質問主意書

第211回国会(常会)

質問主意書

質問第一一〇号

我が国における難民認定の状況に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年六月十五日

石橋 通宏


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   我が国における難民認定の状況に関する質問主意書

一 難民認定の実態について

1 難民認定申請者について

(1) 二〇二一年末及び二〇二二年末時点で、難民認定申請中の者の数及び難民認定申請回数別の内訳を示されたい。

(2) 二〇二一年末及び二〇二二年末時点で、審査請求(行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律による改正前の出入国管理及び難民認定法第六十一条の二の九第一項の規定による異議申立てを含む。以下同じ。)中の者の数及び難民認定申請回数別の内訳を示されたい。

(3) 二〇二二年の難民認定制度の「濫用」の件数を示されたい。

(4) 難民認定事務取扱要領は、難民認定申請案件を「難民条約上の難民である可能性が高い案件、又は、本国が内戦状況にあることにより人道上の配慮を要する案件」(A案件)、「難民条約上の迫害事由に明らかに該当しない事情を主張している案件」(B案件)、「再申請である場合に、正当な理由なく前回と同様の主張を繰り返している案件」(C案件)及び「上記以外の案件」(D案件)の四類型(以下「四類型」という。)に振り分けている。B案件と確定した案件及びC案件と確定した案件のほかに「濫用」案件とみなしているものはあるか。また、出入国在留管理庁長官があらかじめ請訓不要と指定した類型の案件は、「濫用」とみなしているか。政府の見解を示されたい。

(5) 二〇二二年中にインタビュー等の調査の結果、D案件からB案件又はC案件に振り分けが変更された案件の数を示されたい。

(6) 二〇二三年三月に公表された「令和四年における難民認定申請者数等について」によれば、二〇二二年の難民認定申請者のうち、千二百二人が複数回申請者であった。このうち、前記「正当な理由」があるとしてA案件又はD案件に振り分けた案件の数を示されたい。また、どのような場合に「正当な理由」があると見なしているか、具体例を示されたい。

(7) 「令和四年における難民認定申請者数等について」によれば、二〇二二年の難民認定申請者のうち、四百六十一人が二十歳未満であった。そのうち、難民認定申請時に在留資格を有していなかった者の数を示されたい。また、難民認定申請回数別の内訳を示されたい。

(8) 「令和四年における難民認定申請者数等について」によれば、二〇二二年に仮滞在を許可した者は五十九人であった。このうち、二十歳未満の者の数とその年齢の内訳を示されたい。

(9) 二〇二二年末時点で「送還忌避者」とされた四千二百三十三人のうち、難民認定申請を行っている者の数及び難民認定申請回数別の内訳を示されたい。また、三回目以降の難民認定申請を行っている者について、国籍の内訳を示されたい。

2 難民認定者及び人道配慮による在留許可者について

(1) 二〇二二年に難民として認定された者(審査請求手続における認定者を含む。以下同じ。)のうち、複数回申請者の数を難民認定申請回数別に示されたい。また、退去強制令書発付後に難民として認定された者の数を示されたい。

(2) 二〇二二年に難民としては認定されなかったものの、人道的な配慮により在留を認められた者(審査請求手続の結果、在留を認められた者を含む。以下同じ。)のうち、複数回申請者の数を難民認定申請回数別に示されたい。また、退去強制令書発付後に在留特別許可された者の数を示されたい。

(3) 二〇一七年から二〇二二年(全期間の統計がとれていない場合はとれている期間)に難民として認定された者全てについて、難民認定申請から難民の認定を受けるまでに要した期間を示されたい。

(4) 二〇一九年から二〇二二年(全期間の統計がとれていない場合はとれている期間)に難民として認定された者について、四類型別の内訳を明らかにされたい。

(5) 前記一2(3)及び前記一2(4)において、仮に「通常の業務において集計していないものであり」、「膨大な時間を要することから」、「お答えすることは困難」である場合は、通常の業務において集計していない理由及び集計に要する時間の見込みを示されたい。

