質問主意書

第211回国会(常会)

質問主意書

質問第三九号

戦時下の朝鮮半島出身労働者をめぐる問題に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年三月十五日

神谷 宗幣


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   戦時下の朝鮮半島出身労働者をめぐる問題に関する再質問主意書

 令和五年二月十四日提出「戦時下の朝鮮半島出身労働者をめぐる問題に関する質問主意書」(第二百十一回国会質問第一八号)に対して、令和五年二月二十四日付答弁書(内閣参質二一一第一八号)(以下「答弁書」という。)が送付されたところである。

 その後、韓国政府は、韓国の財団が被告の日本企業に代わって賠償金を支払うと発表(以下「韓国の今次発表」という。)した。韓国の今次発表は、これまでの韓国大法院の国際法令に反した判決により生じた状況を是正する方向にあることは歓迎する。

 しかしながら、もとより「戦時下の朝鮮半島出身労働者をめぐる問題」(以下「本問題」という。)は完全かつ最終的に解決済であり、先の韓国大法院の判決(以下「本件判決」という。)は国際法令に反しており、日本企業による賠償責任は生じない。したがって、存在しない賠償金を代わって支払うとの表現は誤りであり不適当である。肩代わりであることを認めれば、日本企業に対する求償権を認めることにつながりかねない。

 また、本件判決で扱われているのは、募集に応じた「応募工」であると理解する。しかしながら、内外の報道、特に韓国側により、「戦時下の朝鮮半島労働者」を意味する呼称として専ら「徴用工」が用いられる傾向が顕著である。「徴用工」を用いることは、本件判決について言及するのに不適切であるのみならず、強制労働との誤ったイメージを広げうる概念である。実際に、国際報道(BBC等)でも本問題に関して「Forced Labor」(強制労働)の用語が用いられている例がある。

 韓国の今次発表を受け、岸田首相は、植民地支配へのおわびや反省を盛り込んだ一九九八年の日韓共同宣言など、過去の日本政府の立場に変わりはないと表明した。経団連は、韓国留学生のために基金を設立する意向であるとされる。本問題が生じたのは韓国側の一方的な行為によるものであり、是正される方向に向かったことは歓迎するとしても、日本側から何らかの「見返り」に相当する措置を採る性質のものではない。

 なお、いわゆる慰安婦問題のように、日韓政府間で合意したこと、韓国政府が約束したこと等に関して、いったん行った決定を韓国側が尊重しなかった例がある。今後、日本政府としては、かかる事態が再び生じないように必要な措置を採ることは重要である。

 答弁書の内容及びかかる認識等を踏まえ、本問題に関して、次のとおり質問する。

一 「戦時下の朝鮮半島出身労働者」について

1 答弁書によれば、朝鮮半島から内地に移入した人々の移入の経緯は様々であるとのことであるが、「戦時下の朝鮮半島出身労働者」には、徴用による移入(いわゆる「徴用工」)、募集に応募したことによる移入(いわゆる「応募工」)が含まれることを確認されたい。

2 本問題に関連して「徴用工」の用語が用いられることにより、「戦時下の朝鮮半島労働者」に関して間違ったイメージが広がり、あたかも当時の日本政府が朝鮮半島出身者に強制労働を課したかのような認識が国際社会に広まることは問題である。政府は、前記のとおり日本に関する間違ったイメージが広がることにいかなる認識を持っているか、また、いかなる対応策を取っているか。

二 賠償責任・求償権について

1 韓国政府は、韓国の財団が被告の日本企業に代わって賠償金を支払うとしている。このため、支払者により日本企業に対する求償権を行使する余地に関して政府の見解を示されたい。

2 そもそも賠償責任が生じないのであり、求償権も発生する余地がない点を、韓国政府との間で、あるいは、日本政府から、法的に明確にすべきではないか。

三 韓国の今次発表に係る日本政府の対応について

1 韓国の今次発表に呼応して、日本政府が何らかの措置を採る考えがあるか。その中で、「見返り」に相当する措置を採る考えがあるかを示されたい。

2 植民地支配へのおわびや反省を盛り込んだ一九九八年の日韓共同宣言など過去の日本政府の立場に変わりはないと、この時期に殊更表明したことは、新しい内容の表明ではないとしても、日本は悪いことをした、徴用により強制労働を強いたなどの誤解を一層広めることにならないか。

四 韓国向け輸出管理の運用の見直しについて

1 答弁書の「三について」では、「韓国向け輸出管理の運用の見直し」(韓国を輸出手続が簡略になる優遇国「グループA」から除外)との文言があるが、これは本問題とは無関係な決定であるとの意味か。

2 韓国の今次発表に呼応する措置として、韓国を再び「グループA」に含めることを検討しているのか。

3 韓国側の貿易管理体制が不十分であるとの問題があって韓国を「グループA」から外したのか。

4 その後、韓国は貿易管理体制につき何らかの対応をしたのか。韓国を「グループA」に戻す条件が満たされるような進展があるのか。

  右質問する。