質問主意書

第211回国会(常会)

質問主意書

質問第一二八号

日本共産党埼玉県議会議員団による県営公園における「水着撮影会」の中止を求める申入れによって水着撮影会が中止に追い込まれたことの背景にある諸問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年六月二十日

浜田 聡


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   日本共産党埼玉県議会議員団による県営公園における「水着撮影会」の中止を求める申入れによって水着撮影会が中止に追い込まれたことの背景にある諸問題に関する質問主意書

 日本共産党埼玉県議会議員団の公式ホームページによると、令和五年六月八日、日本共産党埼玉県委員会ジェンダー平等委員会と日本共産党埼玉県議会議員団は県営公園における水着撮影会(以下「本件水着撮影会」という。)の貸出し中止を埼玉県に求める申入れを行った、とある。これを受けて、埼玉県からの委託を受け指定管理者となっている公益財団法人埼玉県公園緑地協会(以下「公園緑地協会」という。)は、本件水着撮影会の主催者(公園緑地協会から当該公園の使用許可処分を受けていた者をいう。以下「本件主催者」という。)に対し、六月の開催中止を求め、今後の水着撮影会は全て中止することを申し入れた。これを受け、本件主催者は、本件水着撮影会の中止を決定した。その後、埼玉県は公園緑地協会に対し、明確な許可条件が定められていない施設において、他の施設の条件を当てはめイベントを中止させることや、条件策定後に違反が認められない者に対し中止させることは適切ではない旨伝えるとともに、中止要請を撤回すべき旨を指導した。しかしながら、一度中止をアナウンスしたイベントを再び開催することは、各種払い戻しのやり直しや、設営スタッフの確保等の関係から現実的ではないため、本件水着撮影会は、結局中止のままとなった。本件主催者や本件水着撮影会の出演者、参加予定者はもちろん、本件水着撮影会の出演者やスタッフ用に弁当を作るはずであった業者にも多大な損害が及んでおり、公園緑地協会が、埼玉県行政手続条例第三十四条第二項各号を無視して、なんら法令上の根拠を示さぬまま本件水着撮影会の中止を求めたことは、余りに安直すぎるというべきであるし、公園緑地協会が、埼玉県行政手続条例第三十二条にいう「当該申請をした者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならない。」規定を遵守していたなどとは、到底言えないであろう。

 右を踏まえて、以下質問する。

一 令和三年七月十五日大阪高等裁判所決定(以下「高裁決定」という。)によれば、表現の不自由展(高裁決定中の「表現の不自由展」をいう。以下同じ。)について「この点につき、抗告人は、開催予定日までに三週間の期間があれば、相手方が大阪市内において代替施設を探すことは十分に可能であったと主張するが、本件催物の展示等に要する準備期間等を考慮すれば、三週間という期間で、代替施設を確保した上で本件催物を開催することを相手方に求めるのは事実上不可能を強いるのに等しいこと、同期間に相手方が代替施設を確保し得る旨を示す疎明資料は抗告人から何ら提出されていないことなどからすれば、上記抗告人の主張は採用できない。」と断じた。最高裁判所もこの判断を支持した。

1 高裁決定の前記引用部分に関して、政府の受け止めについて示されたい。

2 つまるところ、表現の不自由展と同等以上の規模の催事を行おうとする主催者に対する公の施設の利用許可撤回処分を開催前三週間以内に行おうとするのであれば、表現の不自由展を超える急迫明確な危険が迫っている場合に限られるのである。政府がこのことを地方自治体に対して十分周知していれば、六月末に行われる催事に対する中止要請を六月上旬に行うなどという暴挙は防げていたかもしれない。政府は、高裁決定及びそれを最高裁が支持した旨を地方自治体に対して周知したのか。また、これから周知する予定はあるのか。

二 国が行う行政指導は、行政手続法(平成五年法律第八十八号)(以下「行手法」という。)第三十五条第一項によって、必ず責任者が明確化され、同条第二項によって当該権限を行使し得る根拠となる法令の条項、当該条項に規定する要件、当該権限の行使が要件に適合する理由が必ず明らかになる。しかしながら、地方公共団体は、行手法第四十六条により、行政指導を行うに当たり、自ら条例で行政指導に関する手続を定めない限りは、行手法第三十五条各項類似の義務を負わない。ここで、一つ問題が生まれる。それは、指定管理者が、相手方に対し何らかの指導や申入れをした際に、それが地方自治体から委任された権限による行政指導なのか、単なる指定管理者の願望を相手方に言っているだけに過ぎないのか、相手方が判断しづらいのである。

