質問主意書

第211回国会(常会)

質問主意書

質問第六三号

我が国に設置された孔子学院に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年四月二十六日

神谷 宗幣


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   我が国に設置された孔子学院に関する質問主意書

 孔子学院は、二〇〇〇年代前半から世界各地に設置されている。少なくとも百五十か国以上に五百以上が開設されたとの情報がある。孔子学院は、中国語及び中国文化を世界に広めるための活動を行っているとされる。

 米国、欧州等において、孔子学院に関して複数の理由で懸念と問題が指摘されている。取り上げられている懸念と問題点の主な内容は次のとおりである。

(1)孔子学院は、中国側と受入れ大学間の協定により設置され、協定内容が公開されない点を含め、透明性に欠く。

(2)孔子学院の中国側運営主体は、実質的には中国共産党、中国政府の統制下にある。大学内に外国政府の組織が存在することにより、大学の自治の観点から重大な懸念がある。

(3)特に、派遣講師や授業内容などが中国側の主導により決定され、受入れ大学のコントロールが効かず、大学の教育の自由を侵害している。例えば、中国に不利になる内容は避ける等偏った教育内容となっている。

(4)さらに、中国側が受入れ国に都合の良い情報を流布するプロパガンダ機関となる懸念がある。

(5)大学においては、重要な学術研究や技術開発が行われている。孔子学院は、中国側による大学の知的財産(研究・開発内容等)の搾取が行われる懸念がある。高度技術の中国への流出拠点であることが警戒される。

 このように、諸外国(特に、自由、民主主義、人権、法の支配などの普遍的価値を尊重する米国、欧州諸国)では、孔子学院は、その不透明性、中国政府による統制、中国に都合の良い情報を発信する宣伝機関、大学の知的財産を搾取するスパイ拠点等の懸念・問題が指摘されている。

 かかる懸念と問題を踏まえ、欧米諸国においては、孔子学院の透明性を求め、受入れ側のコントロールを強める声が強まってきた。さらに、宣伝機関やスパイ機関等の懸念から、孔子学院の閉鎖を求め、実際に閉鎖される例が増加している(米国、カナダ、フランス、ドイツ、スウェーデンなど)。

 米国での具体的な対応例は次のとおりである。

(1)学問の自由侵害との批判、中国のスパイ活動の潜在的拠点になりかねないとの懸念を背景に、二〇一八年八月に成立した国防権限法では、米国防省が資金を出す中国語講座について孔子学院関連を対象外とした。

(2)その後、大学の知的財産が搾取されることへの警戒も高まり、米国内の孔子学院の閉鎖が相次いだ。

(3)二〇二〇年八月、ポンペオ国務長官(当時)は、孔子学院について「中国共産党による世界規模のプロパガンダ工作に使われている」と断定し、「孔子学院米国センター」(米国内の孔子学院を統括する組織、ワシントンに設置)を外国公館に指定すると発表し、米国内の孔子学院を全て閉鎖させるとの方針を表明した。

(4)政権交代後の二〇二一年三月、米上院は孔子学院の管理を強化する法案を可決した。

(5)その後も米国内の孔子学院の閉鎖が続いている。

 我が国においても、複数の大学に孔子学院が設置されている。孔子学院に関して、中国側の統制下にあり、学問の自由を侵害する、中国政府の宣伝機関及び技術の搾取拠点としての機能を果たす等の懸念は、我が国に設置された孔子学院についても同様である。

 過去の国会審議等に鑑みても、政府はこれらの孔子学院に関する懸念を共有していると理解する。

 令和三年五月十三日の参議院文教科学委員会において、萩生田光一文部科学大臣(当時)は、「孔子学院につきましては、同盟国である米国、また、自由や民主主義、法の支配といった共通の価値観を持つヨーロッパの国々からも廃止や情報公開を求める懸念の声が高まっております。」、「その運営の透明性が求められているものと承知しておりますので、文科省としては、関係省庁と緊密に連携して動向を注視するとともに、我が国の大学において孔子学院が設置されている以上、大学の主体的な研究活動が妨げることがないよう、孔子学院を設置している大学に対して、組織運営や教育研究内容等の透明性を高めるべく、情報公開を促してまいりたいと思います。」との答弁を行っている。加えて、文部科学省高等教育局長が、日本の大学内において、孔子学院のほかに外国政府が事実上支配する文化発信拠点が大学に設置されている例は承知していない旨の答弁を行っている。すなわち、孔子学院以外には、他国のかような機関は日本の大学に設置されていない。

