質問主意書

第211回国会(常会)

質問主意書

質問第五〇号

非営利型一般財団法人に対する課税の在り方に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年四月四日

村田 享子


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   非営利型一般財団法人に対する課税の在り方に関する質問主意書

 公益法人制度改革により、公益財団法人及び一般財団法人の制度が設けられ、併せて税制上の取扱いが整備された。しかし、非営利型一般財団法人は、公益財団法人とは異なり利子・配当収入が所得税法上非課税とされず、一方で法人税が非課税であるため確定申告も認められないことから源泉徴収された所得税の還付も受けられないため、不利益を被っている。

 このような非営利型一般財団法人に対する課税の在り方について、以下質問する。

一 財団法人は、寄附された財産の運用益を主たる財源として事業を行う。具体的な財産運用益としては、預金利息収入や社債等の債券から得られる利子収入、株式等から得られる配当収入が大半を占める。一般に、財団法人が事業を行う原資として、これらの収入以外に然るべき金額の運用益を得られる収入があると考えているのか、あるとすれば何を想定しているのか、政府の見解を示されたい。

二 個人・法人のいずれであっても、利子・配当収入に対する課税は、所得税法に基づき源泉徴収される。しかし、法人の場合は、法人税法に基づき課税所得に対する法人税が課され、先に源泉徴収された所得税額は法人税から控除することができる。源泉徴収された所得税が法人税より多い場合には還付される。こうした仕組みを前提にすれば、法人の所得に対する課税は原則として法人税であり、所得税は課されないものと解釈できるが、この理解でよいか。この理解が誤りであれば、根拠を示した上で政府の見解を明らかにされたい。

三 公益財団法人も非営利型一般財団法人も非収益事業に対する法人税は非課税であるが、非課税でない法人の場合は、課税所得に対して法人税率を乗じて法人税を計算する。この「法人税は非課税である」という意味は、法人税率が〇%なのか。法人税は非課税であるならば、法人の課税所得がいくらであっても、また所得のもとになる法人の収入(利子・配当収入)がいくらであってもその所得や収入には課税されないという理解でよいか。この理解が誤りであれば、根拠を示した上で政府の見解を明らかにされたい。

四 公益財団法人と非営利型一般財団法人は、法人税法上はいずれも収益事業にのみ課税されることとなっているが、利子・配当収入を得た場合の所得税法上の取扱いに違いがある。

1 所得税法では、利子・配当収入を得た場合に源泉徴収される所得税について、公益財団法人は非課税とする一方で、一般財団法人は非営利型か否かを問わずに課税することとしている。少なくとも、非営利型一般財団法人については、公益財団法人同様に非課税とされるべきと考えるが、なぜ、公益財団法人と非営利型一般財団法人の間でこのような取扱いの違いを設けているのか。いずれも法人税が非課税であることとの関連を含めて、それを合理的とする法的根拠とともに説明されたい。

2 法人税法では、法人に法人税を確定するための確定申告を義務付けている。その際、所得税法に基づき先に一部の収入に対して源泉徴収された所得税額がある場合には、法人税額から所得税額を控除することができる。一方、公益財団法人と非営利型一般財団法人は、収益事業を除き所得に法人税が課税されないことから、収益事業がない場合は確定申告が不要とされている。しかし、非営利型一般財団法人の場合は、利子・配当収入に対して所得税が源泉徴収されているので、法人税が非課税であっても確定申告を行い、先に源泉徴収された税金を還付請求する必要があるのではないかと考える。なぜ、非営利型一般財団法人は、他の会社等と同様に確定申告ができるような取扱いとなっていないのか。法人税が非課税であることとの関連を含めて、それを合理的とする法的根拠とともに説明されたい。

3 以上の取扱いの結果、非営利型一般財団法人は利子・配当収入自体が課税対象となっており、その還付を受けることもできず、公益財団法人との間で法的公平性を欠くことになるのではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。

五 平成十七年六月、政府の税制調査会基礎問題小委員会非営利法人課税ワーキンググループが取りまとめた「新たな非営利法人に関する課税及び寄附金税制についての基本的考え方」では、利子・配当等の金融資産収益は「公益活動を支える不可欠な財源であり、政策的な配慮が引き続き必要であるとの考え方もある」との意見も示されていた。それにもかかわらず、公益法人制度改革に伴い行われた税制改正で、結果的に公益財団法人の利子・配当のみを非課税とし、非営利型一般財団法人の利子・配当に対しては課税としたのはなぜか。特に、財務省で当時どのような議論がされたのか、その内容を詳細に明らかにされたい。また、結果として税制調査会で出された意見が反映されないまま、制度改正及び税制改正が行われたことに対して、政府としての見解を示されたい。

六 法人税の計算に当たっては、利子・配当は益金に算入され、売却した有価証券の売却損を含む損金の額を差し引いて、課税所得を決定する。仮に、非営利型一般財団法人が所有する有価証券を売却し損失が出た場合、現行制度であれば、非営利型一般財団法人は、利子・配当収入に課税されているにもかかわらず、損失分を課税所得より減ずる方法がなく不利益を被る。このような状況では、課税の公平性を欠くばかりか、合理性もないと考えるが、政府の見解を示されたい。また、全ての法人は、申告納税の義務と権利を有するにもかかわらず、非営利型一般財団法人にはそれが許されない根拠を示されたい。

七 東京地方裁判所で争われている「非営利型一般財団法人の利子・配当収入の徴税事件」において、国は被告として、「租税法の定立については、国家財政、社会経済、国民所得、国民生活等の実態についての正確な資料を基礎とする立法府の政策的、技術的な判断に委ねるほかない」との主張を行い続けている。この主張は、国としての意見に間違いないか。また、非営利型一般財団法人における法人税法及び所得税法上の取扱いを決定する前に、裁判で主張している国家財政、社会経済、国民所得、国民経済等の実態についてどのような資料を検討して立法に至ったのか説明されたい。他方、裁判所も、基本的にはその裁量的判断を尊重せざるを得ないとの主張を行い続けている。これは、「租税の定立」は国家統治の基本に関する極めて高度の政治性を有する行為(統治行為)であり、よって裁判所の司法権の対象ではないとの見解を行政府・立法府共に有しているという理解でよいか、政府の見解を示されたい。そうでない場合は、租税法の定立について裁判所の判断は及ばないとする根拠について、政府の理解するところを明らかにされたい。

  右質問する。