九月十七日 ②「日本機械学会「発電用原子力設備規格 設計・建設規格」(第一編軽水炉規格)二○一二年版の正誤表の発行を踏まえた対応について」

 ①平成二十六年九月三十日 ②「原子力規制委員会が是認し活用している日本機械学会規格の規定内容の誤りの有無の確認等の対応を要しない規格について」

 ①平成二十六年九月三十日 ②「原子力規制委員会が是認し活用している日本機械学会規格の規定内容の確認について」

 ①平成二十六年十二月二日 ②「原子力規制委員会が是認し活用している民間規格の誤りの訂正に係る報告について」

 ①平成二十七年一月二十八日 ②「核燃料物質の使用に係る法令の遵守について(注意)」

 ①平成二十七年一月三十日 ②「核物質防護規定の遵守について(注意)」

 ①平成二十七年二月二十五日 ②「運転責任者判定のための方法、実施体制等に係る確認について(指示)」

 ①平成二十七年八月十九日 ②「国立研究開発法人日本原子力研究開発機構核燃料サイクル工学研究所プルトニウム燃料第三開発室の今後の運用について(指示)」

 ①平成二十七年九月二日 ②「日本原燃株式会社廃棄物管理施設ガラス固化体貯蔵建屋の下部プレナム等における変色部や錆の発生に係る調査について(指示)」

 ①平成二十七年十月十九日 ②「日本電気協会「原子炉構造材の監視試験方法(JEAC四二〇一―二〇〇七)(二〇一三年追補版)」に関する技術評価を受けた今後の対応について(依頼)」

 ①平成二十七年十一月四日 ②「東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所第六号機における不適切なケーブルの敷設に係る対応について(指示)」

 ①平成二十七年十二月十六日 ②「金属キャスクバスケット用アルミニウム合金に係る事例規格の廃止に伴う対応について(指示)」

 ①平成二十八年一月六日 ②「東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所で確認された不適切なケーブル敷設に係る対応について(追加指示)」

 ①平成二十八年一月二十七日 ②「情報セキュリティの確保について(注意)」

 ①平成二十八年三月二十五日 ②「核物質防護規定の遵守について(注意)」

 ①平成二十八年八月四日 ②「国立研究開発法人日本原子力研究開発機構東海再処理施設の廃止に向けた計画等の検討について(指示)」

 ①平成二十八年九月十二日 ②「核物質防護規定の遵守について(厳重注意)」

 ①平成二十八年十一月十六日 ②「北陸電力株式会社志賀原子力発電所二号炉の原子炉建屋内に雨水が流入した事象に係る対応について(指示)」

 ①平成二十八年十二月二十一日 ②「国立研究開発法人日本原子力研究開発機構原子炉廃止措置研究開発センターにおける記録等の管理不備に係る対応について(指示)」

 ①平成二十九年三月十五日 ②「国立研究開発法人日本原子力研究開発機構核燃料サイクル工学研究所プルトニウム燃料第三開発室の加工の事業の許可申請の取下げに伴う使用施設等の安全上重要な施設の再評価について(指示)」

 ①平成三十年十二月十七日 ②「核物質防護規定の遵守について(注意)」

 ①令和五年四月十八日 ②「敦賀発電所の発電用原子炉設置変更許可申請書(二号発電用原子炉施設の変更)の補正について(指導)」

四及び五について

 御指摘の「特定指導文書」については、委員会として、一般社団法人日本電気協会(以下「日本電気協会」という。)に対して「予測式の改定に向けた」「具体的な対応・・・及びスケジュール」等について「報告するよう求め」たものであり、御指摘のように「問題点について対応することを求め」たものではない。日本電気協会においては、「日本電気協会「原子炉構造材の監視試験方法(JEAC四二〇一―二〇〇七)(二〇一三年追補版)」に関する技術評価を受けた今後の対応について(依頼)(原規技発第一五一〇一九一号)への回答について」(平成二十七年十一月三十日一般社団法人日本電気協会作成)における「この検討に際しては、これまでの活動と同様、国内外の研究動向等の最新知見の収集に努めるとともに、監視試験結果も踏まえて改定スケジュールを決定していきます。」との記載を踏まえ、検討を進めているものと承知しており、「あまりに遅すぎるのではないか」とのお尋ねについては、「JEAC四二〇一―二〇〇七」の改定等が日本電気協会による自主的な取組であることから、お答えすることは差し控えたい。今後については、日本電気協会が当該規格の改定等を行い、原子力事業者等が委員会に対して技術評価の申出を行った場合には、委員会として平成三十年度第十三回原子力規制委員会の資料四「原子力規制委員会における民間規格の活用について(以下「民間規格の活用」という。)」に基づき、対応する考えである。

