質問主意書

第211回国会(常会)

質問主意書

質問第三三号

国がお墨付きを与えた西武信用金庫による不正融資に対する金融庁の調査姿勢に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年三月三日

浜田 聡


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   国がお墨付きを与えた西武信用金庫による不正融資に対する金融庁の調査姿勢に関する質問主意書

 第二百五回国会に私が提出した「国がお墨付きを与えた西武信用金庫による不正融資に対する金融庁の調査姿勢に関する質問主意書」(第二百五回国会質問第一五号)において、「二 金融庁が西武信用金庫に対して不正融資の被害者の救済を不問にしている理由を明らかにされたい」と質問した。

 これに対する答弁書(内閣参質二〇五第一五号)において、「お尋ねの「不正融資の被害者」の意味するところが必ずしも明らかではないが、金融庁としては、西武信用金庫について、業績優先の営業を推進する余り、内部管理態勢の整備を怠った結果、投資用不動産向けの融資に当たり、形式的な審査にとどまり、不適切な信用リスク管理態勢となっている等の問題が認められたことから、同金庫に対し令和元年五月二十四日付けで信用金庫法(昭和二十六年法律第二百三十八号)第八十九条第一項の規定により準用する銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)第二十六条第一項の規定に基づき、健全かつ適切な業務運営を確保するため、内部統制の強化や信用リスク管理態勢の強化等を実行するよう、行政処分を行ったものである」との答弁があった。

 しかし、質問の趣旨である被害者救済に関して金融庁の見解が全く示されておらず何ら答弁になっていない。

 また「不正融資の被害者の意味するところが必ずしも明らかではない」とのことだが、これは同質問主意書の一において、「行政文書「関財審業第三十三号」により金融庁は二〇一八年十月二十二日時点で既に二百五十八物件において不正の事実の詳細を具体的に把握していたことは明らかである」と記載しており、少なくともこの二百五十八物件に関わる債務者が不正融資の被害者であることは明らかである。

 さらにこの二百五十八物件とは、残存する過去十八ヶ月以内の証拠を確認して発覚した限られた件数であり、不正融資の被害者はこの二百五十八物件以上存在していると考える。

 また、同質問主意書において、「三 金融庁は西武信用金庫の不正の事実を把握しているにもかかわらず刑事責任を不問にしている理由を明らかにされたい。」と質問した。

 これに対する答弁書において、「お尋ねについては、個別の事案に関することであり、お答えすることは差し控えたい。なお、一般論として申し上げれば、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第二百三十九条第二項は「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」と規定しているところ、同項の規定の趣旨に従い、公務員がその職務を行うことにより合理的根拠に基づき犯罪があると思料するかどうかについては具体的事案に即して判断する必要があると考えている。」との答弁があった。

 これらの答弁では不十分であると判断し、事務所スタッフを通じてさらに金融庁に質問を提出、そこで得られた回答は以下のとおりである。

 質問一:経済的耐用年数に関して

 投資目的の賃貸用不動産向け融資について金融機関が法定耐用年数を超える経済的耐用年数を用いるにあたって、金融庁から金融機関に対して見積りの考え方や手法等の指示・示唆を示したことがあるのですか。

 回答一

 当庁としましては、法定耐用年数と経済耐用年数のいずれを用いるべきかにつきましては、融資の方針、物件の用途や過去および将来の管理状況等によって異なると考えられ、画一的な正解はないとの認識です。

 質問二:被害者保護、救済に関して

 スルガ銀行に対する業務停止命令において被害者救済を明記した理由は何ですか。西武信用金庫に対する業務改善命令において被害者救済を明記していない理由は何ですか。この二つの命令において被害者救済を明記する・しないという金融庁のダブルスタンダードの背景、根拠は何ですか。西武信用金庫が提出した業務改善計画において、被害者救済が全く記載されていないことを金融庁が不問としている理由は何ですか。

 回答二

 西武信用金庫につきましては、立入検査の結果や信用金庫法に基づき求めた報告を検証したところ、業績優先の営業を推進する余り、内部管理態勢の整備を怠った結果、投資用不動産向けの融資にあたり、形式的な審査にとどまり、不適切な信用リスク管理態勢となっている等の問題が認められたことから、金融庁としましては、同金庫に対し令和元年五月二十四日付けで信用金庫法第八十九条第一項の規定に基づき、健全かつ適切な業務運営を確保するため、内部統制の強化や融資審査管理を含む信用リスク管理態勢の強化等を実行するよう、行政処分を行ったものです。

