質問主意書

第211回国会(常会)

質問主意書

質問第七四号

半導体工場進出が相次ぐ熊本県北部地域における地下水資源の適正利用に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年五月十一日

浜田 聡


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   半導体工場進出が相次ぐ熊本県北部地域における地下水資源の適正利用に関する質問主意書

 熊本市は、人口五十万人以上の都市で水道水源を百%地下水で賄っている日本で唯一の都市である。この熊本市からほど近い菊陽町に、TSMCを始めとする半導体工場の進出が相次いでいる。半導体工場は水を大量に使用する産業であるため、無秩序に地下水をくみ上げると、熊本市近辺はたちまち水不足となってしまう。

 ところが、熊本県内は工業用水法第三条第一項の指定地域である十都府県十七地域に指定されておらず、地盤沈下防止等対策要綱の対象地域である濃尾平野、筑後・佐賀平野及び関東平野北部地域でもないため、政府として積極的に地下水利用について調査・規制してきた地域とは言い難く、地下水利用の調査・規制は、熊本県が自ら行ってきた部分が大きい。半導体産業に補助金を出して工場進出を後押しする割に、地下水資源の適切な調査・規制については熊本県に任せっぱなしでは、熊本県民が半導体工場の地下水利用を心配するのも当然である。

 以上を踏まえて、以下質問する。

一 工業用水法第三条第二項の「工業の用に供すべき水の量が大」とは具体的に毎時何立方メートルの水量か。

二 なぜ、熊本県は工業用水法第三条第一項の指定地域ではないのか。

三 水循環基本法第十四条ないし第十六条の二に基づき、政府が熊本県で行った地下水利用に関する調査・施策を示されたい。

四 政府は、地下水賦存量調査を平成十九年から平成二十一年に行っているようであるが、政府が補助金を出す熊本県内の土地(政府が特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律第十一条第三項に基づき令和四年六月十七日に認定した認定特定半導体生産施設整備等計画(特定半導体生産施設整備等計画認定番号二〇二二半経第〇〇一号―一)内に記載のある「熊本県菊陽郡菊陽町、土地の所有権はJASM」と記載されている土地をいう。)は、地下水賦存量調査の対象であったか。対象であれば、第四系、新第三系の地下水賦存量及び安全用水量を示されたい。

五 工業用水法の所管は経済産業省と環境省の共管であるが、その経済産業省は今般のTSMCが設立する工場に対し補助金を出すなど、むしろTSMC日本進出を後押しする立場である。原発政策については、原子力利用の「推進」と「規制」を分離し、規制事務の一元化を図るとともに、専門的な知見に基づき中立公平な立場から、独立して原子力安全規制に関する業務を担う行政機関として、平成二十四年九月十九日、環境省の外局として原子力規制委員会が発足した。これと同じ原理を当てはめれば、地下水の利用を「推進」する立場と、「規制」する立場の省庁が同じであることは不適切であるから、工業用水法の所管を完全に環境省に移管すべきではないか。政府の見解如何。

 なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。

  右質問する。