質問主意書

第211回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一一第一〇五号
  令和五年六月二十三日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員浜田聡君提出休眠預金等活用法の仕組みの見直しに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員浜田聡君提出休眠預金等活用法の仕組みの見直しに関する質問に対する答弁書

一について

 民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律(平成二十八年法律第百一号。以下「法」という。)第十六条第一項において、「国及び地方公共団体が対応することが困難な社会の諸課題」の解決を図ることを目的として、法第八条に規定する休眠預金等交付金(以下「休眠預金等交付金」という。)に係る資金を活用するものと規定されているところ、当該諸課題については、「休眠預金等交付金に係る資金の活用に関する基本方針」(平成三十年三月三十日内閣総理大臣決定、令和四年四月二十七日一部改正。以下「基本方針」という。)において、法第二十条第一項に規定する指定活用団体(以下「指定活用団体」という。)は、「我が国が抱える社会の諸課題を把握し、分析した上で、「優先的に解決すべき社会の諸課題」を決定する必要がある」とし、優先的に解決すべき社会の諸課題を法第二十六条第一項に規定する事業計画(以下「事業計画」という。)に明示することとしており、これに基づき、指定活用団体である一般財団法人日本民間公益活動連携機構(以下「機構」という。)は、同項の規定に基づき内閣総理大臣の認可を受けた本年度の事業計画において、「経済的困窮など、家庭内に課題を抱える子どもの支援」、「日常生活や成長に困難を抱える子どもと若者の育成支援」、「社会的課題の解決を担う若者の能力開発支援」、「働くことが困難な人への支援」、「孤独・孤立や社会的差別の解消に向けた支援」、「女性の経済的自立への支援」、「地域の働く場づくりや地域活性化などの課題解決に向けた取組の支援」及び「安心・安全に暮らせるコミュニティづくりへの支援」に係るものを優先的に解決すべき社会の諸課題として明示している。

二について

 お尋ねの「都市差別条項であり・・・したがって、同条第三項に定められた休眠預金等交付金に係る資金の活用における透明性の確保が困難ではないか」の意味するところが明らかではなく、お答えすることは困難であるが、法第十六条第四項は、休眠預金活用推進議員連盟(以下「議連」という。)の検討に基づき、休眠預金等交付金に係る資金の活用が大都市に集中し、それ以外の地域において、国及び地方公共団体が対応することが困難な社会の諸課題があるにもかかわらず、その資金が十分に活用されないといった状況にならないように配慮すべきとの趣旨により規定されたものと承知している。

三及び四について

 御指摘の「その活用の透明性の確保を図ったことで、活用先地域に偏りが生じる可能性が出ることは十分に想定される」の意味するところが必ずしも明らかではないが、基本方針において、「本制度全体の透明性の確保に努める」及び「優先的に解決すべき社会の諸課題及びその解決策は、地域や分野等によって多様であることを十分に配慮する」ことを休眠預金等に係る資金の活用に当たっての基本原則とし、そのための諸規定を定めており、例えば、法第十九条第二項第三号ロに規定する資金分配団体(以下「資金分配団体」という。)の選定の方法については、「選定の基準及び評価の観点等を事前に公表すること等により、審査における透明性・客観性の確保に努めること」及び「選定結果及び選定理由等の公開等により、国民に対する説明責任を果たし、透明性を確保すること」としつつ、「社会の諸課題やそれを解決するための手法の多様性に対応できるようにする観点から、大都市その他特定の地域に偏らないように配慮」することとしており、これに基づき、機構が事業計画において、資金分配団体の選定基準、評価の観点、選定結果、選定理由等を公表すること、資金分配団体を公募する際に「全国枠」及び全国を十地域に分けた「地域枠」を設けることなどにより、法第十六条第三項の「透明性の確保」が図られること及び同条第四項の「大都市その他特定の地域に集中することのないように配慮」することの双方への対応が行われているものと考えている。