(6) 二〇二二年に難民として認定された者のうち、性的指向及び/又はジェンダー・アイデンティティを理由として難民と認定された者は含まれているか。含まれているのであれば、その人数及び「認定者の認定事由」のどれに当たるかを明らかにされたい。

(7) 二〇二二年に難民として認定された者のうち、不服申立てで「理由あり」とされた者(難民認定者)十五人の国籍の内訳を示されたい。

(8) 二〇一七年から二〇二二年(全期間の統計がとれていない場合はとれている期間)に難民としては認定されなかったものの、人道的な配慮により在留を認められた者のうち、一次審査により当該在留が認められた者の数を示されたい。

(9) 二〇二二年五月に公表された「令和三年における難民認定者数等について」及び二〇二三年三月に公表された「令和四年における難民認定者数等について」によれば、難民認定手続の結果、難民とは認定しなかったものの本国の情勢や事情等を踏まえて在留を認めた者の数は二〇二一年が五百二十五人、二〇二二年が千七百十二人とされている。この中に、一年未満の在留資格が付与された者は含まれているか。含まれているのであれば、その数を国籍別に示されたい。

(10) 二〇二一年及び二〇二二年に難民として認定された者のうち、出入国管理及び難民認定法第六十一条の二の二第一項の各号に該当するとされた者の数をそれぞれ示されたい。

3 一次審査について

(1) 「令和四年における難民認定者数等について」によれば、二〇二二年の一次審査の平均処理期間は約三十三・三月と、二〇一〇年以降最長を記録している。本来、難民認定申請は速やかに処理されるべきだが、処理期間が長期化している理由について、政府の見解を示されたい。

(2) 「令和四年における難民認定者数等について」によれば、二〇二二年に難民認定申請を行った者のうち、在留資格「技能実習」は四百六十六人、在留資格「特定活動(出国準備期間)」は百五人、在留資格「留学」は四十七人であった。このうち、D案件に振り分けられた者の数を示されたい。

4 審査請求について

(1) 二〇二一年及び二〇二二年に不服申立てに「理由あり」とされた者及び「理由なし」とされた者のうち、臨時班に構成された参与員が関与した事件数をそれぞれ示されたい。また、各年において、臨時班に構成された参与員の数を示されたい。

(2) 二〇一六年九月九日に開催された難民審査参与員協議会の議事概要メモにおいて、「行政不服審査法上では、本人から審査請求があると直ちに各班に割り振らなければならないとされているところ、二年先に手続開始の可能性があるものを現時点で各班に割り振るというのは効率的な運用の面で問題がある。そこで、臨時的措置として、難民認定制度に関する知識又は経験の豊富な参与員にお願いして、臨時的措置による臨時班を編制し、そこに形式的に案件を割り振り、具体的事案を見て早期案件か否か判断し、早期処理案件であれば臨時的措置による臨時班で早期処理を行い、早期処理案件に該当しなければ指名替えを行い、常設班への割振りを行うという形をとり効率的な処理を行っていきたいと考えている。」と当時の審判課長が述べている。

 「形式的に案件を割り振」る判断及び「具体的事案を見て早期案件か否か判断」を行う者は誰か示されたい。

(3) B案件、C案件、出入国在留管理庁長官が請訓不要と指定した類型の案件は前記「臨時班」に形式的に割り振られる案件に相当するか。その他、「臨時班」に「形式的に」割り振られる案件の具体例を示されたい。

(4) 「令和四年における難民認定者数等について」によれば、二〇二二年に不服申立てに「理由あり」とされた者及び「理由なし」とされた者のうち、六百七十六人に口頭意見陳述等期日が実施され、四千六十四人には口頭意見陳述等期日が実施されていない。また、口頭意見陳述等期日を実施しなかった者のうち、二千七百六十六人が口頭意見陳述の申立てを放棄したとされている。

