質問主意書

第211回国会(常会)

質問主意書

質問第一二六号

若年層に広がる「オーバードーズ」の対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年六月二十日

神谷 宗幣


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   若年層に広がる「オーバードーズ」の対策に関する質問主意書

 過去一年以内に市販薬の乱用経験があると答えた高校生は、約六十人に一人の割合であるという(薬物使用と生活に関する全国高校生調査二〇二一)。このように、若者の薬物の過剰摂取、いわゆる「オーバードーズ」が急増している。報道各社も「十代に急増する市販薬の乱用 私たちがオーバードーズする理由とは」(令和五年五月十日、NHK)、「若者むしばむ市販薬 大量摂取、依存症や命の危険も」(令和五年一月十九日、日本経済新聞)などと、この問題を報じている。

 国立精神・神経医療研究センターによれば、市販薬を主たる薬物とする依存患者が二〇一二年から二〇二〇年の八年間で約六倍に増加しており、精神科医療施設を受診する十九歳以下の薬物関連精神疾患患者が使用していた薬物の約半数は、二〇一四年は、危険ドラッグであったものが、二〇二〇年は、市販薬の摂取に置き換わっているという。

 報道によれば、乱用されている薬の多くは、一般的な咳止めや風邪薬などであり、これらの薬には麻薬や覚醒剤と同様の成分が僅かに含まれている場合があることから、大量に服薬すると、気分が落ち着いたり、高揚したりする効果があるとされている。しかし、同じ服薬量ではやがて効果がなくなり、服薬量を増やすことが必要となる。加えて、依存性があることから、服薬を中止できず、過剰摂取のループに陥ってしまうという。

 また、この問題は、市販薬に限らず、本来、医師の処方が必要な睡眠薬などの向精神薬でも起きていることが報告されている。

 専門家や関連団体からは、依存性のある成分を規制すべきだとの意見や、一般用医薬品乱用の危険性を周知するとともに販売制度の枠組みについても検討が必要だとの意見も挙がっているほか、地方議会からも対策の充実を求める意見書が出されている。

 この問題については、過剰摂取による健康被害や死亡事例も報告されるなど深刻化しており、特に中高生にも広がっている現状に鑑みれば、早急に対策を講じるべきである。

 以上を前提に、以下質問する。

一 政府は、若者の市販薬や向精神薬の過剰摂取の問題について、何が要因であると分析しているか。また、今後どのような対策を講じるか。具体的に示されたい。

二 二〇二一年に総務省が実施した「我が国における青少年のインターネット利用に係るフィルタリングに関する調査」では、スマートフォンを利用している青少年のうち、フィルタリングサービスの利用率は三十八・一%にとどまっていたと報告されている。政府は、この結果について、どのように分析し、どのような対策を講じているか。

三 小学校学習指導要領(平成二十九年三月告示)によれば、薬物については、有機溶剤の心身への影響を中心に取り扱うとされ、中学校学習指導要領(平成二十九年三月告示)及び高等学校学習指導要領(平成三十年三月告示)によれば、薬物については、麻薬、覚醒剤、大麻等を取り扱うものとするとされている。

 前記に鑑みれば、問題となっている市販薬や向精神薬の過剰摂取については、積極的に取り上げられることがないように思われる。現状を踏まえ、これらについても十分な時間を割いて取り上げ、啓発を図る考えがあるか。

四 乱用等のおそれのある医薬品については、販売個数に一定の制限が課されているものの、規制されていない医薬品においてもオーバードーズするケースが増加していること、そのような医薬品の乱用は発見されにくいことが指摘されている。また、規制がされている医薬品でも、薬局・店舗販売業において販売ルールが徹底されていない場合があることも指摘されている。これらの点に関し、政府の見解如何。

  右質問する。