五について

 前段のお尋ねについては、御指摘の「第十七条第一項で定められた活動が新しい社会的課題を解決する方法をとるところとされた」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難であるが、平成二十八年五月十八日の衆議院財務金融委員会において、法の提案者である岸本周平衆議院議員(当時)から「そもそも行政の手が届かない分野の中で、子供、若者をめぐる環境が特に今悪化していることを踏まえまして、一つには子供及び若者、これはもう子供、若者ですから女性は当然入っているということで、特に女性ということは芽出ししておりませんけれども、子供、若者。それから、日常生活または社会生活を営む上での困難を有する者。それから、地域社会における活力の低下等を克服するための支援ということに絞らせていただいております。実は、この三つのカテゴリーでも、これまでの、従前の公益活動はかなりの分野が含まれるというふうに考えております。これは各種のNPO団体等のヒアリングを通じましても、そのようなことでございました。」との説明がなされたものと承知している。また、御指摘の「できるだけ新しい社会的課題を解決する方法をとるようなところに絞っていく」との答弁については、法第十六条第五項において、休眠預金等交付金に係る資金の活用に当たっては、「社会の諸課題を解決するための革新的な手法の開発を促進するための成果に係る目標に着目した助成等その他の効果的な活用の方法を選択することにより、民間の団体の創意と工夫が十分に発揮されるように配慮されるものとする」と規定されていることについての説明としてなされたものと承知している。

 後段のお尋ねについては、法第十七条第一項に規定する公益に資する活動には、御指摘の「特定非営利活動法人が行う二十の活動」の多くが含まれるものと考えられ、お尋ねの「対象分野を広げる又は見直す必要性」は現時点ではないものと考えている。

六について

 議連が、本年三月に公表した「休眠預金等活用法の一部を改正する法律案骨子(素案)等に関するパブリックコメントの結果について」において、お尋ねの「指定活用団体を一つとする利点」についての考え方が示されていると承知しており、政府としては、この考え方に基づき、各地域に存する多様な社会の諸課題に対応するためには、当該課題に見合った専門性、事業形態、事業規模等を備えた多くの団体が資金分配団体となり、それらが法第十九条第二項第三号イに規定する民間公益活動を行う団体(以下「実行団体」という。)の選定及び支援をすることが重要であることから、指定活用団体を一つに限ることにより、こうした資金分配団体の活動を俯瞰(ふかん)し、資金分配団体及び実行団体の地域的及び分野的な固定化等の弊害を避けつつ、法第十六条に規定する基本理念及び基本方針に即した総合的でバランスのとれた法第二十条第一項に規定する民間公益活動促進業務(以下「民間公益活動促進業務」という。)を全国的な視点から実施することが可能となると考えている。

 また、お尋ねの「利権」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、内閣総理大臣は、指定活用団体に対し、法第二十三条第一項及び第三項に規定する民間公益活動促進業務規程の認可等、法第二十四条に規定する役員の選任及び解任の認可等、法第二十六条第一項に規定する毎年度の事業計画及び収支予算の認可、法第三十一条に規定する監督命令並びに法第三十三条第一項に規定する指定の取消し等を行うこととされていることから、指定活用団体が民間公益活動促進業務を行うに当たり、休眠預金等交付金に係る資金が公正かつ効率的に活用される措置が講ぜられているものと考えている。

七について

 「休眠預金等活用法の五年後見直しの対応方針」(令和四年十二月十六日内閣府)は、法附則第九条に基づき、議連及び法第三十五条に規定する休眠預金等活用審議会において、関係団体等からの意見聴取も踏まえ、法第十六条の基本理念並びに指定活用団体、資金分配団体及び実行団体の活動状況に即した休眠預金等交付金に係る資金の活用に係る制度の評価及び課題の抽出など法の全般的な検討を経て、お尋ねの「同法そのものの仕組みに関する見直し」を含めて内閣府において取りまとめたものである。