質問主意書

第211回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一一第五八号
  令和五年五月九日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員田村智子君提出電子版お薬手帳の利用者の権利強化や事業の安定性に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員田村智子君提出電子版お薬手帳の利用者の権利強化や事業の安定性に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「データの削除や利用停止、プロファイリングの停止などが本人の権利として保障されるように規制」の意味するところが必ずしも明らかではないが、患者の薬剤服用歴その他の情報を電磁的記録をもって一元的かつ経時的に管理できる手帳(以下「電子版お薬手帳」という。)の利用者は、個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号。以下「個人情報保護法」という。)第三十五条の規定により、電子版お薬手帳の運営事業者に対し、当該利用者が識別される保有個人データ(個人情報保護法第十六条第四項に規定する保有個人データをいう。以下同じ。)の取扱いにより当該利用者の権利又は正当な利益が害されるおそれがある場合等には、当該保有個人データの利用の停止若しくは消去又は第三者への提供の停止を請求することができるなど、個人情報保護法により、その権利利益の保護が図られていると考えているところである。個人情報保護法の規定については、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的として定められたものであるところ、電子版お薬手帳を運営する事業に関し、個人情報保護法の規定に基づくものに加えて利用者の個人情報の保護に関する更なる措置を講ずることについては、利用者の権利利益の更なる保護の必要性と当該措置による電子版お薬手帳を運営する事業への影響を比較衡量し、慎重に検討する必要があると考えている。

二について

 電子版お薬手帳については、民間事業者が提供するサービスであるところ、その性質上、中長期にわたり継続的に利用されることが望ましいことから、「電子版お薬手帳ガイドラインについて」(令和五年三月三十一日付け薬生総発〇三三一第一号厚生労働省医薬・生活衛生局総務課長通知)において、電子版お薬手帳の運営事業者が留意すべき事項として、「事業に参入する際には中長期的なサービスの提供を前提とし、やむを得ない事情によりサービスの提供を停止する際には、十分な期間をとって事前に関係者との調整や継続に向けた再検討を行うなど適切な対応をとった後に通知する、停止後の移行先等を準備する、十分なサービスの移行期間を確保する等の対応をとる必要がある」と示しているところである。

 一方、御指摘のように「事業者の財務状況、事業実施体制などに規制を設ける、簡単に事業を停廃止することができないよう規制を行う」ことについては、電子版お薬手帳は、公的医療保険制度において活用されるものであっても、あくまで民間事業者が創意工夫を生かして提供するサービスの一つであることを踏まえれば、電子版お薬手帳の運営事業者に対して、事業の安定性や継続性を確保するための規制を設けることについては、慎重に検討する必要があると考えている。