質問主意書

第211回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一一第七〇号
  令和五年五月十九日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員川田龍平君提出福島第一原発一号機ペデスタル損傷による原子炉倒壊の危険に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出福島第一原発一号機ペデスタル損傷による原子炉倒壊の危険に関する質問に対する答弁書

一、四及び五について

 お尋ねの「この問題」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、東京電力ホールディングス株式会社(以下「東京電力」という。)福島第一原子力発電所(以下「福島第一原発」という。)一号機の原子炉格納容器(以下「格納容器」という。)内のペデスタル(以下「ペデスタル」という。)の状況を踏まえた対応については、ペデスタルの耐震評価の結果にかかわらず、格納容器内は放射線量が高くペデスタルの補強を行うことは困難であると考えられることから、令和四年六月二十日の原子力規制委員会特定原子力施設監視・評価検討会(以下「監視・評価検討会」という。)第百回会合において、東京電力に対して、御指摘のような「ペデスタルにコンクリートを注入して補強するなど」の方策ではなく、ペデスタルの原子炉圧力容器を支持する機能が低下した場合の安全上の方策として、格納容器の損傷が拡大した際に起こり得る環境への影響をできる限り小さくする方策を検討するよう指示している。また、令和五年三月一日に改定した「東京電力福島第一原子力発電所の中期的リスクの低減目標マップ(令和五年三月版)」(令和五年三月一日原子力規制委員会改定)において、「格納容器内部の閉じ込め機能維持方針策定(水素対策含む)」を令和五年度中に達成すべき目標として定めた。その後、同年四月十四日の監視・評価検討会第百七回会合において、同年三月に観察されたペデスタルの状態を踏まえた東京電力による対応の検討状況を聴取したところであり、ペデスタル内部の状況に関する調査の進捗に応じた東京電力の取組に対する継続的な監視及び指導を行ってきている。また、東京電力については、監視・評価検討会第百回会合において指示された事項に関する検討を進めてきており、御指摘のように「対応が遅すぎる」とは考えていない。

二について

 御指摘の「RPVを上部で支えている二つのPCV(原子炉格納容器)・RPVスタビライザ」及び「両スタビライザを固定する遮蔽壁」の詳細な状況については、格納容器内の放射線量が高く調査を行うことが困難であることから、東京電力においてこれに関する情報を把握できておらず、政府として、お尋ねの「RPVを上部で支えている二つのPCV(原子炉格納容器)・RPVスタビライザはRPV内燃料のメルトダウン時に破損しているのではないか」及び「その健全性は両スタビライザを固定する遮蔽壁とともに確保されているのか」について承知していない。

三について

 御指摘の「ペデスタルの耐震性」については、御指摘の令和五年三月の調査を踏まえても、ペデスタルの損傷状態の全体が明らかになっておらず、妥当な前提条件を設定して評価を実施することは困難であり、また、評価を実施できたとしても、その結果にかかわらず、格納容器内は放射線量が高くペデスタルの補強を行うことは困難であるとの認識には変わりはないことから、ペデスタルの原子炉圧力容器を支持する機能が低下し、格納容器の損傷が拡大した際に起こり得る環境への影響をできる限り小さくするために、同年四月十四日の監視・評価検討会第百七回会合において、今後、ペデスタルの原子炉圧力容器を支持する機能の喪失の影響についての東京電力による考察及び格納容器内部の閉じ込めの機能を維持するための東京電力の方策を引き続き確認していくこととしている。また、お尋ねの「RPVとペデスタルの固有振動」については、格納容器内の放射線量が高く詳細な調査を行うことが困難であることから、東京電力においてこれに関する情報を把握できておらず、政府として承知していない。

六について

 御指摘の「RPVやペデスタルが倒壊しデブリ上部に落下した場合」には様々な状況が考えられることから、お尋ねについて一概にお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、東京電力において、ペデスタル内部の状況に関する調査の結果を踏まえ、安全かつ着実な福島第一原発の廃炉に向けて必要な対策が検討されていくよう、政府として、継続的な監視及び指導を行っていく考えである。

七について

 お尋ねの「RPV・ペデスタルの倒壊防止対策」については、一、四及び五についてで述べたとおり、ペデスタルの耐震評価の結果にかかわらず、格納容器内の放射線量が高くペデスタルの補強を行うことは困難であると考えている。また、福島第一原発の各号機の使用済燃料プールに貯蔵されている使用済燃料の取出し及び乾式貯蔵については、現在、東京電力において、福島第一原発における全号機の使用済燃料プールからの使用済燃料の取出しを令和十三年度までに完了することを目指して、乾式貯蔵等が進められているところであると承知している。引き続き、東京電力において、安全かつ着実な福島第一原発の廃炉に向けて必要な対策が検討されていくよう、政府として、継続的な監視及び指導を行っていく考えである。