 なお、孔子学院が学内に設置されていることで、当該大学で中国人留学生が増えるとの副次効果もあり、学生数を確保したい大学が孔子学院を受け入れる理由となっているとの指摘もある。この場合は、往々にして、孔子学院の不透明かつ懸念が多い運営や活動に対して、大学側が目をつぶる結果になることが懸念される。

 特に近年、「現在の中国の対外的な姿勢や軍事動向などは、日本と国際社会の深刻な懸念事項であり、日本の平和と安全及び国際社会の平和と安定を確保し、法の支配に基づく国際秩序を強化する上で、これまでにない最大の戦略的な挑戦であり、日本の総合的な国力と同盟国・同志国などとの連携により対応すべきものである。」(令和五年版外交青書)。

 また、「中国は、軍事や戦争に関して、物理的手段のみならず、非物理的手段も重視しているとみられ、「三戦」と呼ばれる「輿論戦」、「心理戦」及び「法律戦」を軍の政治工作の項目としているほか、軍事闘争を政治、外交、経済、文化、法律などの分野の闘争と密接に呼応させるとの方針も掲げている。」(令和四年版防衛白書)。

 かかる中国をめぐる動向に鑑み、孔子学院の活動には特段の注意が必要であり、適切に対応することが喫緊の課題である。我が国は中国と隣接した位置にあり、前記懸念等から直接の影響を被る国であるため、差し迫った状況にあり時間的な猶予はない。このため、孔子学院への対応策として管理強化、閉鎖措置、新たな設置の抑制などを含めた迅速な措置が採られるべきである。

 なお、日本の小中高校に、「孔子課堂」、「孔子学堂」等の名称により、孔子学院と同様の機関が設置されているとの情報がある。小中高校においても、大学に設置された孔子学院と同様の懸念と問題が考えられる。若年層に関わることであり、一層深刻な事態を招くと考えられる。

 かかる観点から次のとおり質問する。

一 現状等

1 現時点で、我が国に存在する孔子学院の数と設置されている大学名を示されたい。

2 日本国内に孔子学院を設置するための手続を確認されたい。中国側と受入れ大学の協定のみで足りるか、政府への報告、届出、許可申請など政府の関わりが必要かを含めて明らかにされたい。

3 日本の大学が実質的に外国政府の統制下にある機関を政府の関与なしに設置するのは適切であるか、政府の見解を示されたい。

二 透明性と情報公開

1 政府は、「孔子学院を置いている大学に対して、組織運営や教育研究内容等の透明性を高めるべく、情報公開を促してまいりたい」(前記の萩生田光一文部科学大臣答弁)とのことであるが、透明性と情報公開促進に関する進捗状況及び結果として明らかになった内容を示されたい。

2 前記1の明らかになった内容に関して、孔子学院に関する諸懸念と問題を踏まえて、政府の評価を示されたい。

三 前記のとおり、複数の外国政府が、中国の宣伝機関である等の懸念と理由により、自国内の孔子学院の閉鎖を進めている。こうした政府の懸念や結果として閉鎖を決めた例が増加している国際動向に関して、政府の評価と見解を示されたい。

四 我が国の安全保障、学問の自由等にとって重大な懸念と問題のある組織が大学内に設置された場合、政府としていかなる対応が可能であるか。オーストラリアでは、大学が外国と結んだ協定を政府が破棄できる法律が制定されたと承知している。閉鎖を求めることなどを含め、我が国政府の対応にはいかなる選択肢があるかを明らかにされたい。

五 かような懸念と問題のある孔子学院に関して、透明性と情報公開を促すことに加えて、管理強化、閉鎖、設置抑制等の更なる措置が必要と考えられるが、孔子学院に関する政府の今後の対応方針を示されたい。

六 孔子学院と同様の機関(中国側の何らかの組織と日本の教育機関が合意して設置し、中国語や中国文化を普及する等の活動を行っている機関)が、「孔子学院」、「孔子課堂」、「孔子学堂」等の名称を問わず、日本の小中高校に設置されているか。設置されている場合は、その数、日本側の受入れ学校名、活動内容を示されたい。

  右質問する。