質問主意書

第211回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一一第九七号
  令和五年六月二十日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員ながえ孝子君提出原子力災害に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員ながえ孝子君提出原子力災害に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねについては、平成二十七年八月二十六日の伊方地域原子力防災協議会において、「愛媛県広域避難計画」(平成二十五年六月十日愛媛県知事策定。以下「広域避難計画」という。)、「伊方町避難行動計画」(平成二十五年九月三十日愛媛県西宇和郡伊方町長策定)等を含む伊方地域の緊急時における対応が原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号。以下「原災法」という。)第六条の二第一項の規定に基づき定められた原子力災害対策指針(平成二十七年原子力規制委員会告示第五号)等に照らして具体的かつ合理的なものであることを確認し、平成二十七年十月六日の原子力防災会議において、内閣府がその結果を報告し、同会議としてこれを了承している。

二について

 御指摘の「佐田岬半島」を含む「伊方原子力発電所以西地域の住民」については、「愛媛県地域防災計画(原子力災害対策編)」(昭和五十二年二月十八日愛媛県防災会議策定。以下「防災計画」という。)における「PAZ及び予防避難エリア」(以下「PAZ等」という。)の住民に該当し、当該住民の避難については、広域避難計画において、原則として、放射性物質の放出が開始される前に防災計画に規定する原子力災害対策重点区域(以下「重点区域」という。)の外に位置する愛媛県伊予郡松前町に予防的に陸路で避難することが想定されているが、御指摘の「地震と原子力災害が複合的に起こった場合」を含め、自然災害により陸路での避難が困難である場合には、同県が船舶を確保した上で大分県又は愛媛県内に海路で避難することが想定されている。

 また、愛媛県知事から、災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号。以下「災対法」という。)第七十条第三項又は原災法第二十八条第一項の規定により読み替えて適用される災対法第七十四条の四に規定する要請がなされた場合には、お尋ねの「海上保安庁」が、また、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第八十三条第一項に規定する要請がなされた場合には、お尋ねの「海上自衛隊」が、御指摘の「船舶」の「確保」を含め、必要な対応を行うこととなる。

三について

 PAZ等の住民については、二についてで述べたとおり、広域避難計画において、放射性物質の放出が開始される前に陸路又は海路で避難することが想定されているところ、御指摘の「放射線防護施設」については、このような避難が可能な場合においても何らかの事情により避難できない者が退避するための施設として伊方地域において設置されているものであり、御指摘のように「このエリアの住民全員が退避できる」ように設置されているものではないと承知している。

 また、PAZ等の住民がこのような避難が行えない場合には、広域避難計画において、御指摘の「放射線防護施設」を含むPAZ等の近隣の屋内の退避施設又は自宅に退避することが想定されている。

四について

 お尋ねについては、「伊方地域の緊急時対応」(平成二十七年八月二十六日伊方地域原子力防災協議会取りまとめ)において、「関係市町は、防災行政無線、広報車、CATV、緊急速報メールサービス等を活用し、住民へ情報を伝達」すること、「伊方町は、避難行動中の住民などがリアルタイムで原子力災害に係る情報等(事象の進展状況、避難経路の指示、渋滞情報等)を得られるよう、臨時災害放送局(FM放送)を開設し、同町内全域に情報を発信」すること、「支援者の同行により避難可能な者は、支援者の車両、バス、福祉車両等で避難先へ移動」すること及び「避難の実施により健康リスクが高まる者は、支援者の車両又は福祉車両等で、近傍の放射線防護対策施設へ移動」することが想定されている。

 また、愛媛県西宇和郡伊方町において、御指摘の「地域の消防団の協力」に加えて、平素から、ワークショップの開催等を通じて、御指摘の「災害発生を伝え、避難ルートを指示し、足腰の弱っている住民を居住区から離れた港まで誘導」するために必要な人員の確保に努めているものと承知している。

五について

 お尋ねの「漁業者」については、PAZ等の住民と同様に、原則として、放射性物質の放出が開始される前に重点区域の外に避難することを想定している。

 また、PAZ等の住民が仮に放射性物質の放出が開始された後に重点区域の外に避難を行う場合には、原子力災害対策指針(平成三十年原子力規制委員会告示第八号)において、当該住民の身体の表面の汚染の程度に応じて、同指針に規定する「避難退域時検査」及び「簡易除染」を行うこととされているところ、お尋ねの「漁業者」が放射性物質の放出が開始された後に重点区域の外に避難を行う場合には、当該住民であるか否かにかかわらず、「漁業者」の身体の表面の汚染の程度に応じて、「避難退域時検査」及び「簡易除染」に準じた対応を行うことを考えている。

六について

 御指摘の「ある程度予測できる」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」については、愛媛県及び同県西宇和郡伊方町による原子力災害を想定したお尋ねの「避難ルート策定」及び「避難訓練」において使用されていないものと承知している。