質問主意書

第211回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一一第一〇〇号
  令和五年六月二十日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員村田享子君提出非営利型一般財団法人に対する課税の在り方に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員村田享子君提出非営利型一般財団法人に対する課税の在り方に関する再質問に対する答弁書

一について

 先の質問主意書(令和五年四月四日提出質問第五〇号)の三で示されていた「非収益事業」の意味するところが必ずしも明らかではなかったため、先の答弁書(令和五年四月十四日内閣参質二一一第五〇号)の三についてでは、公益法人等の収益事業(法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第二条第十三号に規定する収益事業をいう。以下同じ。)から生じた所得以外の所得(以下「収益事業外所得」という。)を「収益事業外所得」と定義して、これをお尋ねにある「非収益事業の所得」に相当するものと判断してお答えしたものである。

二について

 御指摘の「利子・配当収入のような「収益事業外」の収入については、所得額を計算しないで、収入に直接課税していると解釈できる」の意味するところが必ずしも明らかではないが、法人税法第六条において、収益事業外所得については、各事業年度の所得に対する法人税を課さないこととされており、当該収益事業外所得に係る御指摘の「収入」が法人税の課税標準となることはない。また、所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第五条第三項において、内国法人は、国内において同法第百七十四条第一号に掲げる利子等又は同条第二号に掲げる配当等の支払を受けるときは所得税を納める義務があるとされ、同条に基づき御指摘の「収入」を所得税の課税標準とすることとされているが、所得税と法人税とは課税所得の範囲や課税標準及び課税額の算出に係る仕組みが異なる別個の制度であり、法人税については、「収入に直接課税される税制度」ではないと考えている。

三について

 お尋ねの意味するところが必ずしも明らかではないが、二についてでお答えしたとおり、法人税については収益事業外所得に係る御指摘の「収入」が課税標準となることはなく、また、所得税と法人税とは別個の制度であるため、法人税については、「納税者に申告させずして、経費や損金がゼロと税務当局が一方的に決定する」ものではなく、また、「非営利型一般財団法人においてのみ、その利子・配当収入が百パーセント所得となる」ものではないと考えている。

四について

 所得税については、所得税法第二百十二条第三項において、内国法人に対して利子、配当等の支払をする者は、その支払の際、当該利子、配当等について所得税を徴収し国に納付しなければならないこととされているところ、公益財団法人(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成十八年法律第四十九号)第二条第二号に規定する公益財団法人をいう。以下同じ。)については、公益財団法人が行う公益目的事業に係る活動が果たす役割の重要性に鑑み、当該活動を促進しつつ適正な課税の確保を図る観点から、所得税法第十一条第一項の規定により、支払を受ける利子、配当等には所得税を課さないこととされているものと承知している。

 法人税については、法人税法第五条において、内国法人に対しては、各事業年度の所得について、各事業年度の所得に対する法人税を課することとされているところ、公益財団法人及び非営利型一般財団法人(同法第二条第九号の二に規定する非営利型法人のうち、一般財団法人に該当するものをいう。以下同じ。)については、事業を行って利益を稼得することや、その利益を構成員等に分配することを目的としない法人であると考えられることから、同法第五条及び第六条において、営利企業と競合する収益事業から生じた所得には法人税を課し、収益事業外所得には法人税を課さないこととされているものと承知している。

 内国法人が支払を受ける利子、配当等については、同法第六十八条第一項において、利子及び配当等に係る所得税額について法人税額から控除することとされている。一方、当該利子及び配当等が、非営利型一般財団法人の収益事業外所得である場合は、先に述べたとおり、当該収益事業外所得には法人税を課さないこととされていることから、同条第二項の規定に基づき、当該利子及び配当等に係る所得税額の控除は行われないこととされている。

 したがって、内国法人が支払を受ける利子、配当等については、法人税と所得税の調整を行うため、確定申告の際に当該利子及び配当等に係る所得税額を法人税額から控除するが、非営利型一般財団法人の収益事業外所得については、同様の調整を行う必要がないことから、控除は行わないこととされているものと承知している。