 口頭意見陳述等の期日が実施されていない四千六十四人のうち、口頭意見陳述の開催を希望したにもかかわらず、口頭意見陳述等の期日が実施されなかった人数について、①合計及び所管地方局別の人数、②判断をした難民審査参与員の班がある事務局設置局別(東京・名古屋・大阪)の人数をそれぞれ示されたい。

(5) 口頭意見陳述等の期日が実施された六百七十六人のうち、原処分庁への質問が申し立てられた件数及びそのうち原処分庁が口頭意見陳述の期日に招集された件数を示されたい。

(6) 二〇二一年及び二〇二二年に口頭意見陳述等の期日が開催された数を示されたい。

(7) 二〇二一年及び二〇二二年に難民審査参与員により提出された意見書の数を示されたい。そのうち、難民審査参与員のうち一名が「理由あり」とした案件の数を示されたい。

5 訴訟について

 難民不認定処分取消請求訴訟及び難民不認定処分無効確認請求訴訟について、二〇二二年に提起された件数及び終局裁判がなされた件数をそれぞれ明らかにされたい。加えて、難民不認定処分の取消し若しくは無効が確定した後、又は、難民認定処分の義務付け訴訟で国側が敗訴した後、難民認定がなされず、在留資格が付与されなかったケースはあるか。あれば、その理由について、政府の見解を示されたい。

6 本国情勢を踏まえたミャンマー・アフガニスタン・シリア人の庇護状況について

(1) 二〇二二年末時点で難民認定申請中のミャンマー・アフガニスタン・シリア人の数を在留資格別に示されたい。

(2) 「令和四年における難民認定者数等について」によれば、二〇二二年に複数回申請を行った者のうち、八十三人がミャンマー出身者であった。このうち、非正規在留者の数を明らかにされたい。

(3) 二〇二一年五月に公表された「本国情勢を踏まえた在留ミャンマー人への緊急避難措置」によれば、二〇二一年三月末時点で難民認定手続中の者の数は二千九百四十四人とされている。このうち、二〇二二年末時点で難民認定手続中の者の数を示されたい。

二 空港等での庇護申請関係の統計について

 政府は二〇一五年九月から「難民の迅速かつ確実な庇護」を推進するための難民認定制度の運用の見直しを行っているという。空港は難民保護のまさに最前線であり、上陸審査時に難民認定申請を希望した者に適切に対処できているかどうかは、「難民を迅速に庇護」できているか否かを示す、重要な指標である。

1 二〇二一年及び二〇二二年に一時庇護上陸許可を申請した者の数及び許可状況を国籍別に示されたい。

2 二〇二二年の我が国の空港支局等における難民認定申請件数を、申請が行われた空港支局別(成田・羽田・中部・関西)及び福岡空港出張所について年別に示されたい。

3 「令和四年における難民認定者数等について」によれば、二〇二二年に仮滞在を許可した者は五十九人、仮滞在の許否を判断した人数は六百人である。そのうち、空港支局等(成田・羽田・中部・関西空港支局及び福岡空港出張所)において仮滞在が許可された人数及び許可されなかった人数をそれぞれ明らかにされたい。

三 難民認定申請者の収容について

1 二〇二二年末時点で出入国在留管理庁の収容施設に収容されていた者の数と、そのうち、難民認定申請中、審査請求中及び難民不認定処分の取消しを求める訴訟係属中の者の数をそれぞれ明らかにされたい。

2 二〇二一年及び二〇二二年の被収容者の自殺件数、自傷行為(自殺未遂含む)の件数、精神科医の利用実績、庁外診療数及び救急搬送件数を、収容施設別に示されたい。仮に統計がない場合、収容施設における医療体制の充実を図ることが困難である。集計が困難な理由を示されたい。

