質問主意書

第211回国会(常会)

質問主意書

質問第一一三号

「第十回特定原子力施設の実施計画の審査等に係る技術会合」の配付資料に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年六月十五日

川田 龍平


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   「第十回特定原子力施設の実施計画の審査等に係る技術会合」の配付資料に関する質問主意書

 二〇二三年六月五日に開催された「第十回特定原子力施設の実施計画の審査等に係る技術会合」において東京電力が配付した資料では、福島第一原子力発電所一号機のダスト発生シナリオとして、原子炉圧力容器(RPV)が倒壊し、原子炉格納容器(PCV)に最大百mmの穴が空くとしているが、その過程の詳細が見えてこない。

 そこで以下質問する。

一 二〇二三年五月十九日、私が提出した「福島第一原発一号機ペデスタル損傷による原子炉倒壊の危険に関する質問主意書」(第二百十一回国会質問第七〇号)に対する答弁(内閣参質二一一第七〇号)を受領した。これによると、耐震評価の結果にかかわらず、格納容器内は高線量の為に原子炉転倒対策工事が行えないとする旨の答弁があった。原子力プラント設計や耐震構造の専門家である森重晴雄氏は、原子炉の倒壊対策について、「ペデスタルの損傷部分を直接補修することなく、原子炉上部を補強するだけでも対策が出来ます。原子炉上部に振れ止めとしてあるスタビライザ付近の高さ一m前後コンクリートを充填するだけで原子炉は原子炉建屋と一体となり飛躍的に耐震レベルが向上します。しかもその作業は格納容器でなく原子炉建屋側で作業しますので被ばく量を抑えることが出来ます。その作業場所は今も格納容器内調査の現場基地としても使われています。」と述べている。原子炉倒壊は、放射線放出、屋上部使用済燃料プールへの影響、廃炉作業への影響等、場合によっては国家的な危機を招く可能性があり、なんとしても防がなければならないと思料する。早急に具体的倒壊防止策を講じるべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

二 福島第一原子力発電所一号機のRPV倒壊を防ぎ、使用済燃料を取り出し原子力重大事故を未然に防ぐため、様々な分野の専門家による有識者会議を早急に設け真剣に話し合い、国を挙げて対策を講じるべきではないか。政府の見解を示されたい。

三 二〇二三年六月五日に開催された「第十回特定原子力施設の実施計画の審査等に係る技術会合」において東京電力が配付した資料では、RPVがどの方向に倒壊するか示されていない。私は床が最も損傷している原子炉方位二百二十度と想定している。これは三百九十二体の核熱料が残る使用済み燃料プール(SFP)側であるが、政府の見解を示されたい。

四 PCVと原子炉建屋には百mmの隙間がある。RPVがPCVに当たり、PCVを突き破り、RPVが百mm外側にある原子炉建屋に衝突して、RPVがその壁表面にとどまるとして、PCVの穴は百mmにとどまると東京電力は推定している。原子炉建屋はRPVの衝突に対しても耐えられるとする根拠について、政府が把握しているところを数値をもって示されたい。技術研究組合国際廃炉研究開発機構(IRID)が行った地震応答解析から、RPVが原子炉建屋に転倒すると原子炉建屋は耐えられないと考えるが、政府の見解を示されたい。

五 福島第一原子力発電所一号機のPCVの材料は「ASTA A二〇一」及び「A二〇二」である。この材料は建設当時から脆性破壊することが懸念されている。現在はPCVが露天に面し、海風を浴び塩害が進行しており、脆性破壊の可能性が高まっている。PCVが割れることもあり得るが、脆性破壊に対する政府の検討状況を示されたい。

六 PCVに空く穴が百mm以上となるとPCVの閉じ込め機能の見直しが必要であると思うが、東京電力において百mm以上に開く穴が空く場合の対策について検討されているのか。政府が把握しているところを明らかにされたい。

  右質問する。