質問主意書

第211回国会(常会)

質問主意書

質問第一三六号

「難民該当性判断の手引」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年六月二十日

牧山 ひろえ


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   「難民該当性判断の手引」に関する質問主意書

一 我が国の難民認定者数が少ない大きな原因は、現行の出入国管理及び難民認定法上、難民の定義として「難民条約の適用を受ける難民」とあるだけで難民認定の基準が存在しないため、難民認定が恣意的・不透明に行われていることにある。出入国在留管理庁は、難民認定制度に関する専門部会から難民該当性に関する規範的要素を一般化・明確化すべきとの提言を受け、本年三月「難民該当性判断の手引」を策定・公表した。この手引は、難民条約上の迫害理由の一つである「特定の社会的集団の構成員であること」の内容として、性的マイノリティであることやジェンダーによる差別的取扱いを明記するなど、新しい内容も含まれるが、齋藤法務大臣は、手引を公表した日の記者会見で、認定率の上昇や難民の認定範囲の拡大には否定的な見解を示した。

 この「難民該当性判断の手引」は、今までの難民認定の基準を変えるものなのか否か、また、これによって難民に認定されやすくなるのか。政府の見解を示されたい。

二 「難民該当性判断の手引」によると、「迫害」とは、「生命、身体又は自由の侵害又は抑圧及びその他の人権の重大な侵害を意味」するとあり、生命や身体の自由以外の「その他の人権」に対する侵害を含んでいるが、従来より、我が国では迫害を生命と身体の自由に限定する傾向が強いとの指摘がある。そして、手引の迫害についての記述の続きには、「主に、通常人において受忍し得ない苦痛をもたらす攻撃ないし圧迫であって、生命又は身体の自由の侵害又は抑圧をいうと考えられる」とあり、生命や身体の自由を中心に考えていると言わざるを得ない。「その他の人権の重大な侵害」としては、生活手段の剥奪や精神に対する暴力等が例示されているのみであるが、難民認定申請者の参考となるような具体例をもっと挙げるべきではないか。この点について政府の見解を示されたい。

三 「難民該当性判断の手引」は、法律の根拠に基づいて作られたものではなく、出入国在留管理庁がこれまでの実務や裁判例を明文化したものに過ぎない。難民認定判断の透明性確保のためには、難民認定の基準を法律上規定する必要があると考えるが、これに対する政府の見解を示されたい。

  右質問する。