質問主意書

第211回国会(常会)

質問主意書

質問第二九号

米の消費拡大の取組と農業従事者振興策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年二月二十八日

神谷 宗幣


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   米の消費拡大の取組と農業従事者振興策に関する質問主意書

 米は、古くから日本人の主食であるだけでなく、味噌や酢など和食の中心となる調味料の原料である。日本酒のほか、餅、あられやせんべいなどの菓子にも加工されている。また、神社を中心として、豊作や収穫を祈って祭をし、家を建てるときには米をお供えして地鎮祭を行う。米は、日本の風土が培った日本の文化そのものといって過言ではない。二〇一三年には、「和食 日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されている。

 しかしながら、二〇二三年産の主食用米の需要量(二〇二三年七月~二〇二四年六月)が過去最低を更新するとの見通しであるという。二〇二二年十月二十一日付けの日本経済新聞では、「コメ離れ、需給均衡遠く」としてこの問題を報じている。

 国内の農業従事者は、一九六〇年の千百七十五万人から減少し続けており、二〇二〇年には百三十六万人となった。一九五六年に三百三十二万ヘクタールあった田の耕地面積は、二〇二二年には二百三十五・二万ヘクタールまで減少した。米に対する需要低下、食生活の変化、農業従事者の高齢化、後継者不足など農業従事者と米をめぐる課題は山積みである。

 他方、ここ数年間、パンデミックやウクライナ危機、台湾有事、気候変動など多くの不安定要素を抱える中、食料安全保障は喫緊の課題である。自給率の低い日本は、常にその食糧の確保を輸入に頼らざるを得ない状況にある。そのため、食料安全保障を考える上では、食糧危機が生じた際、自国の食糧を如何に自給することができるか、国民が飢えない状況を如何に保全するか、食糧価格の高騰が家計を逼迫する状況を如何に回避するかが極めて重要である。

 このような現状に鑑みれば、主食である米は、需要の低下や食生活の変化等を理由として、その生産減や供給力の減少を放置してはならない。今こそ、日本人の主食である米の消費拡大に力を入れるべきである。

 このような状況の中、政府は、食料安全保障の強化が国家の喫緊かつ最重要課題であると位置付け、二〇二二年十二月二十七日、「食料安全保障強化政策大綱」を公表した。しかしながら、同大綱では、「水田の畑地化等を強力に推進する」とされ、水田を減少する方向での取組が「強力に」進められるとのことである。

 これについて、米農家からも戸惑いの声が上がっている。「栽培に不慣れな野菜や、品代だけで収支が成り立たない大豆で畑地化しても、従来の転作助成のような恒常的な政策支援がなければ、経営安定が見通せないからだ。実際に野菜で畑地化した農家も、技術面の課題もあり、経営の厳しさを訴える」と報道されている(二〇二三年一月八日付日本農業新聞)。

 米の生産には、田とそれを担う農業従事者の存在が必要不可欠である。危機が起きてから、田を開発し、農業従事者を育て、農業を振興する政策をとっても遅い。今から、農業の振興を図り、田を保全する政策をとる必要がある。

 以下、質問する。

一 水田の畑地化を進めれば、水田がさらに減少し、主食である米の供給量が減ることが必至である。こうなると、政府が進めるとしている「米の消費拡大」、「需要増大の取組」と逆行することにならないか。食料安全保障の重要性に鑑みれば、現状の水田を畑地化する前に、休耕地などすでに使われていない田畑の畑地化を先行すべきと思うが、政府は、どのように考えるか。

二 前記のとおり、米が日本の風土に合った日本人の主食であり、日本文化とも密接であることに鑑みれば、需要の低下や日本人の食生活の変化等を理由として、その生産減や供給力の減少を放置すべきでないと考えるが、政府は生産減や供給力の減少についてどのような対応を講じるか。

三 二〇二二年四月六日、第二百八回国会衆議院農林水産委員会において、武部新農林水産副大臣は、「自給率向上のためにも、米飯給食の促進や米の機能性の発信などをしてまいりたい」と述べている。この点、週三回以上、米飯給食を取り入れている小中学校は、全体の学校数のうち、何校あるか。また、週四回以上、米飯給食を取り入れている学校は、全体の学校数のうち、何校あるか。これらについて、それぞれ、過去五年間の学校数の推移を明らかにされたい。また、米飯給食の促進や米の機能性の発信について、今後も継続して推進していく方針であるか、明らかにされたい。

四 同委員会において木原誠二内閣官房副長官は、「米の消費拡大に関しましては、現在、政府において、農林水産業・地域の活力創造プラン、これを取りまとめまして、米を始めとする和食の次世代継承と国内外への発信、また、国内外での需要の増大などに向けた取組、こうした方向性を政府として、内閣として示させていただいているところであ」るとして、米の消費拡大に向けて政府全体としてしっかり取り組んでいく旨を答弁した。

 しかし、「食料安全保障強化政策大綱」では、米粉の利用拡大を目的として米粉の普及に向けた設備投資等を支援するなどの施策こそ盛り込まれているものの、主食米の消費拡大に向けた内容が何ら盛り込まれていない。政府としては、主食米の需要拡大策についてどのように考えているか。

五 同大綱では、農業の成長産業化により、食料自給率の上昇につなげることが記載されているところ、短期的に危機が迫っている現状では、国が財政支出を行い、輸出を行ってもなお発生した余剰分の米などを買い取るなどして、普段から農業従事者を育成し、農作物の供給能力を維持したまま食糧危機に備えておくことも重要であると考える。この農業従事者の育成政策の是非について、政府の見解如何。

六 農林水産省のウェブページの「食料自給率との関係」というページには、「ごはんは食料自給率百%。米を主食にするだけで、食料自給率がアップします。」と記載され、「「食事バランスガイド」のコマに表された一日の食事で試算した場合、全体の食料自給率は五十二・〇%」となるという試算が示されている。また、「日本型食生活のすすめ」のページには、ごはん中心和定食「魚の照り焼き、青菜のごまあえ、ごはん小盛り二杯、根菜の汁」とすると、食料自給率は、九十%となるとの試算がある。これらの試算について根拠となるデータを示されたい。また、これを基に自給率向上計画を立てれば、自給率向上の具体的な道筋が議論できるようになるのではないかと考えるが、政府の見解如何。

  右質問する。