質問主意書

第211回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一一第九八号
  令和五年六月二十日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員神谷宗幣君提出外国資本による日本企業合併及び買収に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員神谷宗幣君提出外国資本による日本企業合併及び買収に関する質問に対する答弁書

一について

 政府としては、お尋ねの「国民所得の上昇、産業基盤の強化、社会福祉制度の充実」を図るため、「経済財政運営と改革の基本方針二○二三」(令和五年六月十六日閣議決定)などを踏まえて、引き続き必要な取組を進めていく考えであり、その中で、同方針に記載しているとおり、「海外からヒト、モノ、カネ、アイデアを積極的に呼び込むことで我が国全体の投資を拡大させ、イノベーション力を高め、我が国の更なる経済成長につなげていく」観点から引き続き対日直接投資を促進していくこととしており、例えば、「海外からの人材・資金を呼び込むためのアクションプラン」(令和五年四月二十六日対日直接投資推進会議決定)に記載しているとおり、「海外からの投資や人材を受け入れることは、新たなアイデアやノウハウの導入を通じたイノベーションの発揚」につながると期待されることから、御指摘のように「労働対価支払以外の利益から日本国民が疎外され」るとは考えておらず、御指摘のように「外国資本の手を借りて日本経済を成長させても・・・国民の生命、財産、国益を守り抜くことは困難になる」とは考えていない。

二について

 政府としては、一についてで述べたとおり、「海外からヒト、モノ、カネ、アイデアを積極的に呼び込むことで我が国全体の投資を拡大させ、イノベーション力を高め、我が国の更なる経済成長につなげていく」観点から、御指摘の「外国資本による日本企業の経営参画」を含め、対日直接投資を促進しており、御指摘の「外国資本による日本企業の経営参画」については、一般論として申し上げれば、「国家安全保障戦略」(令和四年十二月十六日閣議決定)に記載している「我が国の自律性の向上、技術等に関する我が国の優位性、不可欠性の確保等」等の観点から、お尋ねの「経済安全保障」の確保に「貢献」し得るものであると考えている。

 また、安全保障上の懸念がある外国投資家による対日直接投資については、外国為替及び外国貿易法(昭和二十四年法律第二百二十八号)に基づいて適切に対応するなど、我が国の安全保障に万全を期する取組を進めており、こうした取組を通じて、御指摘の「外国資本による日本企業の経営参画」について、「国益との両立」を図っていく考えである。

三について

 経済産業省としては、御指摘の「PEファンド」による「対日M&A」については、「対日M&A活用に関する事例集」(令和五年四月十九日経済産業省貿易経済協力局投資促進課作成。以下「事例集」という。)に掲載しているとおり、日本企業において御指摘の「対日M&A」を受け入れたことにより、従業員数や売上の増加等の経営状況の改善を達成した多数の事例が存在すると考えられることから、御指摘のように「PEファンド」による「M&Aを推奨すれば、当該日本企業で働く労働者の多くが職を失い、その手当に国全体が追われることとなりながら、一方で企業そのものは転売の対象とされて「転売益」目当てで転がされてしまう可能性」が「極めて高い」とは考えていない。

四について

 経済産業省としては、事例集の作成に携わった「対日M&A課題と活用事例に関する研究会」の構成員の御指摘の「選定」に当たって、御指摘のように「日本企業や労働者の立場、利益」等を勘案しながら候補者の「精査」を行った上で、経済学、経済安全保障等の幅広い分野から、専門的知見を有する者を同研究会の構成員に任命する中で、事例集に法律やM&Aの実務に関する専門的知見を取り入れ、事例集を国際的な潮流を踏まえたものにするため、御指摘の「法律事務所」及び「M&A仲介会社」に所属する者を任命しており、また、事例集の作成過程において、御指摘の「情報の信頼性」についても「精査」を行っているため、「経済産業省は、日本企業の利益に立つのではなく、日本企業買収で利益を上げようとする外国資本のための手引きを外国資本側の代理人たちが作成することを手助けしている」との御指摘は当たらないと考えている。