質問主意書

第211回国会(常会)

質問主意書

質問第七〇号

福島第一原発一号機ペデスタル損傷による原子炉倒壊の危険に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年五月十日

川田 龍平


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   福島第一原発一号機ペデスタル損傷による原子炉倒壊の危険に関する質問主意書

 昨年五月、東日本大震災によって被災した福島第一原子力発電所一号機の原子炉を支えるペデスタルのコンクリートが高温のデブリにより溶融し鉄筋がむき出しになっていることが報道された。さらに、東京電力(以下「東電」という。)が今年三月末にペデスタル内部を調査したところ、全周にわたり下部一メートルほどコンクリートが溶融し鉄筋がむき出しになっていることが明らかになった。東電は、今後数か月かけてペデスタルの耐震性について調べるとしている。原子力プラント設計や耐震構造の専門家である森重晴雄氏は、三百四十三ガル程度の地震で原子炉は倒壊すると昨秋来警告している。仮に原子炉が倒壊したなら、最悪の場合屋上階の燃料プール壁のき裂や配管を通して冷却水が抜け、貯蔵されている使用済燃料二百九十二体(ウラン約五十トン)のジルコニウム火災・溶融、そしてセシウム137等の揮発性放射性物質の環境への放出が起こり、福島県の東半分が強制避難地域になる可能性がある。また、二号機の屋上プールには五百八十七体(ウラン約百トン)の使用済燃料が貯蔵されており、ここに近づけなくなると将棋倒し的に巨大破局事故が発生する可能性がある。そのため、長期的に人間や生物の生存を脅かす大惨事が絶対に起きないよう緊急対策を講じる必要があるとの認識から、以下質問する。

一 この問題について政府として各省庁の審議会などにおける具体的な対応状況を示されたい。

二 今年三月末のペデスタル内部の調査では、ほぼ全周にわたり下部一メートルほどコンクリートが溶融し鉄筋がむき出しになっていることが判明した。森重氏が警告する震度五強(二百四十~五百二十ガル)程度の地震により原子炉圧力容器(以下「RPV」という。)やペデスタルが倒壊する可能性があると推量されるが、RPVを上部で支えている二つのPCV(原子炉格納容器)・RPVスタビライザはRPV内燃料のメルトダウン時に破損しているのではないか。その健全性は両スタビライザを固定する遮蔽壁とともに確保されているのか、またその確認はしているのか。

三 電力会社や原子炉メーカーで構成される国際廃炉研究開発機構(IRID)の二〇一六年度の試算によると、ペデスタルの約四分の一が損傷していても耐震性に問題はないとされると報道されていた。今年三月の調査に立ち会った資源エネルギー庁の木野正登参事官は「原子炉が、すぐさま落ちることはあり得ないが、大きな地震がきたときに多少沈み込む可能性はあるかもしれない」と指摘している。三月の調査はカメラを搭載した水中ロボットを土台内部に進入させ確認したところ内部壁面の下部全周にわたりコンクリートがなくなり、鉄筋がむき出しになっている様子を確認したと報道された。ペデスタルの四分の一どころか二分の一以上の損傷があることが分かった。倒壊の防止を考えなければ大変な被害が予想される状況になっているのではないか。RPVとペデスタルの固有振動はいくらか。ペデスタルを支える鉄骨は剛性が低下しており、地震波を構成する波の一部分と同期(共振)し倒壊しやすくなっていると考えられる。震度五強以上の地震にも耐え倒壊しないとする根拠があれば示されたい。

四 東電は三月の調査を受けて、数か月かけてペデスタルの耐震性について調べるとしている。しかし、昨年五月には一号機の原子炉を支えるペデスタルのコンクリートが高温のデブリにより溶融し鉄筋がむき出しになっていることを外部から確認していた。事の重大性から見て、その時点からペデスタルの耐震や倒壊について検討し対策を講じるべきではなかったのか、対応が遅すぎるのではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。

五 国はなぜ早急な倒壊防止対応を東電に指示してこなかったのか。倒壊の可能性があること自体があってはならない。対策と調査を、同時並行で進めるべきではないか。森重氏はペデスタルにコンクリートを注入して補強するなど、早急な対策が必要だと提言している。監督機関として東電へ早急な対応を求めるべきではないか。政府の見解を示されたい。

六 仮にRPVやペデスタルが倒壊しデブリ上部に落下した場合には、廃炉作業(デブリ取出しなど)が更に困難になるおそれがある。倒壊対策が講じられない場合、近未来に必ず現実になることが想定されるが、政府の見解を示されたい。

七 この問題は国民を守るための危機管理上大問題ではないか。RPV・ペデスタルが倒壊するとペデスタルの基盤面のめくれ上がりによる冷却水の喪失、再臨界、高濃度汚染水の発生、また倒壊による壁のひび割れや配管損傷による屋上使用済燃料プール冷却水の喪失、使用済燃料のメルトダウン、揮発性放射性物質(セシウム137等)の放出による人々の避難など、将棋倒し的に波及する最悪の事態が想定される。このような事態にならないよう政府を挙げて、(1)RPV・ペデスタルの倒壊防止対策、(2)屋上階プールに貯蔵されている使用済燃料の優先的取出し、(3)地上での乾式貯蔵等を講じるべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。