質問主意書

第211回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一一第一一〇号
  令和五年六月二十七日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員石橋通宏君提出我が国における難民認定の状況に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員石橋通宏君提出我が国における難民認定の状況に関する質問に対する答弁書

一の1の(1)及び(2)について

 令和三年末時点で難民認定申請(出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)第六十一条の二第一項の難民の認定の申請をいう。以下同じ。)中の者の数及び審査請求(入管法第六十一条の二の九第一項の審査請求をいい、行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成二十六年法律第六十九号)第七十五条の規定による改正前の入管法第六十一条の二の九第一項の異議申立てを含む。一の4の(3)についてを除き、以下同じ。)中の者の数は、それぞれ、一万三千三百二十四人及び三千二百九十五人である。

 令和四年末時点で難民認定申請中の者の数及び審査請求中の者の数は、それぞれ、九千八百六十人(速報値)及び二千五百二十四人(速報値)である。

 なお、その余のお尋ねについては、お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

一の1の(3)について

 令和四年に地方出入国在留管理局等(地方出入国在留管理局及び地方出入国在留管理局支局をいう。以下同じ。)における振り分けの段階で明らかに濫用・誤用的な案件として振り分けられたB案件又はC案件(「難民認定事務取扱要領」(平成十七年五月十三日付け法務省管総第八百二十三号法務省入国管理局長通知)に「B案件」又は「C案件」として記載されているものをいう。以下同じ。)の数は、B案件が三十八件であり、C案件が千百三十一件である。

一の1の(4)について

 御指摘の「「濫用」案件とみなしている」及び「「濫用」とみなしている」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難であるが、地方出入国在留管理局長が出入国在留管理庁長官に請訓を行わない案件(「難民認定事務取扱要領」に「本庁長官に請訓を行うもの」として記載されている以外の案件をいう。)には、B案件又はC案件以外の案件もある。

一の1の(5)について

 お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

一の1の(6)について

 前段のお尋ねについては、お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

 後段のお尋ねについては、御指摘の「「正当な理由」があると見なしている」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難であるが、C案件に該当する場合であっても、人道上の配慮の必要性を慎重に検討すべきと思われるときは、本国における情勢の変化などによるものについてはA案件に、本邦での日本人との婚姻などの個別事情によるものについてはD案件に振り分けている。

一の1の(7)について

 令和四年に難民認定申請をした者のうち、難民認定申請時に二十歳未満であったもので在留資格を有していなかったものの数は二百人(速報値)であり、このうち入管法第二十二条の二第一項の規定により本邦に在留していたものの数は百二十四人であり、不法に本邦に在留していたものの数は七十六人(いずれも速報値)である。なお、その余のお尋ねについては、お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

一の1の(8)及び二の3について

 令和四年に仮滞在許可(入管法第六十一条の二の四第一項の仮滞在の許可をいう。以下同じ。)を受けた者のうち、仮滞在許可を受けた時点で二十歳未満であったものの数は二十三人(速報値)であり、その年齢別の内訳は、零歳が十七人、一歳が二人、八歳が一人、九歳が一人、十二歳が一人、十七歳が一人(いずれも速報値)である。

 また、同年に仮滞在の許否の判断をした者のうち、東京出入国在留管理局成田空港支局(以下「成田空港支局」という。)におけるお尋ねの仮滞在が「許可された人数」は二人、「許可されなかった人数」は四人、東京出入国在留管理局羽田空港支局(以下「羽田空港支局」という。)、名古屋出入国在留管理局中部空港支局(以下「中部空港支局」という。)及び大阪出入国在留管理局関西空港支局(以下「関西空港支局」という。)におけるお尋ねの仮滞在が「許可された人数」及び「許可されなかった人数」は、いずれも零人である。なお、その余のお尋ねについては、お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

一の1の(9)について

 お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難であるが、お尋ねの「送還忌避者」のうち、令和四年末時点で難民認定申請中の者の数又は審査請求中の者の数は、千七百九十四人(速報値)であり、その難民認定申請の回数別の内訳は、初回の難民認定申請が三百二十六人、二回目の難民認定申請が七百八十五人、三回目の難民認定申請が四百八十六人、四回目の難民認定申請が百五十人、五回目の難民認定申請が三十八人、六回目の難民認定申請が八人、七回目の難民認定申請が一人(いずれも速報値)である。