 まず質問一に関しては「金融庁から各金融機関に対して、法定耐用年数ではなく経済的耐用年数を用いる場合の考え方や手法等の指示・示唆・認識を示したことは一度もなく、全て各金融機関の判断に任せていたため金融庁は一切関与していなかったということか」に対する回答は得られなかった。

 ところが、業務改善命令により発覚した不正の被害者と認識している方からの私への報告によると、金融庁に対する情報開示請求によって得られた資料の一部において、「貸出期間が法定耐用年数を超過する場合(黒塗り部分)経済的耐用年数を証明するER(黒塗り部分)の徴求を義務付け(黒塗り部分)」という表記を確認したとのことであった。

 このことから、金融庁は以前から各金融機関に対し融資期間に法定耐用年数を超える経済的耐用年数を用いる場合には経済的耐用年数の裏付けとなる証拠資料を準備することを指示・指導していたものと考えられる。

 また、質問二にて改めて被害者救済の意思を確認したが、金融庁から明確な回答は得られなかった。

 以上を踏まえ、以下質問する。

一 西武信用金庫に対して発令された業務改善命令において「投資目的の賃貸用不動産向け融資について、融資期間に法定耐用年数を超える経済的耐用年数を適用する場合には適切な見積りが不可欠である中」との記載がある。しかし、業務改善命令により発覚した不正の被害者と認識している方からの私への報告によると、西武信用金庫新江古田支店の内部統括副支店長から「法定耐用年数を超える経済的耐用年数を証する資料は単なる参考資料のひとつであり必須ではない」との証言があったと聞いている。ついては、金融庁は各金融機関に対し、融資期間に法定耐用年数を超える経済的耐用年数を用いる場合にどのような指示・指導等を行っていたのかを明らかにされたい。

二 金融庁は西武信用金庫に対して業務改善命令を発令した際に不適切な行為と認定した二百五十八物件において、西武信用金庫の職員から不動産の専門家に対して具体的にどのような指示・示唆があったのかを明らかにされたい。

三 業務改善命令により発覚した不正の被害者と認識している方からの私への報告によると、数回の情報開示請求により金融庁は西武信用金庫の不正の証拠となる資料を一万四百二十九枚、及び一万千五百九枚も保有していることが明らかにされたとのことである。金融庁はこれだけの証拠を確認した上で刑事訴訟法第二百三十九条第二項について、「合理的根拠に基づき犯罪があると思料できなかった」と判断したのかを明らかにされたい。

四 同じく、業務改善命令により発覚した不正の被害者と認識している方からの私への報告によると、数回の情報開示請求により金融庁より西武信用金庫の不正の証拠となる資料の一万四百二十九枚のうちの千七百五十七枚、及び一万千五百九枚のうちの千八百二十枚の情報開示が行われたとのことであった。そこで開示された資料の全数が西武信用金庫と不動産の専門家との間でやり取りされていたメール履歴であったが、開示された文言はこれら全てにおいて「西武信用金庫」という六文字だけであったとのことであった。この際、金融庁から示された不開示理由は「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」の定めによる「法第五条第二号イ」、「法第五条第六号イ」、「法第五条第一号」、「法第五条第六号柱書及び同号イ」であった。しかし、これらの条文が定めていることに対して、「西武信用金庫」という六文字だけの開示は同法の趣旨からは著しく逸脱していることは明らかである。ついては「西武信用金庫」以外の部分に関して同法の趣旨に則り開示すべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

五 金融庁設置法第三条によれば「金融庁は、我が国の金融の機能の安定を確保し、預金者、保険契約者、有価証券の投資者その他これらに準ずる者の保護を図るとともに、金融の円滑を図ることを任務とする」と明記されている。それにもかかわらず、西武信用金庫の不適切な行為により被害を受けた預金者を金融庁が保護しない理由を明らかにされたい。

六 西武信用金庫に対し不正融資の被害者の被害の回復を一切不問としたまま、令和四年中に業務改善命令が解除された理由を明らかにされたい。

 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。

  右質問する。