質問主意書

第211回国会(常会)

質問主意書

質問第六二号

改正ADR法において規定する執行力の付与に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年四月二十五日

牧山 ひろえ


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   改正ADR法において規定する執行力の付与に関する質問主意書

 第二百十一回国会において成立した裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律、すなわち改正ADR法中、執行力の付与に関する諸論点について、以下のとおり質問する。

一 ADR法の制定時及び見直し時にされた議論では、調停による和解合意に対する執行力の付与について、利用者等の動機付けや便宜の観点から執行力の付与に積極的な意見が述べられた一方、執行力の付与に消極的な立場から、債務名義を粗製濫造するような「債務名義作成会社」が出現するなど濫用のおそれがあるとの指摘や、執行力の存在により利用者を萎縮させ、ADRの機能を阻害するとの指摘がされたことから、最終的には、今後も検討を続けるべき将来の課題とするものとされた。

 改正ADR法では、特定和解に執行力を付与することとしているが、このような懸念は払拭されたのか。

二 シンガポール条約実施法において和解合意の執行力付与の適用除外とされている消費者(個人)同士の紛争は、改正ADR法では執行力付与の対象とされている。これは、どのような理由によるものか。

三 シンガポール条約実施法や改正ADR法では、人事・家庭に関する紛争は適用除外とされている。ただし、改正ADR法では、適用除外の例外として子の扶養義務に係る金銭債権、すなわち養育費に関する紛争が執行力付与の適用対象とされている。

 このように、養育費等に関する紛争が改正ADR法において執行力付与の適用対象となっている趣旨を示されたい。

四 養育費や婚姻費用等の扶養義務費用は単なる金銭債権ではなく、合意に至るために他の家事事件と同様に、当事者の属性が様々であることや、子の福祉に配慮する必要があること等から、養育費に関する紛争が専門性の高い紛争類型であることが指摘されている。ADR実施者の研修等やガイドラインの充実化の予定はあるか。

五 家事紛争のうち、養育費等の扶養義務等に係る金銭債権だけを取り出して執行力を付与することについては、当事者が面会交流(親子交流)なども併せて合意している場合には、一方の当事者に不満が残る懸念はないか。

  右質問する。