 また、このうち三回目以降の者の国籍・地域別の内訳は、トルコが二百四十九人、スリランカが八十六人、パキスタンが五十二人、イランが四十六人、ナイジェリアが三十七人、その他が二百十三人(いずれも速報値)である。

一の2の(1)及び(2)について

 令和四年に難民と認定した者(審査請求手続において認定した者を含む。)二百二人のうち、二回目の難民認定申請に対して難民と認定したものの数は二人(速報値)、三回目の難民認定申請に対して難民と認定したものの数は三人(速報値)であり、退去強制令書発付後に難民と認定したものの数は四人(速報値)である。

 また、同年に難民と認定しなかったものの、人道上の配慮を理由に在留を認めた者千七百六十人のうち、二回目の難民認定申請に対して難民と認定しなかったものの、人道上の配慮を理由に在留を認めたものの数は百五人(速報値)、三回目の難民認定申請に対して難民と認定しなかったものの、人道上の配慮を理由に在留を認めたものの数は八十人(速報値)、四回目の難民認定申請に対して難民と認定しなかったものの、人道上の配慮を理由に在留を認めたものの数は二十九人(速報値)、五回目の難民認定申請に対して難民と認定しなかったものの、人道上の配慮を理由に在留を認めたものの数は三人(速報値)であり、退去強制令書発付後に在留を特別に許可したものの数は九十六人(速報値)である。

一の2の(3)から(5)までについて

 お尋ねについては、集計に当たって難民認定申請の受付及び処分を行う地方出入国在留管理局等に調査を行わせ、その結果を精査するなどの作業に膨大な時間を要することから、通常の業務において集計していないものであり、お尋ねの「集計に要する時間の見込み」を含め、お答えすることは困難である。

一の2の(6)について

 お尋ねの「性的指向及び/又はジェンダー・アイデンティティを理由として難民と認定された者」の意味するところが必ずしも明らかではなく、また、御指摘の「性的指向及び/又はジェンダー・アイデンティティ」の観点からの統計をとっておらず、お答えすることは困難であるが、いわゆる同性愛者について「特定の社会的集団の構成員であること」を理由に迫害を受けるおそれがあるとして難民と認定した事例があるものと承知している。

一の2の(7)について

 令和四年に難民として認定された者のうち、不服申立てで「理由あり」とされた者十五人の国籍別の内訳は、ミャンマーが九人、イエメンが一人、エチオピアが一人、カメルーンが一人、カンボジアが一人、コンゴ民主共和国が一人、中国が一人である。

一の2の(8)について

 令和四年に難民と認定しなかったものの、人道上の配慮を理由に在留を認めた者千七百六十人のうち、一次審査(入管法第六十一条の二第一項に規定する難民の認定に関する処分を行うための審査をいう。)において在留を認めたものの数は千四百八十一人である。なお、その余のお尋ねについては、お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

一の2の(9)及び(10)について

 お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

一の3の(1)について

 平成二十二年から平成二十九年まで難民認定申請数が増加を続けていたことに伴い、審査期間が長期化している未処理案件が生じていた中で、それらを集中的に処理したことから、難民認定申請から処理までに要した期間の平均が長期化したものであると考えている。

一の3の(2)について

 お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

一の4の(1)について

 お尋ねの「臨時班」のうち、迅速な審理が可能かつ相当な事件が重点的に配分された臨時班において、令和三年の不服申立て処理数のうち同班を構成した難民審査参与員が関与した事件数は三千九百十五件であり、同班を構成した難民審査参与員は十二名であり、また、令和四年の不服申立て処理数のうち同班を構成した難民審査参与員が関与した事件数は三千六十五件であり、同班を構成した難民審査参与員は十三名である。

 その余のお尋ねについては、お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

一の4の(2)について

 お尋ねの事件の配分の運用に関する各判断は、出入国在留管理庁出入国管理部審判課が行っている。

 その上で、迅速な審理が可能かつ相当な事件として臨時班に配分された事件であったとしても、難民審査参与員が更に慎重な審査を要すると判断した事件については、常設班に配分替えを行っている。

一の4の(3)について

 御指摘の「形式的に割り振られる」とは、審査請求(入管法第六十一条の二の九第一項の審査請求をいう。)があった事件について、事件の内容によらずに暫定的に事件の配分を行うという意味であるところ、お尋ねの意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