四 保護費の支給状況について

1 二〇二二年度(全期間の統計がとれていない場合はとれている期間。以下四5まで同じ。)について、保護費を申請した者の数、保護費を受給していた者の数をそれぞれ明らかにされたい。

2 二〇二二年度に保護費を受給していた者の申請から受給決定までの平均待機期間、平均受給期間をそれぞれ示されたい。

3 二〇二二年に保護費を申請したが受給できなかった者の数、国籍の内訳、申請から結果が出るまでの平均待機期間を明示されたい。

4 二〇二二年度の難民認定申請者緊急宿泊施設(以下「ESFRA」という。)の利用者数を性別、国籍別に示されたい。また、保護費の申請からESFRAの利用開始までの平均日数、最短日数及び最長日数をそれぞれ示されたい。

5 二〇二二年度について、①保護費、②生活費、③住居費、④医療費のそれぞれの支給額を示されたい。また、二〇二二年度のESFRAの予算額及び執行額をそれぞれ示されたい。

五 難民認定制度の在り方について

1 法務省は、二〇一五年九月に公表した「難民認定制度の運用の見直しの概要」の5の(1)においていわゆる「新しい形態の迫害」を申し立てる者が難民条約の適用を受ける難民の要件を満たすか否かの判断に関して「難民審査参与員が法務大臣に提言をし、法務大臣がその後の難民審査の判断に用いるようにするための仕組み」を構築するとしている。

 この「仕組み」に関して、私が提出した「我が国における難民認定の状況に関する質問主意書」(第二百八回国会質問第五七号)に対する答弁書(内閣参質二〇八第五七号。以下「前回答弁書」という。)の「一の2の(6)」で「現在においても引き続き検討中」とされていたが、現在の状況を明らかにされたい。

2 二〇二〇年十二月に公表された第七次出入国管理政策懇談会による報告書「今後の出入国在留管理行政の在り方」は、「適正手続保障の観点から、代理人の立会いを認める範囲など、申請者の置かれた立場に配慮した一次審査における適切な事情聴取の在り方を検討する必要がある」としている。一方、前回答弁書の「六の3」において、政府は「代理人の立会いを認める範囲」に関して「難民認定申請に対する一次審査における難民認定申請をした者に対する事情聴取は、当該者から本国での迫害状況等の難民となる事由を聴取してその内容を確認するとともに、当該者の供述態度等からその供述の信用性を慎重に吟味することを目的として行うものであることに鑑みると、難民認定申請に対する一次審査における事情聴取に際して代理人の立会いを認めることについては、慎重に検討すべきものであると考えている」としている。「供述態度等」の具体例を示されたい。

3 二〇二〇年十二月に公表された第七次出入国管理政策懇談会による報告書「今後の出入国在留管理行政の在り方」は、「行政の公正性や適正性を維持する観点から、難民認定業務の専門性・独立性をより高めるために、その組織の在り方について検討することを求めたい」としている。

 公平・中立な難民認定審査を行うに当たり、独立性を有する組織の設置は必須と考えるが、政府の見解を示されたい。また、「難民認定業務の専門性・独立性をより高めるため」の「組織の在り方」に関する現在の検討状況を明らかにされたい。

4 二〇二一年七月に行われたUNHCRとの協力覚書の交換において、「難民調査官の調査の在り方についてUNHCRとケース・スタディを実施」するとされている。現時点までのケース・スタディの実施件数及び今後の予定を示されたい。また、当ケース・スタディの結果、地方官署に対して発出した文書を提示されたい。

5 二〇二三年四月一日現在の難民調査官に指定されている者の数を地方局別に示されたい。また、行政職(一)3級及び4級の難民調査官の数を示されたい。さらに、それらの者が難民調査官に指定されてからの平均期間を明らかにされたい。

6 二〇二三年四月一日現在の出身国情報の収集等に専従する職員の数を示されたい。また、それらの者が当該職に就いてから現在までの期間を明らかにされたい。

  右質問する。