1 地方公共団体は、当該公の施設を管理する指定管理者に、その管理に係る行政指導を行わせることを委任することができるか。それとも、行政指導は地方公共団体のみが行うことができ、指定管理者は、行政指導を行うことができないのか。

2 仮に指定管理者が行政指導を行うことができるとして、指定管理者は、行政指導を行うに際し、行手法第四十六条に従って、行手法第三十五条の趣旨にのっとり、相手方に対し責任者を明確にし、当該権限を行使し得る根拠となる法令の条項、当該条項に規定する要件、当該権限の行使が要件に適合する理由を述べることが望ましいと考えるが、政府の見解如何。

3 指定管理者からなんらかの申入れや指導を受けた相手方は、それが行政指導なのか、そうでないのかを確認する方法はあるのか。

三 指定管理者の不法行為に対する損害賠償の請求相手は、指定管理者か。それとも、当該公の施設を所有する地方公共団体か。

四 一部には、「施設の利用を許可することは、その施設の催しに賛同したことになる」などという意見もあるようである。一部の地方公共団体は、破壊活動防止法の調査対象団体に対し、公の施設の使用を許可しているが、政府は、このことをもって、当該地方公共団体が、当該破壊活動防止法の調査対象団体の活動を賛同したとみなすのか。政府の見解如何。

五 地方自治法第十章について

1 地方自治法第二百四十四条第二項「普通地方公共団体(次条第三項に規定する指定管理者を含む。次項において同じ。)は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。」の「正当な理由」とは何か。また、「正当な理由」であるかどうかの判断は、憲法第二十一条第一項からして特に慎重になるべきであると思うが、政府の見解如何。

2 同法同条第三項「普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない。」の「不当な差別」は、例えばどのような差別か。職業差別も含まれるか。

六 埼玉県の比較的大きな指定管理者ですら、表現の自由を軽んじて、受益的行政処分を受けた相手方に中止要請を出すという暴挙に出たのであるから、基礎自治体から公の施設の管理を委託されている指定管理者にまで表現の自由や地方自治法の趣旨が浸透しているのかについては甚だ疑問である。つい最近も、土佐市新居の観光交流施設「南風(まぜ)」の指定管理者であるNPO理事長が、他の理事長を勝手に解任し、「よそもんが」、「波介川事業にも関わってないような人間が」とこきおろすような態度をとるなど、地方自治法第二百四十四条第二項「普通地方公共団体(次条第三項に規定する指定管理者を含む。次項において同じ。)は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。」、同条第三項「普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない。」という条文を理解しているとは思えない発言をし、土佐市役所へ抗議の電話が鳴りやまない事件が起こったばかりである。

1 もはや指定管理者制度は限界ではないか。

2 指定管理者は、当然ながら地方自治法第十章を理解しているべきだと思うが、政府の見解如何。

3 指定管理者は、最低限、地方自治法第十章の趣旨程度は理解しているべきであると思うが、政府は、公の施設の管理を指定管理者に委託する地方自治体に対して、どのような支援を行っているのか。指定管理者の法的リテラシー向上の側面から例示されたい。

4 公の施設を地方自治体が直接管理する際は、その公の施設に関する行政処分・行政指導を行うに際し、標準職務遂行能力(地方公務員法第十五条の二第一項第五号の標準職務遂行能力をいう。以下同じ。)の実証に基づいて任用された地方自治体の職員が関与することとなり、この関与によって、地方自治法第二百四十四条第二項ないし第三項の履行が保たれている面はあるであろう。しかしながら、指定管理者には、このような標準職務遂行能力の証明が求められておらず、極論を言えば、地方自治法を一切知らぬ者でも指定管理者となれる。この現状に対して、政府の見解如何。

七 公園管理者は、都市公園法第八条に基づき、都市公園を占用する者に対し占用の条件を付することができるが、公園管理者が後から無制限に占用の条件を変更すると、都市公園を占用する目的が失われ、時間とお金だけ公園管理者に取られて、目的が達成できないといった事態が起こりかねない。一般に、侵害的行政行為の撤回は比較的容易であるのに対し受益的行政行為の撤回は特別の事情がない限り許されないと承知しているところ、公園管理者は、都市公園法第八条に基づき付した条件を、後から追加することはできるか。また、条件を減らすことはできるか。また、占用許可の相手方に不利な条件変更は謙抑的であるべきだと思うが、政府の見解如何。

 なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。

  右質問する。