一の4の(4)について

 審査請求に係る口頭意見陳述(行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号。以下「新法」という。)第三十一条第一項本文に規定する意見の陳述をいい、新法による改正前の行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号。以下「旧法」という。)第四十八条において準用する旧法第二十五条第一項ただし書に規定する口頭で意見を述べる機会を含む。)及び質問(新法第三十六条に規定する質問をいい、旧法第四十八条において準用する旧法第三十条に規定する審尋を含む。)の期日が開かれなかった四千六十四人のうち、口頭意見陳述及び質問を申し立てたが、期日が開かれなかった人数の合計は、千二百九十八人である。

 その余のお尋ねについては、お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

一の4の(5)について

 お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

一の4の(6)について

 お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

一の4の(7)について

 お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

一の5について

 出入国在留管理庁において把握しているところでは、難民不認定処分取消請求訴訟及び難民不認定処分無効確認請求訴訟について、令和四年に提起された件数は二十四件、同年に終局裁判がなされた件数は第一審、控訴審及び上告審の合計で二十五件である。

 また、難民不認定処分取消請求訴訟、難民不認定処分無効確認請求訴訟又は難民認定義務付け訴訟のうち、同年において国の敗訴が確定した事案については、その確定後、難民の認定が行われた。

一の6の(1)から(3)までについて

 お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

二の1について

 令和三年に一時庇(ひ)護上陸許可(入管法第十八条の二第一項の一時庇護のための上陸の許可をいう。以下同じ。)の申請をした者の数は三人であり、その国籍・地域別の内訳は、トルコが一人、ロシアが一人、中国が一人である。同年に一時庇護上陸許可を受けた者の数は、シリアが一人である。

 令和四年に一時庇護上陸許可の申請をした者の数及び一時庇護上陸許可を受けた者の数は、現在集計中であり、現時点でお答えすることは困難である。

二の2について

 令和四年に、地方出入国在留管理局の各空港支局及び福岡出入国在留管理局福岡空港出張所(以下「福岡空港出張所」という。)において、難民認定申請を行った者の数は、成田空港支局については九人、羽田空港支局については零人、中部空港支局については零人、関西空港支局については零人、福岡空港出張所については零人である。

三の1について

 令和四年末時点で出入国在留管理庁の収容施設に収容されていた者の数は二百二十九人(速報値)であり、このうち、難民認定申請中のものの数は二十二人、審査請求中のものの数は十六人(いずれも速報値)であるが、難民不認定処分取消請求訴訟係属中のものの数については、統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

三の2について

 被収容者の自殺件数について、令和三年は零人、令和四年は東京出入国在留管理局で一人である。

 被収容者の庁外診療数(速報値)について、令和三年は、入国者収容所東日本入国管理センター百六十六件、入国者収容所大村入国管理センター七十件、札幌出入国在留管理局八件、仙台出入国在留管理局六件、東京出入国在留管理局二百十件、成田空港支局九十九件、羽田空港支局十件、東京出入国在留管理局横浜支局七十三件、名古屋出入国在留管理局二百七十二件、大阪出入国在留管理局百六件、広島出入国在留管理局五十二件、高松出入国在留管理局四件、福岡出入国在留管理局四十四件、福岡出入国在留管理局那覇支局一件であり、令和四年は、入国者収容所東日本入国管理センター百六件、入国者収容所大村入国管理センター六十四件、札幌出入国在留管理局五件、仙台出入国在留管理局七件、東京出入国在留管理局二百七十七件、成田空港支局八十件、羽田空港支局一件、東京出入国在留管理局横浜支局二十五件、名古屋出入国在留管理局三百七件、大阪出入国在留管理局百五十五件、広島出入国在留管理局三十四件、高松出入国在留管理局二十件、福岡出入国在留管理局八十七件、福岡出入国在留管理局那覇支局四件である。

 被収容者の自傷行為(自殺未遂を含む。)の件数、精神科医の利用実績及び救急搬送件数については、いずれも集計に当たって被収容者の処遇を行う地方出入国在留管理局等に調査を行わせ、その結果を精査するなどの作業に膨大な時間を要することから、通常の業務において集計していないものであり、お答えすることは困難である。

四の1について

 令和四年度において、難民認定申請をしている者のうち生活に困窮するものに対する支援としてする保護費の支給(以下「保護措置」という。)の申請をした者の数は、二百二十一人であり、保護措置を受けた者の数は、二百四人である。

