質問主意書

第211回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一一第五一号
  令和五年四月十八日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員神谷宗幣君提出日本政府の半導体政策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員神谷宗幣君提出日本政府の半導体政策に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の「米国政府や我が国の民間シンクタンク」の分析については、様々な仮定を置いて行われたものと承知しており、その具体的な手法については承知していないが、自動車の生産は各種の部品の需給その他様々な要因に影響されることから、半導体の供給不足が自動車の生産に及ぼす影響について定量的にお示しすることは困難である。なお、自動車産業を含む国内産業への半導体の安定的な供給に向けては、半導体の国際的な需給の動向等を適切に把握しつつ、国内の製造基盤強化に向けた補助金による支援等の施策を戦略的に講じてきているところである。

二の1について

 お尋ねの「国内企業」の意味するところが必ずしも明らかではないが、特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律(令和二年法律第三十七号。以下「法」という。)に基づき事業者から法第十一条第一項に規定する特定半導体生産施設整備等計画(以下「計画」という。)の認定の申請があった場合には、いずれの国の事業者であるかにかかわらず、当該申請に係る計画が同条第三項各号のいずれにも適合する場合に同条第一項の認定(以下「認定」という。)をするものであるところ、同条第三項各号においては、例えば、外国為替及び外国貿易法(昭和二十四年法律第二百二十八号)をはじめとする国内関係法令を遵守すること、特定半導体等(同項第二号に規定する特定半導体等をいう。以下同じ。)の生産が一定の期間以上継続的に行われると見込まれるものであること、特定半導体等の生産能力を強化するための投資及び研究開発等が行われると見込まれるものであること、不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)に基づく保護を受けるために必要な対策を講じているなど特定半導体等に係る技術上の情報を適切に管理するための体制が整備されていること等を認定の要件としている。

二の2について

 御指摘の「日本企業への優先的な供給に対し拘束力を持ったスキーム」の意味するところが必ずしも明らかではないが、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定(平成六年条約第十五号)附属書一Aの千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定第十一条は、食糧その他輸出締約国にとって不可欠な産品の危機的な不足を防止するために一時的に課すものであること等の例外的な場合を除き、他の締約国への輸出について、関税その他の課徴金以外の制限を課すことを原則として禁止していることから、法は、認定を受けた事業者に対して国内向けに優先的に出荷する義務を課してはいない。その上で、法第十一条第三項各号においては、特定半導体等の需給がひっ迫した場合における増産を含む国内における安定的な生産に資する取組が行われると見込まれること等を認定の要件としているところである。

二の3について

 法第三条第二項は、「特定半導体生産施設整備等は、・・・国際的に特定半導体の生産能力が限られている状況においてもその需給の変動に対応できるよう我が国の技術の向上により特定半導体の国内における安定的な生産を確保すること、及び我が国における特定半導体の生産に関係する産業の発展に資することを旨とし、・・・行うものとする。」と規定しているところ、御指摘の事業者に係る計画の認定についても、我が国における半導体関連産業の集積や人材の育成等に資するものであり、同項の考え方に沿っているものであると考えている。また、法は、認定を受ける事業者がいずれの国の事業者であるかを問うものではない。

二の4について

 特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律施行令(令和二年政令第二百五十六号)第二条は、特定半導体(法第二条第四項に規定する特定半導体をいう。以下同じ。)の性能として、演算を行う半導体については、トランジスター上に配置される導線の中心の間隔が最も短い箇所において百ナノメートル以下であるものと規定しており、また、法第六条第一項の規定に基づく特定高度情報通信技術活用システムの開発供給等の促進に関する指針(令和二年総務省・財務省・経済産業省告示第一号)においては、法第二条第五項に規定する特定半導体生産施設整備等について、演算を行う半導体の生産について特定の材料を用いて行うこと等を求めている。御指摘の「レガシー半導体」に係る生産施設の整備等に係る計画が法に基づく支援の対象となるかどうかについては、これらの要件を満すかを個別に判断する必要があると考えている。

二の5について

 御指摘の「供給過剰」の意味するところが必ずしも明らかではないが、法第二条第四項は、特定半導体について、「国際的に生産能力が限られていることその他の事由により国内で安定的に生産することが特に必要なものとして政令で定める種類ごとに政令で定める性能を有するもの」と規定しているところ、「特に必要なもの」であるかどうかについては、半導体に係る需給や技術の動向その他様々な要素を勘案した上で、政令で具体的な要件を定めているところであり、加えて、二の3についてで述べたとおり、法は、認定を受ける事業者がいずれの国の事業者であるかを問うものではない。

 また、当該政令を定めるに当たっては、我が国の産業の実態を踏まえるべく事業者から提供を受けた情報を活用して検討を行っている。

 その上で、お尋ねの「対応策」については、仮定の質問であり、お答えすることは差し控えたいが、一般論として申し上げれば、特定半導体については、事業者が需給の動向を適切に踏まえつつ生産を行い、国内で安定的に供給されることが重要であると考えている。