質問主意書

第211回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一一第七一号
  令和五年五月十九日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員辻元清美君提出原子力発電所の再稼働と電気料金の関係に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員辻元清美君提出原子力発電所の再稼働と電気料金の関係に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の「申請された規制料金の内容」を含め、特定小売供給に係る料金その他の供給条件については、御指摘のとおり、電気事業法等の一部を改正する法律(平成二十六年法律第七十二号)附則第十八条第二項により、経済産業大臣において、同条第一項の認可の申請が同条第二項各号のいずれにも適合していると認めるときは、同条第一項の認可をしなければならないとされており、また、当該認可に当たっては、当該申請に対する審査(以下「審査」という。)を行い、御指摘の「査定方針」を作成していることから、政府として、当該認可について国民の理解が得られるよう説明することが重要であると認識している。

二について

 御指摘の令和四年十月五日の衆議院本会議における岸田内閣総理大臣の「原子力発電所の再稼働により、電力需給逼迫が緩和されるとともに、電力価格上昇が抑制される」との答弁については、原子力発電所の再稼働が進み、火力発電の燃料費が抑制されれば、電力料金の抑制に寄与するという趣旨で述べたものであり、御指摘のように「原発再稼働が電気料金引下げ効果を持つ」と答弁したものではない。

三について

 御指摘の「四十一・六九円/kWh」という数値については、御指摘の「申請資料」に記載された東京電力エナジーパートナー株式会社(以下「会社」という。)の他社購入電源費のうち原子力発電所に関する全ての費用を会社の原価算定期間である令和五年四月一日から令和八年三月三十一日までの間に一定期間稼働することを見込む一部の原子力発電所からの受電量で除して得たものと推定されるが、当該費用は、当該原価算定期間内に稼働することが見込まれないものを含めた会社が締結している受電契約等の対象となる全ての原子力発電所の固定費(以下「固定費」という。)を含んだものであるため、会社が原子力発電所からの受電量に比例して支払う金額ではなく、御指摘の「原子力購入電力単価」の必ずしも正確な試算ではないと考えている。

 御指摘の「二十一・八八円/kWh」という数値については、御指摘の「二〇二三年四月二十六日付資料」に記載された会社の他社購入電源費を会社の他社購入電力量で除して得たものと推定されるが、当該電源費及び当該電力量は会社の原価算定期間である令和五年四月一日から令和八年三月三十一日までの間に一定期間稼働することを見込む一部の原子力発電所からの受電分を含んだものであるため、御指摘の「原子力を除く他社購入電力単価」の正確な試算ではないと考えている。

四について

 御指摘の「原子力購入電力の単価」は、御指摘の「申請資料」に記載された会社の他社購入電源費のうち原子力発電所に関する全ての費用を会社の原価算定期間である令和五年四月一日から令和八年三月三十一日までの間に一定期間稼働することを見込む一部の原子力発電所からの受電量で除して得たものと推定されるが、当該電源費のうち原子力発電所に関する全ての費用は、固定費を含んだものである。他方、御指摘の「原価算定期間中に電力を市場で調達する場合の市場価格」については、卸電力取引所のスポット市場等の電力市場における取引価格を指すと考えられるが、固定費を含んでいない。会社においては、御指摘のように「電力を市場調達」するか否かにかかわらず、固定費を支出しているため、固定費を含めて算出された「原子力購入電力の単価」と固定費を含まない「原価算定期間中に電力を市場で調達する場合の市場価格」とを比較することは適切でないと考えており、お尋ねについてお答えすることは困難である。

五について

 御指摘の「東京電力エナジーパートナーが締結するこれらの原子力発電所の今回申請原価中の費用」については、お尋ねの「その額の適正性」を審査において確認しているところであるが、当該費用を「各費目に即してそれぞれ示」すことは、会社のみならず契約の相手方である事業者の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると考えており、お尋ねについてお答えすることは差し控えたい。

六について

 御指摘の「福島第一原発の廃止措置に関連する費用」については、令和五年五月十日に電力・ガス取引監視等委員会事務局が消費者庁の電気料金アドバイザー会合に提出した「前回会合でいただいた御指摘事項への御回答について②」において示したとおり、「安定化維持のために経常的に必要となる費用として、具体的には、放射線管理業務に係る費用や、建築・機械設備の点検・保守に係る費用などが織り込まれている」と認識しているところ、これらの費用については、「東京電力株式会社の供給約款変更認可申請に係る査定方針」(平成二十四年七月二十日物価問題に関する関係閣僚会議了承)において「原価算入を認める費用は、「中長期ロードマップ」のうち、プラントの安定状態維持・継続に係る経常費用に厳に限る」とされていることなどから、いずれも特定小売供給に係る料金の原価に含むことが認められるものであると考えており、お尋ねの「適正性」を審査において確認しているところである。また、「その額はいくらか」とのお尋ねについては、これを明らかにすることによって会社及び東京電力ホールディングス株式会社の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると考えており、お答えすることは差し控えたい。

