質問主意書

第211回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一一第五〇号
  令和五年四月十四日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員村田享子君提出非営利型一般財団法人に対する課税の在り方に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員村田享子君提出非営利型一般財団法人に対する課税の在り方に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の「然るべき金額」及び「運用益を得られる収入」の意味するところが必ずしも明らかではなく、また、一般財団法人の行う事業の内容を網羅的に把握していないため、お尋ねの「これらの収入以外に然るべき金額の運用益を得られる収入があると考えているのか、あるとすれば何を想定しているのか」について、お答えすることは困難である。

二について

 法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第五条において、内国法人に対しては、各事業年度の所得について、各事業年度の所得に対する法人税を課することとされており、所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第百七十四条において、内国法人が支払を受ける利子、配当等に所得税を課することとされている。

 内国法人については、法人税法第六十八条第一項において、法人税額から利子及び配当等に係る所得税額を控除することとされているが、これは、法人税と所得税の調整を行うためである。このため、御指摘の「こうした仕組みを前提にすれば、法人の所得に対する課税は原則として法人税であり」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘のように「所得税は課されないものと解釈できる」ものではないと考えている。

三について

 お尋ねの「この「法人税は非課税である」という意味は、法人税率が〇%なのか」及び「法人税は非課税であるならば、・・・その所得や収入には課税されないという理解でよいか」の意味するところが必ずしも明らかではないが、法人税法第六条において、公益法人等の収益事業(同法第二条第十三号に規定する収益事業をいう。以下同じ。)から生じた所得以外の所得(以下「収益事業外所得」という。)については、各事業年度の所得に対する法人税を課さないこととされていることから、収益事業外所得又は当該収益事業外所得に係る御指摘の「収入」の多寡にかかわらず、当該収益事業外所得を法人税の課税標準とし、これに税率を乗じて法人税額が算出されることはない。

四の1について

 公益財団法人及び非営利型一般財団法人(法人税法第二条第九号の二に規定する非営利型法人のうち、一般財団法人に該当するものをいう。以下同じ。)については、事業を行って利益を稼得することや、その利益を構成員等に分配することを目的としない法人であると考えられることから、同法第五条及び第六条において、営利企業と競合する収益事業から生じた所得には法人税を課し、収益事業外所得には法人税を課さないこととされているものと承知している。

 また、公益法人(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成十八年法律第四十九号)第二条第三号に規定する公益法人をいう。)が行う公益目的事業に係る活動が果たす役割の重要性に鑑み、当該活動を促進しつつ適正な課税の確保を図る観点から、公益財団法人については、所得税法第十一条第一項の規定により、支払を受ける利子、配当等には所得税を課さないこととされているものと承知している。

四の2について

 所得税については、所得税法第二百十二条において、内国法人に対して利子、配当等の支払をする者は、その支払の際、当該利子、配当等について所得税を徴収し国に納付しなければならないこととされている。

 法人税については、法人税法第五条において、内国法人に対しては、各事業年度の所得について、各事業年度の所得に対する法人税を課することとされているところ、非営利型一般財団法人については、同法第四条において、法人税の納税義務は収益事業を行う場合等に限られることとされており、同法第六条において、収益事業外所得には法人税を課さないこととされている。

 また、内国法人が支払を受ける利子、配当等については、同法第六十八条第一項において、利子及び配当等に係る所得税額について法人税額から控除することとされている。一方、当該利子及び配当等が、非営利型一般財団法人の収益事業外所得である場合は、当該収益事業外所得には法人税を課さないこととされていることから、同条第二項の規定に基づき、当該利子及び配当等に係る所得税額の控除も行われないこととされている。

 したがって、内国法人が支払を受ける利子、配当等については、法人税と所得税の調整を行うため、確定申告の際に当該利子及び配当等に係る所得税額を法人税額から控除するが、非営利型一般財団法人の収益事業外所得については、同様の調整を行う必要がないことから、控除は行わないこととされているものと承知している。

四の3について

 お尋ねについては、四の1について及び四の2についてで述べたとおりであり、「法的公平性を欠く」ものではないと考えている。

五及び七の中段について

 五のお尋ねについては、御指摘の「政府の税制調査会基礎問題小委員会非営利法人課税ワーキンググループが取りまとめた「新たな非営利法人に関する課税及び寄附金税制についての基本的考え方」」においては、「公益法人等の場合、利子・配当等の金融資産収益に対する課税については、収益事業に属するものを除き、法人税が非課税とされている。金融資産収益については、会費や寄附金収入とは異なり、公益法人等が事業活動を行う中で新たに発生した所得であって、経済的価値においては現在収益事業とされている金銭貸付業から生じた所得と同じであること等から一定の税負担を求めるべきとの考え方がある。他方、金融資産収益は、公益活動を支える不可欠な財源であり、政策的な配慮が引き続き必要であるとの考え方もある」との意見が示されており、こうした意見を踏まえて総合的に検討して、御指摘の「税制改正」が行われたものである。このため、御指摘の「制度改正」の意味するところが明らかではないが、「税制調査会で出された意見が反映されないまま」「税制改正が行われた」との御指摘は当たらないと考えている。

 また、七の中段のお尋ねについては、御指摘の「税制改正」に当たっては、「新たな非営利法人に関する課税及び寄附金税制についての基本的考え方」(平成十七年六月税制調査会基礎問題小委員会非営利法人課税ワーキング・グループ取りまとめ)などの資料を検討している。

六について

 前段のお尋ねについては、収益事業においては益金に算入される性質の収益や損金に算入される性質の損失であったとしても、非営利型一般財団法人の収益事業外所得については、法人税を課さないこととなり、課税所得の計算上、関連する益金も損金も計上されない。このような仕組みは、「課税の公平性を欠くばかりか、合理性もない」ものではないと考えている。

 後段のお尋ねについては、「申告納税の義務と権利を有するにもかかわらず、非営利型一般財団法人にはそれが許されない」の意味するところが必ずしも明らかではないが、非営利型一般財団法人に係る税制上の取扱いについては四の2についてで述べたとおりである。

七の前段及び後段について

 前段のお尋ねについては、御指摘の「「非営利型一般財団法人の利子・配当収入の徴税事件」」の意味するところが明らかではないが、一般論として、租税法の定立の適否が争われる訴訟において、御指摘のとおり主張することはある。

 後段のお尋ねについては、租税法の定立に係る合憲性に関する裁判所の判断については、政府としては、昭和六十年三月二十七日最高裁判所大法廷判決において判示された内容が、その後の租税法の定立の適否が争われた訴訟においても踏襲されていると理解しており、また、当該判示された内容は、御指摘の「「租税の定立」は国家統治の基本に関する極めて高度の政治性を有する行為(統治行為)であり、よって裁判所の司法権の対象ではない」という見解とは異なるものと理解している。

 また、お尋ねの「立法府」の見解については、政府としてお答えする立場にない。