質問主意書

第211回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一一第四〇号
  令和五年三月二十八日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員神谷宗幣君提出農林水産省、政府系企業による昆虫食推進に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員神谷宗幣君提出農林水産省、政府系企業による昆虫食推進に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の「世界の人口爆発を要因とするたんぱく質不足」が我が国に与える影響については、特段の分析を行っていない。

二について

 御指摘の「日本人の体質に合った食生活の構築」の意味するところが必ずしも明らかではないが、我が国において食用の昆虫の摂取によって健康に対する影響が生じたという具体的な事例は承知していない。他方、厚生労働省においては、「「昆虫食」における大規模生産等産業化に伴う安全性確保のための研究」を令和五年度の厚生労働科学研究費補助事業の公募課題としており、また、農林水産省においては、食用の昆虫に含まれる有害物質の情報収集及び当該有害物質の管理手法に関する研究事業を実施するため、令和五年度予算において、必要な経費を計上している。

 これらの研究結果も参考にしつつ、厚生労働省及び農林水産省において、食用の昆虫の摂取による健康に対する影響について情報の収集、整理等を行い、必要に応じて、食品安全委員会において、食品安全基本法(平成十五年法律第四十八号)第十一条第一項に規定する食品健康影響評価を実施してまいりたい。

三について

 御指摘の「昆虫由来食品」及び「現在の研究到達度」の意味するところが必ずしも明らかではないが、農林水産省が立ち上げた「フードテック官民協議会」による「フードテック推進ビジョン」及び「ロードマップ」(令和五年二月二十一日)については、パブリックコメントを実施し、広く国民から意見を募集した上で策定したものであり、御指摘の「十分な周知と議論」をしてきたものと考えている。引き続き、国民の声を丁寧に聞き、政策に反映させてまいる所存である。

四について

 お尋ねの「市販食品として流通している昆虫食品、食材の種類、量」については、網羅的には把握していないが、例えば、昆虫を使用した煮物や菓子類が販売されていると承知している。また、お尋ねの「食品安全上のチェックなど」の意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、人の健康を損なうおそれのある食品又は添加物については、食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)第六条の規定によりその販売等が禁止されており、当該規定の遵守状況については、一義的には、食品又は添加物を販売し、又は販売の用に供するために、採取し、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列する者が確認する責務を負う。また、国にあっては同法第二十三条第一項の規定に基づく輸入食品監視指導計画に基づき、適切に輸入食品等の監視指導を行っており、都道府県、保健所を設置する市及び特別区にあっては同法第二十四条第一項の規定に基づく都道府県等食品衛生監視指導計画に基づき、適切に監視指導を行っているものと承知している。この枠組みは、御指摘の「市販食品として流通している昆虫食品、食材」についても適用される。

五について

 御指摘の「日本人が昔から食べてきた食べ物」及び「優先して行うべき課題」の指すところが明らかではないが、御指摘の「おからの有効活用」については、おからは主に飼料及び肥料の原料として利用されていると承知しており、また、政府としては、生産者団体等が定める規格に適合しないことを理由とする野菜の廃棄を削減することにも資するよう、こうした野菜の産地における加工施設の整備等への支援を行っているところであり、さらに、食品ロスの削減については、「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」(令和二年三月三十一日閣議決定)において、「商慣習見直しとしては、食品製造業者と、食品卸売・小売業者の連携の下、賞味期限表示の大括り化(年月表示・日まとめ表示)、賞味期限の延長、厳しい納品期限の緩和(取組企業や実施品目の拡大)を一体的に促進する」としていること等を踏まえ、引き続き、更なる食品ロスの削減に向けて取り組んでまいりたい。

六について

 食品表示法(平成二十五年法律第七十号)第四条第一項の規定により定められた食品表示基準(平成二十七年内閣府令第十号)第三条第一項の表の原材料名の項の1の一において、「使用した原材料」を「原材料に占める重量の割合の高いものから順に、その最も一般的な名称をもって表示する」こととされており、御指摘の「コオロギ」が原材料として含まれる場合には、その一般的な名称を表示することが必要である。

 また、同項の1の二の「二種類以上の原材料からなる原材料(以下「複合原材料」という。)を使用する場合」については、同項の1の二のイにおいて、「複合原材料の名称の次に括弧を付して、当該複合原材料の原材料を当該複合原材料の原材料に占める重量の割合の高いものから順に、その最も一般的な名称をもって表示する。ただし、当該複合原材料の原材料が三種類以上ある場合にあっては、当該複合原材料の原材料に占める重量の割合の高い順が三位以下であって、かつ、当該割合が五パーセント未満である原材料について、「その他」と表示することができる。」こととされ、また、同項の1の二のロにおいて、「複合原材料の製品の原材料に占める重量の割合が五パーセント未満である場合又は複合原材料の名称からその原材料が明らかである場合には、当該複合原材料の原材料の表示を省略することができる。」こととされており、御指摘の「コオロギ」が複合原材料の原材料として使用される場合には、その一般的な名称が表示されないこともあり得る。