 また、委員会においては、民間規格の活用に基づき、御指摘の「原子炉構造材の監視試験方法(JEAC4201―2007)[二〇一三年追補版]」等を用いて新規制基準に係る適合性審査を行っており、御指摘のように「安全審査に支障が生じている」とは考えていない。

六について

 御指摘の「問題が指摘されている「JEAC4201」及び「JEAC4206」」が具体的にどの規格を指すのか明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。

七について

 御指摘の「JEAC4201―2007」において、御指摘の「照射脆化予測式」との記載は存在していないと認識しており、当該記載を前提としたお尋ねについてお答えすることは困難である。

八について

 お尋ねの「六十年目以降の劣化評価が必要なデータが得られている発電所」としては、例えば、九州電力株式会社川内原子力発電所一号炉及び二号炉が存在すると考えており、これらの炉において、同社により、これらの炉の原子炉容器の表面よりも炉心に近い位置に設置した監視試験片を用いた評価が行われており、原子炉を約百十年間連続して運転した場合に相当する中性子照射量のデータが取得されているものと考えている。

九について

 お尋ねの「健全性が最も疑われる」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則(昭和五十三年通商産業省令第七十七号)第八十二条第一項から第四項までに規定する機器及び構造物の経年劣化に関する技術的な評価(以下「経年劣化評価」という。)については、我が国の原子力発電所において、一般的に、原子炉圧力容器又は原子炉容器の表面における中性子照射量に減衰率を乗じて深さ十ミリメートル地点に相当する中性子照射量を算出した上で行われているものと承知しており、例えば、九州電力株式会社川内原子力発電所一号炉における経年劣化評価に用いた監視試験片が受けた中性子照射量は、一平方センチメートル当たり一垓(がい)二千四百京個であり、原子炉容器の御指摘の「深さ十ミリメートル」の地点において、「照射量に換算して」運転開始後「六十年」の時点で受けると推定される中性子照射量である一平方センチメートル当たり八千六十京個を超えているものと承知している。

十から十二までについて

 委員会としては、我が国の原子力発電所における経年劣化評価のための監視試験片の採取に当たって、御指摘の「JEAC4201―2007」に記載されている「炉心領域にある部材のうち、少なくとも一溶解から製造された母材」等(以下「母材等」という。)が用いられていることを確認しているところ、「JEAC4201―2007」において、「供試材(母材及び溶接部)は、炉心領域に使用したもののうち、照射前のRTNDTと化学成分(Cu、Ni等)の影響を考えて、附属書BのB―二〇〇〇に示す手法により予測される相当運転期間末期のRTNDT調整値が最高となるものを選ぶ」とされていることから、御指摘の「すべての母材の材料」でないとしても「少なくとも一溶解から製造された母材」であれば「妥当」であると考えており、また、お尋ねの「鋼材の溶解数」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、母材等が溶解された回数及びお尋ねの「国内の各原子炉の監視試験片が炉心領域の鋼材のどの溶解から採取されたものであるか」については確認していない。

十三について

 お尋ねの「熱影響部の再生利用」については、「JEAC四二〇一―二〇〇七」に基づく「熱影響部」を含めた「監視試験片の再生方法」を指すものと考えるが、御指摘の答弁における「国のプロジェクト」とは、平成十一年度から平成十五年度までは一般財団法人発電設備技術検査協会が、同年度から平成十七年度までは旧独立行政法人原子力安全基盤機構が、それぞれ実施した「原子力プラントの重要機器の脆化に関する調査研究」であり、当該調査研究の一部を取りまとめた「原子炉圧力容器監視試験片の再生に関する調査報告書」(平成十八年四月独立行政法人原子力安全基盤機構規格基準部作成)において「監視試験片の再生方法」についての記載が存在することから、民間規格に御指摘の答弁のとおり「採択」することが可能であるものと考えている。

十四について

 御指摘の「JEAC4201―2007」には御指摘の「溶接熱影響部は母材で評価を代表できる」との記載はなく、御指摘の記載が存在することを前提とするお尋ねについてお答えすることは困難である。

十五について

 お尋ねの「現行規程」とは御指摘の「JEAC4206―2007」又は「JEAC4206―2016」を指すものと考えられるが、いずれにしても、御指摘のように「日本電気協会が精度が低いとして廃止を提案した」ことはないと承知しているため、このことを前提としたお尋ねについてお答えすることは困難である。

十六について

 御指摘の「JEAC4206―2016」に関する日本電気協会における検討状況については、政府として承知していない。