五について

 非営利型一般財団法人における所得税及び法人税の課税については、四についてで述べたとおりであり、御指摘のとおり「利子・配当収入という収益事業外の収入に所得税が課されている」ものの、「非営利型一般財団法人の収益事業外所得について」は「法人税が課され」ていないため、法人税と所得税の調整は行われないものと承知している。

 非営利型一般財団法人について、このような取扱いとしている趣旨については、四についてで述べたとおりであり、御指摘のように「課税の公平性を欠くばかりか、合理性もない」とは考えていない。

六について

 御指摘の「実際には収益事業外所得を導き出す収益事業外の収入が益金として計上された前提で、課税されているのと事実上同様」の意味するところが必ずしも明らかではないが、二についてで述べたとおり、所得税と法人税とは課税所得の範囲や課税標準及び課税額の算出に係る仕組みが異なる別個の制度である。また、非営利型一般財団法人については、法人税法第五条及び第六条において、営利企業と競合する収益事業から生じた所得には法人税を課し、収益事業外所得には法人税を課さないこととされており、収益事業においては益金に算入される性質の収益や損金に算入される性質の損失であったとしても、非営利型一般財団法人の収益事業外所得については、法人税を課さないこととされていることから、課税所得の計算上、関連する益金も損金も計上されないものと承知している。したがって、御指摘の「有価証券の売却損など収益事業外で生じた損失について、法人税法上の損金として計上できるようにするべき」とは考えていない。

七及び八について

 非営利型一般財団法人における所得税及び法人税の課税については、四についてで述べたとおりであり、収益事業外所得については法人税を課さないこととされていることから、所得税との調整は行われないものと承知している。

九について

 非営利型一般財団法人における所得税及び法人税の課税については、四についてで述べたとおりであり、収益事業外所得については法人税を課さないこととされていることから、法人税法第六十八条第二項の規定により、同条第一項の適用対象とはならないものと承知している。

十について

 お尋ねの「公益目的事業に係る活動が果たす役割の重要性」については、公益財団法人は公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律第三十二条に規定する公益認定等委員会等の答申を踏まえて行う公益認定(同法第五条に規定する公益認定をいう。以下同じ。)がなされたという点で非営利型一般財団法人と異なるものである。

十一について

 非営利型一般財団法人における所得税及び法人税の課税については、四について及び六についてで述べたとおりであり、これを見直すことは考えていない。

十二について

 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律第五条第六号及び第十四条におけるいわゆる「収支相償原則」は、公益目的事業に係る収入がその実施に要する適正な費用を償う額を超えない旨を定めたものと承知しているが、その運用においては、「公益認定等に関する運用について(公益認定等ガイドライン)」(平成二十年四月内閣府公益認定等委員会策定。平成三十一年三月改定)等において示しているとおり、将来の公益目的事業の拡充等に充てるための資金の積立ても可能とすることとしている。

 また、御指摘の「公益目的事業財産の収益権の剥奪」の意味するところが必ずしも明らかではないが、同法第十八条は、公益法人(同法第二条第三号に規定する公益法人をいう。以下同じ。)が保有する財産のうち、公益認定を受けた日以後に寄附を受けた財産等を「公益目的事業財産」とし、これを公益目的事業のために使用し、又は処分しなければならない旨を定めたものと承知しているが、同法第十八条は、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則(平成十九年内閣府令第六十八号)第二十六条第三号の規定等から明らかなとおり、当該財産を直ちに使用し、又は処分しなければならないことを求めるものではなく、公益法人が事業の拡大をするために当該財産を一定の条件の下で資産運用により増加させることを制約するものではないと承知している。

 このように、同法は、公益法人の財政基盤の強化を禁じるものではなく、「所有権に不可欠な構成要素である収益権(民法第二百六条)を著しく制限するもの」との御指摘は当たらないと考えている。

 また、「収支相償原則について付言すると、その計算方法に会計上の発生主義と現金主義が混在する極めて不合理なものとなっている」とのお尋ねについては、その具体的に意味するところが明らかでなく、お答えすることは困難である。