質問主意書

第211回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一一第六四号
  令和五年五月十二日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員神谷宗幣君提出経口中絶薬に対する懸念と性教育に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員神谷宗幣君提出経口中絶薬に対する懸念と性教育に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねについては、メフィーゴパック(以下「本剤」という。)についての独立行政法人医薬品医療機器総合機構の審査報告書(以下「審査報告書」という。)において、「本剤の人工妊娠中絶に関する有効性は、本邦における外科的処置による人工妊娠中絶の成功割合として想定される値(概ね百パーセント)には至らないが、本邦の医療現場に受け入れられる程度には達していると判断できる」とされており、審査報告書等を踏まえ、薬事・食品衛生審議会(以下「審議会」という。)において議論し、本剤の製造販売の承認を行ったものであることから、政府としても審査報告書と同様に認識している。

二について

 御指摘の「副作用」については、本剤の添付文書において、「下腹部痛」及び「嘔吐」は「十パーセント以上」、「悪心」及び「発熱」は「一~十パーセント未満」、「重度の子宮出血」は「〇・八パーセント」とされているところ、審査報告書において、「安全性は、海外で報告されている副作用について適切な注意喚起を行うこと、並びに本剤の使用に際して注意すべき事象である子宮出血、感染症及び下腹部痛に関連する有害事象について適切なリスク最小化策を講じた上で、それらが遵守されることで、臨床的に大きな問題とならない程度に管理可能であり、得られる有効性を踏まえると、臨床的に許容可能と判断できる」とされており、審査報告書等を踏まえ、審議会において議論し、本剤の製造販売の承認を行ったものであることから、政府としても審査報告書と同様に認識している。

三について

 お尋ねの「検証」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「身体的」及び「精神的」負担については、その時々の個々人の心身の状況、価値観等の様々な要因が複雑に絡み合っていることから、本剤の使用による場合と手術による場合について、一概に比較することは困難であると考えている。いずれにせよ、医師が十分な説明を行った上で、本剤を適切に使用することが必要と考えている。

四について

 お尋ねについては、「ミフェプリストン及びミソプロストール製剤の使用にあたっての留意事項について(依頼)」(令和五年四月二十八日付け薬生薬審発〇四二八第五号・こ成母第五十四号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長及びこども家庭庁成育局母子保健課長連名通知。以下「通知」という。)において、「本剤については適切な使用体制のあり方が確立されるまでの当分の間、入院可能な有床施設(病院又は有床診療所)において使用することとする。また、ミソプロストール投与後は、胎嚢が排出されるまで入院または院内待機を必須とする。この場合における「適切な使用体制のあり方が確立されるまでの当分の間」については、承認後に十分な調査研究を実施し、その中で適切な医療連携体制のあり方について評価を行い、その結果に基づき検討・判断することとする」と示しているところである。

五について

 人工妊娠中絶に伴う負担については、個々のケースにおける所要時間や精神的負担及び身体的負担等に応じて様々であると考えており、本剤の使用による場合と手術による場合の負担の差異について一概に見解を述べることは困難である。

六について

 本剤についての適切な使用の在り方については、通知における「適切な使用体制のあり方が確立されるまでの当分の間」において検討していく考えであることから、現時点でお尋ねについてお答えすることは困難である。

七について

 お尋ねの「望まない妊娠を予防するための教育」の意味するところが必ずしも明らかではないが、学校における性教育については、例えば、高等学校学習指導要領(平成三十年文部科学省告示第六十八号)の保健体育科の解説である「高等学校学習指導要領(平成三十年告示)解説保健体育編 体育編」(平成三十年七月文部科学省)において、「受精、妊娠、出産とそれに伴う健康課題について理解できるようにするとともに、健康課題には年齢や生活習慣などが関わることについて理解できるようにする。また、家族計画の意義や人工妊娠中絶の心身への影響などについても理解できるようにする」と記述するなど、児童生徒の発達段階に応じて適切に指導することとしており、これを踏まえ、高等学校では、避妊法や人工妊娠中絶等について記述されている教科書を用いた指導等が行われているものと承知している。文部科学省においては、妊娠、出産等を含む児童生徒の健康問題を総合的に解説した教材を作成しており、その活用を促す取組を行うなどして、指導の充実に努めてまいりたい。

八について

 お尋ねの意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、予期せぬ妊娠等により、不安を抱える若年妊婦等を支援するため、都道府県、指定都市及び中核市において若年妊婦等への支援に積極的なNPO等に委託し、巡回や自宅訪問による支援、SNSを活用した相談支援等を行う事業に対する補助を行っているほか、若年層を対象とした妊娠や性感染症等に関するウェブサイトである「スマート保健相談室」において、相談窓口の一覧等を掲載しているところであり、また、御指摘の「青少年に対する妊娠・中絶に関する性教育」については、七についてでお答えしたとおりである。