四の2について

 外務省においては、難民認定申請者保護事業等の実施を公益財団法人アジア福祉教育財団難民事業本部(以下「委託先」という。)に委託しているところ、令和四年度における、委託先が保護措置の申請を受け付けてから保護措置を開始して差し支えない旨の結果通知を同省から受けるまでの期間の平均は、約三十四日である。

 また、同年度における保護措置を受けた者の平均受給期間は、約十九箇月である。

四の3について

 令和四年において、保護措置の申請をしたものの保護措置の開始が不適当と判断された者の数は、十七人であり、その国籍は、アフガニスタン、イラク、イラン、エチオピア、カメルーン、ミャンマー及びリベリアである。

 また、同年における、委託先が当該申請を受け付けてから保護措置の開始が不適当である旨の結果通知を外務省から受けるまでの期間の平均は、約六十七日である。

四の4について

 令和四年度において、保護措置の対象者のうち直ちに住居を確保する必要があるものに対する支援として提供している難民認定申請者緊急宿泊施設(以下「緊急宿泊施設」という。)を利用した者の数は、二十五人であり、その男女別の内訳は、男性が十五人、女性が十人であり、国籍別の内訳は、イエメンが二人、イランが二人、カメルーンが二人、コンゴ民主共和国が十二人、ジンバブエが三人、セネガルが一人、ブルンジが一人、モロッコが一人、リベリアが一人である。

 また、保護措置の申請から緊急宿泊施設の利用開始までの平均日数は一日、最短日数は零日、最長日数は三十七日である。

四の5について

 お尋ねの令和四年度の支給額は、①保護費が九千三百十一万六千二百四十円、②生活費が六千七十三万六千七百七十四円、③住居費が二千三百九十八万七千百九十四円、④医療費が八百三十九万二千二百七十二円である。

 また、同年度の緊急宿泊施設の予算額は、三百万九千六百円であり、執行額は、現在精算の手続を行っているところであり、現時点で具体的な金額をお示しすることは困難である。

五の1について

 御指摘の「いわゆる「新しい形態の迫害」」に係る御指摘の「仕組み」の内容については、難民審査参与員からの提言や諸外国の実例なども参考にしながら、現在においても引き続き検討中である。

五の2について

 お尋ねの「「供述態度等」の具体例」については、供述する際の所作や、難民調査官の質問に対する反応が挙げられる。

五の3について

 お尋ねの「独立性を有する組織の設置」については、難民認定手続とその他の出入国在留管理行政の様々な手続とは密接に関連しており、難民の認定に関する事務を出入国在留管理庁において行うことには合理性があり、新たに独立した機関を設置する必要はないものと考える。

 その上で、難民認定手続においては、従前から、難民の地位に関する条約(昭和五十六年条約第二十一号)第一条の規定又は難民の地位に関する議定書(昭和五十七年条約第一号)第一条の規定により難民の地位に関する条約の適用を受ける者を、難民認定申請の内容により個別に審査して難民と認定するなど、難民認定手続の適正な運用に努めてきたところであるが、更なる適正化を図るため令和二年十二月に第七次出入国管理政策懇談会が取りまとめた報告書「今後の出入国在留管理行政の在り方」を踏まえ、当該報告書で示された論点について、現在、法務省において検討を行っているところである。

五の4について

 これまでにケース・スタディの対象となった事案は三件であり、現在、国連難民高等弁務官事務所と調整しながら、新たな事案を対象として、更なるケース・スタディの実施に向けた検討を進めている。

 また、ケース・スタディの結果、地方出入国在留管理局等に対して「面接による事情聴取の際の難民認定申請者への配慮について」(令和五年四月五日付け出入国在留管理庁出入国管理部出入国管理課難民認定室長事務連絡)を発出した。

五の5について

 令和五年四月一日現在の難民調査官に指定されている者の数は四百三十三人であり、その内訳は札幌出入国在留管理局二十四人、仙台出入国在留管理局二十七人、東京出入国在留管理局百三十五人、名古屋出入国在留管理局二十七人、大阪出入国在留管理局四十四人、広島出入国在留管理局三十七人、高松出入国在留管理局二十一人、福岡出入国在留管理局百十八人であり、その余のお尋ねについては、集計を行っておらず、お答えすることは困難である。

五の6について

 令和五年四月一日現在の出入国在留管理庁におけるお尋ねの「出身国情報の収集等に専従する職員の数」は五人であり、その余のお尋ねについては、集計を行っておらず、お答えすることは困難である。