質問主意書

第211回国会(常会)

質問主意書

質問第五九号

暫定保全措置命令に基づく強制執行を可能とする制度の創設等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年四月二十五日

牧山 ひろえ


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   暫定保全措置命令に基づく強制執行を可能とする制度の創設等に関する質問主意書

 第二百十一回国会において成立した仲裁法の一部を改正する法律には、暫定保全措置命令に基づく強制執行を可能とする制度の創設や仲裁手続における東京地方裁判所及び大阪地方裁判所の管轄拡大等が含まれており、これらについて以下のとおり質問する。

一 今回の改正では、暫定保全措置命令に基づく強制執行を可能とする制度が創設される。まず、暫定保全措置命令とは何か、そして、その暫定保全措置命令に基づいて強制執行をしようとする際の具体的な仕組みはどのようになっているのか示されたい。

二 通常は正式な仲裁人が選ばれるまで一、二か月かかるため、それまでの対応として仲裁機関が緊急仲裁人を任命し、紛争対象の事業の売却を差し止めるなどの暫定保全措置を行うことがある。この正式な仲裁人の選定前に任命される緊急仲裁人による暫定保全措置の執行を認めるかどうかについて争いがあると承知している。

 仲裁地をめぐる国際競争という現状に鑑みると、認めた方が企業にとっては紛争解決に資することになる。現に、仲裁地として人気があるシンガポールや香港は緊急仲裁人の役割の高まりを受け、法改正で緊急仲裁人の保全措置命令に執行力を認めるようにした。米国や欧州諸国も判例などで有効とみられる例が多い。

 仲裁地として選ばれているシンガポールや香港が導入している緊急仲裁人による暫定保全措置命令の規定を我が国の仲裁法に設けなかった理由を示されたい。

三 今回の改正では、国際仲裁・国際調停という専門性の高い事件を念頭に裁判所における専門的な事件処理体制を構築し、強制執行を申し立てるために必要な手続等を、東京地裁・大阪地裁にも申し立てることを可能にするとされている。

1 同改正の趣旨を示されたい。

2 東京・大阪地裁以外の裁判所に対して、国際仲裁に関する事案の申立てがされた場合に、対応するための規定としてはどのようなものがあるか。

3 東京地裁・大阪地裁において専門的な事件処理を実現するためには、国際的なビジネス関係の紛争や外国語に精通した裁判官を配置するなど人的体制の整備が必要と考える。これらの裁判所の人的体制の整備について政府としてどのように対応する方針か。

四 今回の改正には「仲裁判断の執行決定を求める申立てにおける仲裁判断書の翻訳文の提出の省略」も規定されている。

1 当事者間での合意や書証の作成の場面では、日本語以外の言語、とりわけ英語が使用されることが多いと思われるが、どの程度の範囲の言語(英語、中国語、フランス語、スペイン語など)まで仲裁判断書の翻訳文提出の省略が認められることを想定しているのか。

2 こういうケースでは翻訳が不要との目安を示すことにより、外国の紛争当事者からの期待を喚起し、日本の国際仲裁サービスの魅力向上に努めるべきではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。