 なお、会計検査院の令和三年度決算検査報告において、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所の「廃炉・汚染水・処理水対策に係る費用(概算額)」は令和三年度までの累計で約一兆七千十九億円とされているが、同発電所の廃止措置に係る費用の全てについて特定小売供給に係る料金の原価に含むことが認められるものではないと承知している。

七について

 御指摘の「柏崎刈羽原発六、七号機の再稼働に伴う値下げ効果」については、当該再稼働の具体的な状況等によって決定されるため、御指摘の「申請資料」に記載された「費用削減効果」の数値を「今回(二千二十三~二十五)」の「販売電力量」の数値で除して得たものと推定される御指摘の「〇・四七円/kWh程度」という数値については、御指摘の「柏崎刈羽原発六、七号機の再稼働に伴う値下げ効果」の必ずしも正確な試算ではないと考えている。

八について

 七についてで述べたとおり、御指摘の「〇・四七円/kWh程度」という数値については、御指摘の「柏崎刈羽原発六、七号機の再稼働に伴う値下げ効果」の必ずしも正確な試算ではないと考えられるため、御指摘の「申請資料」に記載された「標準的なご家庭の使用量」の数値に七で御指摘の「〇・四七円/kWh程度」という数値を乗じて得たものと推定される御指摘の「月百二十二円」という数値についても、御指摘の会社から電力を購入する「標準的な家庭一世帯当たりの柏崎刈羽原発六、七号機の再稼働による値下げ効果」の必ずしも正確な試算ではないと考えている。

九について

 御指摘の「申請資料」に記載された会社の他社購入電源費のうち原子力発電所に関する全ての費用については、固定費を含んだものであるが、固定費は、御指摘のように「原子力からの電力購入」を実際に行うか否かにかかわらず、会社において支出しているものであるため、当該電源費のうち原子力発電所に関する全ての費用を御指摘の「申請資料」に記載されている会社の販売電力量で除して得たものと推定される御指摘の「二・六一円」という数値については、御指摘の会社による「販売電力一kWh当たりの原子力からの電力購入費」の必ずしも正確な試算ではないと考えている。このため、御指摘の「申請資料」に記載された「標準的なご家庭の使用量」の数値に御指摘の「二・六一円」という数値を乗じて得たものと推定される御指摘の「月六百七十九円」という数値についても、御指摘の会社から電力を購入する「標準的な家庭一世帯当たりの原子力からの電力購入のための負担額」の必ずしも正確な試算ではないと考えている。

十及び十一について

 御指摘の「原発再稼働」については、「エネルギー基本計画」(令和三年十月二十二日閣議決定)に記載しているとおり、「いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ、国民の懸念の解消に全力を挙げる前提の下、原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める。その際、国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう、取り組む」ことを方針としており、東京電力ホールディングス株式会社柏崎刈羽原子力発電所の再稼働についても、原価算定期間中であるか否かにかかわらず、当該方針に基づいて取り組んでいく考えである。

十二について

 御指摘の「申請資料「規制料金値上げ申請等の概要について」」に記載された会社の他社購入電源費のうち原子力発電所に関する全ての費用から、御指摘の「申請資料「他社購入・販売電力量(原子力)について」」に記載された「再稼働による固定費の変動」及び「電力量料金(核燃料費等)」の合計額を差し引いて得た数値は、御指摘のとおり「三千三百六十一億円」となると承知しているが、今後、仮に、御指摘のように「原価算定期間内に柏崎刈羽原発六、七号機が再稼働できない」こととなった場合における「他社購入電力料に占める原子力分」については、その具体的な状況等によって決定されるため、一概にお答えすることは困難である。

十三について

 お尋ねの「なぜ増額するのか」については、定期検査に要する費用、安全対策や安全性の維持向上に向けた工事に伴う修繕費及び工事費等の増加によるものであると承知しているが、その「費目ごと」の「具体的」な理由については、これを明らかにすることにより、会社の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると考えており、お答えすることは差し控えたい。

十四について

 御指摘の「電力価格」については、御指摘のとおり、「原子力購入電力よりも市場調達をした方が安価であれば、原子力以外の電力を市場調達した方が「一層電力価格上昇が抑制される」」こととなるが、御指摘の「原子力以外の電力を市場調達」する場合の価格は火力発電の燃料費や需給のバランス等の様々な要素によって変動するものであることから、御指摘のような前提が成り立たないこともあり得ると考えている。