質問主意書

第211回国会(常会)

質問主意書

質問第五四号

ミャンマーのイェタグン・ガス田開発に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年四月十一日

石橋 通宏


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   ミャンマーのイェタグン・ガス田開発に関する質問主意書

 JXミャンマー石油開発株式会社(以下「JXミャンマー石油」という。)は、経済産業大臣五十%、JX石油開発四十%、三菱商事十%の共同出資会社で、ミャンマー南部沖のイェタグン・ガス田の三鉱区において一部権益を有している。また、JXミャンマー石油は、同ガス田で生産された天然ガスを隣国タイに輸出するパイプラインを所有・運営している企業に出資を行っていることから、日本政府は間接的にではあるが、同ガス田の業務全般に対する関与を行っていることとなる。

 同ガス田での生産においては、生産分与契約(PSC)に基づき、ミャンマー石油ガス公社(以下「MOGE」という。)あるいはミャンマー政府に対して、多額の金銭の支払義務が生じているが、二〇二一年のミャンマー国軍によるクーデター以降、MOGEはミャンマー国軍の支配下にあることから、JXミャンマー石油から支払われた資金は、実質的に同国軍の監督下に入り、市民への暴力に使用されているのではないかと、強く懸念するものである。

 このような懸念に基づき、JXミャンマー石油によるMOGEないしミャンマー政府に対する支払義務や、二〇二一年以降の支払状況等について、経済産業省に説明を求めてきたところであるが、個社の活動であることや、契約上の守秘義務条項に該当することなどを理由として、明確な回答は行われず、公金を投じた事業であるにもかかわらず、日本国民に対する説明責任が一切果たされていない。

 JXミャンマー石油を通じたイェタグン・ガス田への日本政府の関与は、令和四年五月二日までにMOGEを除く全ての企業が事業からの撤退の意向を公表したことで終了に向かっていると理解している。しかし、同ガス田は、ガスの枯渇が間近と予想されており、廃坑の場合は巨額の費用が必要となることから、その負担についても、我が国の公金が支出されるのではないかと懸念するものである。

 前記の背景及び問題意識を踏まえ、以下質問する。

一 令和三年の第二百四回国会参議院本会議において「ミャンマーにおける軍事クーデターを非難し、民主的な政治体制の早期回復を求める決議案」が全会一致で可決されたように、ミャンマーには現在、正当性のある政府が存在していないことから、民主化プロセスへの復帰まで同ガス田に関するあらゆる支払を止める、あるいは、海外の安全な口座に保管するべきであると考えるが、支払に関し、政府としてどのような対応を行っているか。

二 令和三年二月一日のクーデター以降から現在まで、本事業でミャンマー側に支払った金額、また、今後の支払予定額を、その詳細とともに明らかにされたい。

三 JXミャンマー石油のイェタグン・ガス田からの撤退に際し、JXミャンマー石油はどのような手続を経て権益を完全に手放すのか。ミャンマー側の承認機関はどこか。手続は完了したのか。また、まだ権益を完全に手放していない場合、それがいつになるか明らかにされたい。

四 枯渇間近とみられる同ガス田の廃坑に関して、日本政府は応分の費用の負担等を行う予定か。負担をする場合、その負担額を明らかにされたい。

  右質問する。