質問主意書

第211回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一一第一〇一号
  令和五年六月二十日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員浜田聡君提出準生活保護措置と困難女性支援法の関係等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員浜田聡君提出準生活保護措置と困難女性支援法の関係等に関する質問に対する答弁書

一について

 生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)による保護に準じた保護については、「生活保護問答集について」(平成二十一年三月三十一日付け厚生労働省社会・援護局保護課長事務連絡)において、出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)別表第二の上欄の在留資格をもって在留する者等が対象となる旨を示しているところ、入管法第五十四条第二項の規定により仮放免された者(以下「仮放免者」という。)は、当該在留資格をもって在留する者等に該当しないため、生活保護法による保護に準じた保護の対象とはならない。

二の1及び三について

 困難な問題を抱える女性への支援に関する法律(令和四年法律第五十二号。以下「困難女性支援法」という。)第二条に規定する「困難な問題を抱える女性」(以下単に「困難な問題を抱える女性」という。)については、同条において「性的な被害、家庭の状況、地域社会との関係性その他の様々な事情により日常生活又は社会生活を円滑に営む上で困難な問題を抱える女性(そのおそれのある女性を含む。)」と規定されており、御指摘の「在留カードないし特別永住者証明書を持たない外国人女性」であっても、この規定に該当する場合には、困難な問題を抱える女性に含まれる。

 また、生活保護法による保護に準じた保護の取扱いと困難女性支援法による施策は、その趣旨及び目的を異にするものであることから、生活保護法による保護に準じた保護の対象とならない者が困難女性支援法による施策の対象に含まれるとしても、直ちに、「在留カードないし特別永住者証明書を持たない外国人を準生活保護措置の対象外としたことと矛盾する」とは考えておらず、また、「在留カードないし特別永住者証明書を持たない外国人を準生活保護措置の対象外としたこととの整合性を図るため」に、困難な問題を抱える女性に、「在留カードないし特別永住者証明書を持たない者は含まれないと解釈せざるを得ない」とは考えていない。

二の2について

 困難な問題を抱える女性には、御指摘の「生物学的に女性である者」のほか、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(平成十五年法律第百十一号)第三条第一項の規定による性別の取扱いの変更の審判を受け、同法第四条第一項の規定により女性に変わったものとみなされる者が含まれるものと考えている。なお、「困難な問題を抱える女性への支援のための施策に関する基本的な方針」(令和五年厚生労働省告示第百十一号)においては、「性自認が女性であるトランスジェンダーの者については、トランスジェンダーであることに起因する人権侵害・差別により直面する困難に配慮し、その状況や相談内容を踏まえ、他の支援対象者にも配慮しつつ、関係機関等とも連携して、可能な支援を検討することが望ましい」としている。

四の1について

 仮放免の許否については、入管法第五十四条第二項において、「収容令書又は退去強制令書の発付を受けて収容されている者の情状及び仮放免の請求の理由となる証拠並びにその者の性格、資産等を考慮」すると規定されており、これを踏まえて、仮放免取扱要領(平成十三年二月一日付け法務省管警第十二号法務省入国管理局長通達(最終改正 令和五年三月十五日))第九条において、入国者収容所長又は主任審査官は、仮放免の請求を受けたときは、被収容者の容疑事実又は退去強制事由及び当該被収容者についての審査を担当している入国審査官等の意見のほか、①仮放免請求の理由及びその証拠、②被収容者の性格、年齢、資産、素行及び健康状態、③被収容者の家族状況、④被収容者の収容期間及び収容中の行状、⑤出入国在留管理関係の処分等に関する行政訴訟が係属しているときは、その状況、⑥難民認定申請中のときは、その状況、⑦出身国・地域の政府又は大使館・領事館等との間の送還手続に係る調整の状況、⑧有効な旅券を所持していないときは、その正当な理由の有無、⑨身元保証人となるべき者の年齢、職業、収入、資産、素行、被収容者との関係及び引受け熱意、⑩逃亡し、又は仮放免に付す条件に違反するおそれの有無、⑪日本国の利益又は公安に及ぼす影響、⑫人身取引等の被害の有無並びに⑬その他特別の事情を勘案し、仮放免を許可することができるとしているところである。仮放免の許否は、これらの事情を勘案して個別具体的に判断されるものであることから、お尋ねの「そのような身元保証人を付した者に対して仮放免を認めている」理由について、一概にお答えすることは困難である。

四の2について

 身元保証人は、仮放免の許否を判断するに当たり勘案される事情の一つとして求めているものであり、仮放免者が法令を遵守するとともに、仮放免に付された条件に従うことを確保することに資するものであると考えている。

四の3について

 一人の弁護士が多数の仮放免者の身元保証人となることが直ちに問題となるとは考えていないが、その身元保証をした仮放免者の多くが逃亡している者が身元保証人になることについては、仮放免者の逃亡の防止等の観点から望ましくないと考えている。

四の4について

 仮放免者が逃亡したことによって、その身元保証人がその地位に基づいて刑事上及び民事上の責任を問われることはないと考えている。

四の5について

 入管法及び弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)上、弁護士が仮放免者の「身元保証人になるに際し報酬を得」ることが、直ちに問題となるとは考えていない。