第211回国会(常会)
内閣参質二一一第六一号 令和五年五月十二日 内閣総理大臣 岸田 文雄
参議院議長 尾辻 秀久 殿 参議院議員牧山ひろえ君提出認証ADRで成立した和解に基づく強制執行を可能とする制度の創設等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員牧山ひろえ君提出認証ADRで成立した和解に基づく強制執行を可能とする制度の創設等に関する質問に対する答弁書 一について 御指摘の「認証ADRの実施件数」及び「認証ADR事業者の取扱件数」並びに「平成二十三年頃までは順調な伸びを示していたが、その後停滞している」の意味するところが必ずしも明らかではないが、認証紛争解決事業者の紛争受理件数は、平成二十三年度から令和元年度までの間において、約千件から約千七百件までの間で推移し、令和二年度は約千百件であった。 認証紛争解決事業者の紛争受理件数が増加していない原因は、認証紛争解決手続において成立した和解に基づく強制執行の申立てをすることができないこと、認証紛争解決手続の存在や特長等が国民に十分に認知されていないこと等が考えられる。 政府としては、こうした点を踏まえて、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律(令和五年法律第十七号。以下「改正法」という。)により、認証紛争解決手続において成立した和解に基づく民事執行を可能とする制度を創設するとともに、法務省ホームページへの認証紛争解決手続に関する情報の掲載やパンフレットの配布等による周知・広報等を実施している。 二について 御指摘の「ADRの取扱件数の現状」の意味するところが必ずしも明らかではないが、認証紛争解決事業者の紛争受理件数については一についてで述べたとおりであり、認証紛争解決事業者以外の民間紛争解決手続等を行う事業者の紛争受理件数については、政府として網羅的に把握していない。 一般に、裁判外紛争解決手続は、民間事業者が実施するものも含め、第三者の専門的な知見を反映して紛争の実情に即した迅速な解決を図る手続として重要なものと認識している。 三について 民間紛争解決手続において成立した和解に基づく民事執行を可能とするためには、当該手続の公正かつ適正な実施が制度上担保され、かつ、それが広く国民に周知されている必要があると考えられるところ、認証紛争解決手続については、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成十六年法律第百五十一号)において、認証紛争解決手続を行う認証紛争解決事業者に係る認証の基準を定めるとともに、認証紛争解決事業者の名称等の公示を義務付ける等の措置が講じられていることから、改正法による改正後の裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(以下「新法」という。)は、認証紛争解決手続において紛争の当事者間に成立した和解であって、当該和解に基づいて民事執行をすることができる旨の合意がされたもの(以下「特定和解」という。)について、当事者の申立てにより、裁判所が当該特定和解に基づく民事執行を許す旨の決定をすることとしている。 四について 新法第二条第五号は、特定和解を「認証紛争解決手続において紛争の当事者間に成立した和解であって、当該和解に基づいて民事執行をすることができる旨の合意がされたもの」と定義しているが、これは、認証紛争解決手続において紛争の当事者間に成立した和解に基づく強制執行を可能とするためには、当事者の手続保障を図る観点から、当該和解に基づく民事執行を受け入れるか否かについて、当事者がその意思に基づき判断すべきものとする必要があると考えられることによるものである。 五について 新法第十一条第二項において、認証紛争解決事業者に義務付けられている利用者等に対する情報提供について、現行の事務所における掲示による方法によるほか、インターネットの利用その他の方法により公表する方法によることもできることとした趣旨は、情報通信技術の進展により、紛争解決手続の全部又は一部をオンライン上で行う認証紛争解決事業者が増加し、かつ、多くの国民がインターネットを利用している現状に鑑み、認証紛争解決手続の多様性を踏まえつつ、利用者等に対する認証紛争解決事業者の業務に関する情報提供の一層の適正化を図ることとするためである。 |