質問主意書

第211回国会(常会)

質問主意書

質問第一二〇号

人質司法の解消と犯罪被害者の情報秘匿に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年六月十六日

牧山 ひろえ


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   人質司法の解消と犯罪被害者の情報秘匿に関する質問主意書

 第二百十一回国会において成立した刑事訴訟法等の一部を改正する法律には、GPS端末装着による保釈中の被告人の監視や犯罪被害者の情報秘匿に係る改正が含まれており、これに関連して以下のとおり質問する。

一 GPS端末の装着は被告人のプライバシーを侵害する側面があるが、身柄拘束が続くことに比べれば制約は緩やかである。日本弁護士連合会も二〇二〇年十一月に「人質司法を解消し、原則保釈の運用を実現することを前提に(被告人へのGPS端末装着が)検討されるべき」とする旨の意見書を出している。

 今回導入されるGPS端末装着による保釈中の被告人の監視は、国外逃亡の防止を目的としたものであるが、GPS端末を活用した保釈の対象の更なる拡大に関する検討についての政府の見解を示されたい。

二 被害者情報の秘匿に関し、弁護人に対しては、被告人側の防御権に配慮して、起訴状の謄本を送達することとしつつも、被害者等の氏名等の情報が被告人に知られないようにするために、これらの情報を被告人に知らせてはならない旨の条件を付することとしている。さらに、この条件を付する措置によっても被害者等に対する加害行為等を防止できないおそれがあるときには、弁護人に対しても起訴状の抄本を送達することとされている。

 では、弁護人に対して起訴状の抄本を送達する場面として、どのような場面が想定されるか、具体的に示されたい。

三 秘匿措置等の対象となる事件については、性犯罪のほか、被害者等の個人特定事項が知られることにより名誉等が著しく害されるおそれがあると認められる事件や、身体等に対する加害行為等がなされるおそれがあると認められる事件も掲げられており、罪名による限定はされていない。そのため、性犯罪だけではなく、窃盗罪や器物損壊罪といった性犯罪以外の犯罪についても、被害者等の氏名等の情報を秘匿することが幅広く可能となる。

 こうした秘匿措置の運用が捜査機関の発表でも行われれば、国民が被害の実態や遺族の思いを知る機会が減るおそれもある。つまり、警察や検察が必要以上に被害者名を匿名化して発表するようになれば、公権力側にとって不都合な事実が隠されてしまうおそれもあり、「国民の知る権利」を実質的に保障するためにも、秘匿条項については厳格な運用が求められるとの指摘もなされている。この懸念に対する政府の見解を示されたい。

  右質問する。