質問主意書

第211回国会(常会)

質問主意書

質問第八一号

我が国の防衛技術開発を忌避する日本学術会議が中国の軍事技術開発を担う国防七校と我が国の大学機関との共同研究等の提携を不問にしている矛盾に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年五月二十三日

神谷 宗幣


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   我が国の防衛技術開発を忌避する日本学術会議が中国の軍事技術開発を担う国防七校と我が国の大学機関との共同研究等の提携を不問にしている矛盾に関する質問主意書

 中国には、国家国防科技工業局の監督の下、一級保有資格を含む軍事四証(軍工四証)を取得し、機密度の高い武器の研究開発を担う大学が七校(北京航空航天大学、北京理工大学、哈爾濱工業大学、哈爾濱工程大学、南京航空航天大学、南京理工大学、西北工業大学)あり、国防七校と呼ばれている。

 我が国の大学の中には、国防七校と提携し、中国から留学生を受け入れ、軍民両用技術を研究させている大学が存在する。文部科学省が公表している「海外の大学との大学間交流協定(令和二年度実績)」に基づき、国防七校と我が国の大学との提携状況をまとめると次のとおりとなる。

(1)北京航空航天大学  東北大学、千葉大学、東京工業大学、新潟大学、広島大学、徳島大学、九州大学、慶應義塾大学、工学院大学、立命館大学

(2)南京航空航天大学  東北大学、千葉大学、東京大学、名古屋大学、高知大学、立命館大学、早稲田大学

(3)西北工業大学  千葉大学

(4)哈爾濱工業大学  北海道大学、東北大学、千葉大学、東京大学、新潟大学、神戸大学、北陸先端科学技術大学院大学、佐賀大学、名古屋大学、徳島大学、国際教養大学、会津大学、高知工科大学、上智大学、早稲田大学、桜美林大学、千葉工業大学、立命館大学

(5)哈爾濱工程大学  北海道大学、電気通信大学、京都大学、北見工業大学、岡山大学、広島大学、香川大学、高知工科大学、長崎総合科学大学

(6)北京理工大学  東北大学、埼玉大学、千葉大学、東京工業大学、電気通信大学、名古屋大学、名古屋工業大学、三重大学、京都大学、岡山大学、香川大学、九州大学、熊本大学、新潟経営大学、関西国際大学

(7)南京理工大学  東京農工大学、東京理科大学、早稲田大学、創価大学、京都情報大学院大学、福岡工業大学

 政府の組織である日本学術会議は、昭和二十五年四月に「戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わない」旨の声明を、昭和四十二年十月には「軍事目的のための科学研究を行わない声明」を、さらに平成二十九年三月には「軍事的安全保障研究に関する声明」を発した。平成二十九年の声明には、昭和二十五年と昭和四十二年の声明を継承するという文言が含まれ、「安全保障技術研究推進制度」で政府の人間である防衛省職員が進捗管理に関わることの懸念を表明している。

 また、経済産業省は、大量破壊兵器や通常兵器の開発に利用されるおそれのある技術が外国に輸出されるのを規制するために、キャッチオール規制を導入しているが、その実効性を向上させるため、外国ユーザーリストで、輸出者に対し、大量破壊兵器等の開発等の懸念が払拭されない外国・地域所在団体の情報を提供している。輸出者は、輸出する貨物等のユーザーが本リストに掲載されている場合には、当該貨物が大量破壊兵器等の開発等に用いられないことが明らかな場合を除き、輸出許可申請が必要となるが、この外国ユーザーリストには、右の国防七校のうち、北京航空航天大学、北京理工大学、哈爾濱工業大学、哈爾濱工程大学、西北工業大学が掲載されている。

 このように日本学術会議の声明を受け、内規で防衛装備庁への応募を禁止する大学もある一方で、中国の国防七校からの留学生を受け入れ、我が国の大学で軍民両用技術を研究させて、帰国後に軍事転用が行われていることは、中国の軍事研究に間接的に協力していると言えるのではないか。

 以上を踏まえ、以下質問する。

一 文部科学省は、令和二年度に国防七校から前文で示した我が国の大学に何名の留学生が派遣されたかを把握しているか。把握している場合は、各大学の留学生の人数を回答されたい。

二 文部科学省は、国防七校から我が国の大学に留学した者が、留学先の大学で研究した内容について把握しているか。把握していない場合、その理由を説明されたい。また、修了論文などのアブストラクトのリストを提示されたい。

三 我が国の大学が国防七校からの留学生を受け入れていることは、日本学術会議が軍事研究は行わないとした声明と矛盾する。日本学術会議が声明を堅持するのであれば、国防七校との提携を破棄することを声明すべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。

四 米国では、商務省産業安全保障局が発行する貿易上の取引制限リスト(エンティティリスト)があり、国防七校全てが掲載され、輸出管理の対象になっている。ところが、我が国の外国ユーザーリストには、七校のうち五校だけが掲載され、南京航空航天大学及び南京理工大学が記載されていない。この二校を外国ユーザーリストに掲載せず、経済産業大臣の輸出許可申請を不要としている理由を説明されたい。また、この二校を外国ユーザーリストに掲載する予定があるか示されたい。

五 米国は国防七校をエンティティリストに掲載し、厳格な輸出管理の対象にしているが、これら国防七校の学生が、エンティティリストに掲載されていない我が国の大学に留学し、実験や研究を行うことで、米国による輸出規制を逃れることが可能である。文部科学省は、これらの行為が抜け穴にならないように、大学に対し指導をしているか示されたい。指導している場合は、その内容を、指導していない場合は、なぜ指導を行わないのかを説明されたい。

  右質問する。