質問主意書

第211回国会(常会)

質問主意書

質問第一三四号

滞在資格を有しない外国人の前科についての取扱いに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年六月二十日

牧山 ひろえ


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   滞在資格を有しない外国人の前科についての取扱いに関する質問主意書

 二〇二三年五月十二日の本会議における私の代表質問に対し、齋藤法務大臣より「反社会性の高い犯罪を犯した者」の中に出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)違反も含まれる旨の発言があった。

 出入国在留管理庁の資料では「送還忌避者」のうち、その約三割が「前科がある者」として、治安上の観点から排除すべき存在と印象付けている。そう聞くと一般人は危険な殺人犯や強盗犯が数多く我が国に流入しているかのような印象を持つ人も多いだろうが、この「前科がある者」とされる約三割の中には、刑法犯ではない、入管法違反も多数含まれている。入管法違反を軽く見るわけではないが、殺人や強盗等、社会的・道義的に禁じられる自然犯とは明らかに罪責が異なると考える。そこで、以下質問する。

一 オーバーステイ等の入管法違反に関して、難民条約第三十一条第一項では「締約国は、その生命または自由が第一条の意味において脅威にさらされていた領域から直接来た難民であって許可なく当該締約国の領域に入国しまたは許可なく当該締約国の領域内にいるものに対し、不法に入国しまたは不法にいることを理由として刑罰を科してはならない。ただし、当該難民が遅滞なく当局に出頭し、かつ、不法に入国しまたは不法にいることの相当な理由を示すことを条件とする」としている。

 この難民条約の趣旨からすると、難民申請者が非正規の手段で入国や滞在をしていることのみをもって、「反社会性の高い犯罪」とするのは不適切ではないか。難民条約第三十一条第一項との関係も説明に加えた上で、政府の見解を示されたい。

二 そもそも国連犯罪防止刑事司法会議で採択された京都宣言では、「加害者の社会復帰を促進するためにコミュニティにおける更生環境を推進する。」とされている。

1 この方向性からすると、「前科者は送還すれば良い」とも捉えられるような政策は、前記の京都宣言等における方針に反すると思われるが、政府の認識如何。

2 そもそも前科者については、排除よりも更生と社会復帰を優先するこの宣言の対象には日本人ばかりではなく、外国人も含まれるという理解でよいか。政府の見解を示されたい。

  右質問する。