質問主意書

第211回国会(常会)

質問主意書

質問第五六号

中国製監視カメラの規制に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年四月十九日

神谷 宗幣


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   中国製監視カメラの規制に関する質問主意書

 二〇二二年十一月二十七日付け産経新聞は、「中国監視カメラ、日本に攻勢 安保リスク懸念、米英は排除」と題する記事で「人権侵害への関与や安全保障上のリスクを理由に米英政府から取引禁止などの措置を受けている中国の監視カメラメーカー大手二社が、日本でのシェア拡大に動いている」と報じた。

 中国製の監視カメラは、世界市場において大きなシェアを誇っており、安価で信頼性が高いとの評判で多くの国で採用されている。しかし、中国の国内法「国家情報法第七条」には、「いかなる組織及び国民も、法に基づき国家情報活動に対する支持、援助及び協力を行い、知り得た国家情報活動についての秘密を守らなければならない。 国は、国家情報活動に対し支持、援助及び協力を行う個人及び組織を保護する」と規定されており、中国企業は、こうした情報活動のサポート、援助、協力義務を拒否できない立場にあるとみられる。そのため、欧米諸国等を中心に、中国製監視カメラが中国政府の情報工作に利用されて、他人のプライバシーを侵害し、不正にアクセスし、遠隔地からカメラを制御して、機密情報の収集を行うなど、監視システムを悪用するのではないかとの懸念が生じている。

 英国の市民権利団体「Big Brother Watch」が二〇二二年二月七日に公表した報告書によると、「情報公開請求で回答のあった公共施設の六十・八%が中国製の監視カメラを使用しており、そのうちの八十九%がハイクビジョン(杭州海康威視数字技術)製であり十二%がダーファ(浙江大華技術)製であった」とし、同じく「英国警察施設の三十四・九%が中国製監視カメラを設置し、そのすべてがハイクビジョン製」だとしている。

 こうした状況の下、二〇一九年十月、米国商務省は中国の監視カメラ最大手のハイクビジョン及びダーファを「国家安全保障に重大なリスクをもたらすエンティティ」として指定し、米国政府調達から除外したほか、二〇二二年十一月には、米国の通信産業を監督する米連邦通信委員会(FCC)は、安全保障上の脅威となり得る通信機器について、米国内の輸入や販売に関する認証を禁止するとの行政命令を発表し、その対象として、ファーウェイ(華為技術)、ZTE(中興通訊)、ハイテラ(海能達通信)のほか、監視カメラメーカーのハイクビジョン、ダーファの機器を指定した。FCCは、信頼できない通信機器を国内で使用するための認証を与えないことで国家の安全を守るとしている。

 英国でも、二〇二二年十一月二十四日、スナク内閣の閣僚であるオリバー・ダウデン・ランカスター公領相は声明で「政府セキュリティグループは、政府施設の視覚監視システムの設置に関連する現在及び将来的な安全リスクについて検討し、英国に対する脅威やこうしたシステムの能力や接続性が増すことを考慮して、追加的な規制が必要」だとし、「各省庁には、センシティブな施設において、中国の国家情報法の支配下にある企業が生産した機器の設置を停止するよう指示をした。これらの施設では、常にセキュリティが最優先されるため、我々は安全上のリスクが発生しないように今すぐ行動する」と中国製監視カメラに対して厳しい姿勢を鮮明にしており、その他、欧州議会、オーストラリア、アイルランドなど多くの国でも、中国製監視カメラに対する実態調査、禁止措置などの対策が検討されている。

 右状況を踏まえて質問する。

一 ハイクビジョン及びダーファ社製監視カメラが我が国の官公庁施設、特に外務省や警察関連施設、防衛省施設など高度な秘密情報を扱う施設に納入、設置、運用されているかについて、実態調査はなされているか、なされているならその概要、結果を示されたい。また、いまだ調査されていない場合は、早急に実態調査をする必要があると考えるが、これに関して政府の見解を明らかにされたい。

二 昨年五月に成立した経済安全保障推進法を受け、安保上の脅威となる外国製品を基幹インフラから排除する事前審査の制度設計の検討が進められていると承知しているが、具体的にどのような事前審査制度となっているのか、その詳細を明らかにされたい。

三 ハイクビジョン及びダーファは、経済安全保障推進法の事前審査の対象業者として検討が進められているのか、また、今後検討が進められていく可能性があるのか明らかにされたい。

四 我が国の官公庁施設、特に外務省や警察関連施設、防衛省施設などに、こうしたセキュリティ上の懸念のある機器が既に設置されている場合、政府として、今後、こうした既設機器のセキュリティ・リスクの調査や当該機器の撤去、信頼できる製品への交換などを含め、どのように対処していくのか、その方針を明らかにされたい。

  右質問する。